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武漢の病院建設、10日間での1000ベッド病院の作り方

中国武漢の病院を10日間前後で建設をリードした組織、協力した企業、供給された資材と技術について書いてます。
(ほとんど無料で読めます、最後ちょっとだけ有料にしてるので、途中まで読んで面白いと思った方はサポートのつもりで購入いただけると幸いです)

日本のメディアでも報道されたように、武漢では肺炎患者治療用の施設として1000ベッド収容可能の「火神山病院」と、1600ベッド収容可能の「雷神山病院」が建設されました。

それぞれ開始から10日間と12日間で完成したという神速度での建設が話題になりました。

日本のメディアやTwitterでは「プレハブみたいなもんでしょ」「強制収容所」などと揶揄する表現も見られますが、それは違います。驚くほど設備が整っている、そして野戦病院とはいえ感染病専用なので、陰圧病室や医療汚水処理などがきちんとしてます。

また逆に「こんな短期間で!中国すげー」って表現も多く見ましたし、こちら中国メディアのはプロパガンダ内容のものが多いです。でも「人が多いから」とか「みんなすごく頑張ったから」みたいなところは本質ではないと思います。

建設完了から一週間ほど経った今、なぜこのスピードで病院建設できたかの分析が行われています、知ると感服されると思います。

まずは建設開始から2月2日までの上空からの写真の変化を↓

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24時間作業が継続され、本当に多くの組織と人が関わりました。作業内容ごとにブロックにして紹介します(太字は組織名になります)

まず、武漢市と政府が1月23日に病院を建設することを決定。
建設が決まってから、緊急命令が出される。中建三局(中国建筑第三工程局有限公司)がリードし、武漢建工武漢市政漢陽市政などの建設グループや企業が共同参加。5万平米の空き地に、7500名の建設者と1000台弱の建設機械が旧正月期間であるにも関わらず大晦日前日に集結。
北京中元国際工程設計研究院が17年前のSARS時の小湯山病院の設計図と施工図をわずか78分間で整理。武漢中信建築設計院に渡し、当時の経験と失敗談を伝授。
(小湯山病院はSARSの際に北京に作られた野戦病院、今回の建設にも大いに参考にされた
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%B9%AF%E5%B1%B1%E5%8C%BB%E9%99%A2)
武漢中信建築設計院に1時間で60人の設計者が集結、全国数百名のBIM建築士と協力して24時間で設計案を作成、60時間以内に実施担当企業と施工図を決定。
武漢航発集団による迅速な敷地の整頓と道路及び排水工事の施工。同時に、高能環境東方雨虹興源環境銀江環境など複数の業界トップ企業で緊急工事建設チームを作り、浸出防止工事、汚水処理、医療ゴミの移送施設の建設が始まる。また、中鉄重工、中鉄十一局、十四局など新幹線建設のプロが増援として参加し工期の短縮を担う。
国家電網から260人以上の電力従業員が参加し24時間体制で工事を行う。中国電建湖北装備公司が6台の変電所を用意、1月31日までに2本の1万ボルトの線、24台の箱式変圧器の設置作業、8000メートルの電力ケーブルの敷設を完成し送電する。
電気ケーブルの敷設が完了する前は、亿纬锂能が静音発電車を緊急提供し、通信基地局などの重要設備の緊急給電問題を解決する。
Huawei、中国テレコム、中国ユニコム、中国モバイル、中国鉄塔、中国電子、中国信科などの企業が共同作業、36時間で5Gの電波環境を整える。また専用のクラウドリソース、システムの整備とストレージ設備を用意し、遠隔診療システムを構築。
建設現場にカメラを設置し、三一重工、中重科、徐工机械などが支援する大型建設車の作業現場をネットユーザーに24時間中継。
中国石油が現場用ガソリン車を、中国石化がガソリンスタンドを用意、現場のガソリン利用環境を整える。同時にインスタントラーメンやお湯、会議場や臨時トイレを提供。
三峡グループ鄂州発電所が全員出勤、電気の使用を保証する。また封鎖された高速道路に火神山病院建設ための物资を優先的に運搬可能にする。その運搬路を活用して宝武鋼、浙江商中拓、五鉱発展などが鋼材を提供。
中国外運中糧グループが支援した物資で7500名の建設者に1日三食を提供。湖北中百倉アリババがスーパー(接触無しで利用可能な)を用意、建設者とこれからの医療関係者、病人に必要なものの提供を開始。
工事中には、専門企業が素材や材料を提供。記載があったものを列挙すると、中国航天科学技術集団湖北航天ケーブル会社が大規格ケーブル、華新株式がセメント、河北軍輝が防火塗料、正大製管が亜鉛メッキ鋼板、华が断熱材、恵達衛浴恒潔衛浴が便器と蛇口、湾岸安全の消防警報器、佳強など3社が提供する3500セットの集積部屋、新興際華の鋳鉄管、永高ホールディングが配管、中国五鉱が50セットの電源設備と4800セットの鋼部材、株洲麦格米特が50セットの電源設備、上海冠竜会社2000台のバルブをそれぞれ提供。
内装は、中建深装の管理者100人、施工者500人で作業。3日間で室内外の地ゴムの敷設、トイレと緩衝間の床れんがの敷設、及び200余りの病室の内装を完成させる。
内装完了後、情報システムの構築には、レノボが2000台以上のパソコンを提供。TCL電子がLCDディスプレイ、小米がタブレット、紫光、烽火通信、奇安信がLANネットワークとセキュリティソフト、衛寧健康がインターネット病院クラウドプラットフォームを提供。現場でサポートするITサービスチームも組織される。
専門設備は、聯影医療、上海信投、東軟グループがCT設備、潍坊雅士がICU病室と手術室専用の医療エアコン、上海集積回路業界協会がサーモグラフィーチップ、上海昕諾飛が930セットの紫外消毒ランプ、欧普照明が専門照明設備、楽普医療が2000本の電子体温計と700台の指用血酸素計、汇清科技奥佳華が専用空気清浄器、猟戸星空が医療サービスロボット、亚达家居が部品管理チームと寝床物資をそれぞれ提供。
以上のものを現地に運送したのは、順豊、中通、申通、韻達、EMS、アリババ物流プラットフォームなどの中国物流大手が共同で作った専用運送ルート。
格力のエアコン、ハイアールの冷蔵庫、美的の浄水器と湯沸かし器を設置。病院外には宇通客車江鈴集団が寄付した数十台の負圧救急車が配備され、患者を迎えに行くことを可能に。

この通り驚くほど多くの企業と資材と人材が集積されてできたことがわかります。上記を短期間でまとめる調達力に感服しました。これは中国のような社会主義の自由経済国家でなければできないことだと思います。

そしてこの作業の様子を国民に届けたことも特筆すべきことだと思います。

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