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SNS投稿すると居場所が強制で表示させられるようになった中国をどう思いますか?

ここ最近、中国の各SNSで気になる変化があったことをご存知ですか?

Wechatの公衆アカウント、Weibo、抖音(中国版Tiktok)、レッド、Zhihuなどを含む中国のほとんどのSNSが強制的にIP属地を表示するようになりました。

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↑こんな具合に。ちなみにこの李雪琴はトークショーのスターですが、海南は仕事なのかな

きっかけはロシアとウクライナの紛争が始まってからまもなくで、Weiboで「ロシア」と「ウクライナ」が入った書き込みにはコメントに強制的にIP表示される機能が実装されました。

これに目をつけたネット民たち。全く関連のない話でちょっとデリケートな話(例えば男女平等や地域間の差別発言、デマ関連など)になると、コメント主のIPがわかるよう、みんな意図的に「ロシア」と「ウクライナ」を入れるようになりました。

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↑黒丸で囲ったところ。全然ロシアやウクライナと関係ない投稿でも、文章中にウクライナやロシアと書き込むと、下のコメントする人たちがどこの場所から投稿してるか強制表示される(この例では台湾か中国からだよと表示されてる)

■強制表示が始まった原因とここまで

ご存じの通り、中国ではあれやこれやの理由からTwitterなど海外の主流SNSを遮断しています。ただこれもご存知でしょうが、直接アクセスできないとはいえ、アクセスしようと思えばいろんな方法でアクセスができます。

ただ一般的にはそんな手間をかけて海外のSNSを見ることもなく、ほとんどは中国のSNSに集中しています。そして膨大なユーザーによって国内のSNSは強力な影響力を持っています。

当然いろんな用途でSNSを利用したい人がたくさんいます。カラー革命はもちろん、デマや捏造のネタで社会的な不安を作りたい下心のある人の数も多いです。また、異なる立場の人がネットでの対抗や中傷、世論事件の当事者のなりますしなど、ここ数年数々の炎上を目撃しました。

不思議な話だと思われるかもしれませんが、こういった情報戦が今やAIによって行われることが中国のネット民にばれて炎上したり、たまにはネタとしていじられています。

例えば、「牙膏我只用中华为的就是刷牙干净速度快,每次只要5g就行」という典型的な文脈があります。訳すと、「歯磨き粉は「中華」(中国の有名な歯磨き粉メーカー)がいいです、なぜならば歯が素早くきれいに磨けるし、毎回5グラムで十分」という内容になりますが、文章の中に「華為」「スピードが速い」「5g」というキーワードが入ってるため、アルゴに「これはHUAWEIの5g関連の内容だ」と認識され、意図的な書き込みが書かれる、といった具合です。

そしてこういった仕組みを自分のブランドを上げたい場合や競争相手のブランドを下げたい場合のどちらにも使ったりします。これはすでに「闇ビジネス」として大きな規模になっていて、企業間のアンフェアな競争はともかく、社会の安定にも影を与えています。そして政府による監督管理の重点に指定されるわけです。

2021年、中国国家インターネット情報弁公室が「インターネットユーザーアカウント情報管理規定(公開草案)」では、プラットフォームがわかりやすいよう、国内ユーザーには省(県のこと)、海外ユーザーには国や地域までユーザーのIP属地を表示すべきと要求しました。また、2022年3月、情報弁が2022年のインターネット監督管理の重点が発表し、デマ退治の特別プロジェクトが公開されました。政治、経済、文化、歴史、民間人による科学の普及などに関するデマを規制し、プラットフォームの責任を強調し、影響力のあるアクセス数の高い情報源不明の情報について、認証、由来追究、デマの打ち消しや真相の説明に関わる一連のメカニズムの作成が要求されました。

このIP属地の強制表示は、プラットフォーム側にとっても重要な一歩とみられています。WeiboのCEO王高飛氏も、IP属地表示は発言者の真実性を解決するための機能であると主張しました。

しかしいきなりの強制表示には反発するネット民も多かったです。その理由の一つは、ユーザーの位置情報の強制表示はプライバシーの侵害になるではないかという理由です。こういったプライバシーに関する広範囲な議論は2017年あたりのSNSの実名制以来です。

■思わぬ「被害者」も。日本人も他人事ではない

ネットいじめやデマを減らしポジティブに期待されたIP属地表示機能ですが、思わぬ「被害者」たちが現れ炎上しています。

・芸能人

中国の芸能人はSNSを通じての情報発信だけではなく、コメント返しなどのファンサービスもよくやっていますが、これは代行でやってる場合も多いです。代行者と本人が同じ場所にいれば良いのですが、スケジュールの都合なのか芸能人と代行会社や代行者が異なる省にいる場合、IPでバレるようになりました。ファンからすれば業者がコメント返すくらいならスルーされた方がましですよね。。

ちなみに日本の芸能人たちですが...

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ほぼ上海じゃん。この辺は運用丸投げなのがバレバレ

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キムタクは本人やってるんじゃないのか、流石だと評価の声がWeiboで話題でした

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ちなみにこちらも。江西と斜め上なのはさすがです...

・ロケーションに特化した情報を発信するKOLたちの炎上

「海外でこんな暮らしをしてます」や「海外にいるから本物の買い物代行」など、こういったアカウントはWeiboでは人気があります。ただ今回の強制表示により、長年海外に住んでいて海外のいい暮らしや育児などの話題で数十万数百万のフォロワーを獲得したのにIPの属地が全然違うアカウントが次々と明らかになりました。

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例えば上海ローカルで有名な「魔都囡」のIP属地がまさかの日本。愛国ネット民行動で知られた「帝吧」のIP属地がまさかの台湾。毎日ドイツの日常をアピールしている「CC吃喝在德国」のIP属地がまさかの山東省。日本情報を発信する「来酱在东京」のIP属地が上海。イギリスの日常を発信する「娜娜在英国」のIP属地が広東省。

そして最もあり得ないKOLは、いつも日本の悪口を言って強く愛国者をアピールしている「连岳」のIP属地がまさかの日本だったこと。。

ちなみにWeiboで表示されるIP属地は最近の書き込み、コメント、投票などの総合行動による判断で確度も高いし、最近の中国のゼロコロナ政策では海外旅行も自粛中だし移動も制限されてるので言い訳が難しいです。

ここからはちょっとだけデリケートなので少額有料です。また、ここまでが面白かったらサポートするつもりでお読みいただければ幸いです。

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