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適応障害の症状(休職前) 

上司との関係性が悪くなってから1ヶ月、私の脳の情報処理能力は段々と落ち始めていた。メールを打つのにも、上司に何か相談するのにも…全ての作業に今までの倍以上の時間がかかった。パソコンの前に座るが目の前のことに集中できず、頭が全く回らない。パソコンの画面をただ眺めているだけで時間が経っていくのを感じたが、どうすることもできなかった。ただ焦りと恐怖心だけは脳は覚えていた。
こんな状況が続き、プロジェクトの進行に影響が出始め残業が増えた。そのため、私生活に使うことのできる時間は段々と減っていった。

食事

食欲はあまり湧かなかった。そもそも「食べたい」ものがなかった。あえていうなら、時間がないため短時間で食べられるものが良かった。スーパーに行って食品を選ぶ気力も、材料を洗ったり、切ったり、調理したりする気力もなかった。後片付けなどもってのほかだ。この頃は、Amazonでまとめ買いしたインスタント食品を主に食べていた。噛むのも飲み込むのも面倒だった。ただ目の前にある食品を栄養摂取のために、生きるために胃に入れているだけだった。ただそれだけだった。
ときどきYou Tubeで「短時間レシピ」や「ズボラご飯」と検索して動画のレシピを参考に料理をしようとしたが、たった2,3分の動画も集中して見ることができなかった。このような食生活を続けた結果、体重は2週間で3kg程減った。

整容

まずお風呂に入れなくなった。お風呂に入るためには湯を沸かさねばならない。また入ったら20分くらいくらいは湯に浸かりたくなる。さらに髪を洗う場合はそのあとにシャンプー、コンディショナー、髪をドライヤーで乾かす…という作業が待ち構えている。この一連の作業は思っているよりもドッと疲れるものだ。
このときの自分には、5分のシャワーが限界であった。それでもシャンプーを泡立てて髪を洗う、トリートメントをつけてしっかり洗い流す、ボディーソープで全身を洗う、体を拭くという過程を経なければならない。浴室から出たあとはすぐに床に座り込んだ。髪の毛をドライヤーの強風で乾かしたあと、床に散らばった髪の毛を拾うことも憚られた。
この時期は、マスクで顔を覆っていたこともあり、メイクはしなくなった。コンタクトもつけなくなった。なるべくしなくてもいいことはしなくなった。
私を取り巻く世界は灰色になっていた。 

毎日の生活の中で、人は様々な「選択」をしている。病気になるとその些細な選択ができなくなるし、したいとも思えなくなる。自ずと「選択しなくてもいい」環境を自分で整え始める。どんなにささやかなものでも、日々の「選択」が自分の人生をいかに豊かにしているのかを思い知った。

睡眠

会社に行きたくない…そう思い始めてから夜寝る時間が遅くなった。明日が迫ってくる恐怖と今日を終わらせたくない(寝ると明日が来てしまう)という思いがあったからだ。
朝はすっきりと起きることができなくなっていた。頭と体が重いのだ。どれくらい重いかというと、自分の体にだけ、人の何倍もの重力がかかっているのではないかと思うくらいであった。まるで一夜にして体の物資がすみずみまで鉛に入れ変わってしまったのかと思うくらい重くて固い。とてつもなく大きな岩が背中に何個も張り付いているような、そんな感覚を持ちながら、毎日布団からのそのそと出ていた。這いつくばるという表現のほうが近いかもしれかい。加えて寝不足ということもあり、足取りはいつもフラフラとしていた。

体の反応

そんな日がしばらく続いたが、ついに自分が壊れたと思う瞬間が訪れた。ある朝のミーティングで、また心無い発言を上司にされたときだった。突然両腕から両指の先まで猛烈に震え始めたのだ。手をグーにして抑えようとしても震えはおさまらなかった。キーボードを打とうとしても、震える指がカタカタと音を立てるだけであった。ドキドキと心臓が不規則に脈打つのも感じられた。もう自分はこのままだと危ないかもしれないと思った。これは明らかに「異常」だと悟ったのはこのときが初めてだった。

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