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デザイナーズ・ダイアリー:「アース」(Designer's diary - Earth)

本記事は、 Maxime Tardif氏が2022年2月11日に投稿した「Designer's diary - Earth」の翻訳である。

アース」は、近いうちにリゴレから日本語版が発売される予定の注目作であり、Maxime Tardif氏は、そのデザイナーである(詳しい話は、前回のこの記事の冒頭を参照されたい。)。

「アース」のルールの概要を知りたければ、以下のHal99さんのThe Game Gallery Channelが最適である。

また、ローカライズに関する裏話を聞きたければ、日本語版の発売元であるリゴレのポッドキャスト「ボードゲーム専門店'リゴレ'ののぶさん家」の以下の回で聞くことができる。

本記事は、「アース」のKickstarterの開始直前に投稿されたデザイナーズ・ダイアリーであるが、単なる「アース」の紹介にとどまらない内容となっていると思われる。要は、膨大なカードを用いたエンジンビルドゲームにおけるカードバランスの調整について詳しく述べられている。デザイナーにとっては有益な面もあることと思い、翻訳することとした。

本記事に先行して、「アース」とその類似作品を比較した記事を翻訳したが、時系列的には本記事のほうが先に投稿されている。

なお、ゲーム内の用語は、日本語版が出版されておらず、うかがい知れるものがなかったため、こちらで勝手に翻訳している。したがって、日本語版の用語と異なることには留意されたい。また、本記事は、「アース」の宣伝じみた内容となっているが、利害関係者からの利益供与は一切受けてない。

元記事は、以下のリンク先を参照されたい。ヘッダー画像は、BGGから引用している(クレジット: W. Eric Martin)。

Kickstarterのリンク
https://www.kickstarter.com/projects/insideupgames/earth-1

「アース」のエクセル・スプレッドシート

「アース」をデザインしている際の第一の目標は、私が魅了されるテーマに関する、できる限り最も面白くて早い戦略ゲームを作ることだった。そうするためには、ボードゲームについて既に知っていることと知らないことに関する多くの質問を自分にぶつける必要があった。どんな要素が、ゲーム、メカニクス、ルール、アクション、インタラクション、操作等を好きにさせているのか。この検討は、多くの時間、多くのテストがかかったし、ゲームのプロトタイプを何版も何版も作り直したり、改善する方法について思いを巡らしたりすることとなった。最終バージョンに至るまでにプロトタイプを何回印刷したか数えなかった。けど、多かったね、おそらく20回から30回までの間くらいだと思う。私は、常に完全な透明性をもってゲームを見ようとしていて、テストプレイヤーの個人的なコメントを鵜呑みにしたり、できる限り厳しい形で判断していた。そして、最終バージョンは、私が今まで作り上げたゲームのデザインの中で最高のものかもしれない。

何が素晴らしいボードゲームを作り上げているのかを考えることによって、私にとっては、楽しくて好意的な体験を生み出して、ドーパミンを生成するゲームとメカニズムにあらゆることが向けられた。私は、最も好意的でドーパミンが放出される要素を特定して、1つのゲームの中に統合しようとした。

こういう理由で、私たち人類が進歩するのに最も得意とすることをする必要があった。つまり、過去に何が行われて何が試されたかを確認し、その上に増強したり構築したりするということだ。上手くいくわけがないと思ったり、驚くべきことだと気づいたりしたことに着目しようとした。どうやって、他の作品読むことをしないで優れた現代小説を書くことができるのだろうか。こういった理由で、この文章においては、私がプレイして気に入っている評価の高いゲームをたくさん用いている。「アース」のほうが優れているかのようなふりをするためではなく、私がどのような施工過程を経たのかということと、ゲームをデザインしている際に私の頭の中にまさしくあったことを理解してもらうために用いてるんだ。そういう考えを用いて、ゲームの中にあった最も不満に思ったものを取り除き、大好きな要素を残し、この全てを「アース」の中に詰め込んだんだ!

こんな大きなプロジェクトを手掛けるという着想を得たのは、レイ・ダリオの「PRINCIPLES(プリンシプルズ) 人生と仕事の原則」のおかげだった。こいつは驚くべき本で、個人の幸せから大企業までの範囲をカバーできる物事の合理化についてのものだ。基本的に、この本は、たくさんの原則を教えてくれるんだけど、個人的に最も重要なのは徹底的に透明性であるということ(私がこの文章を書いている唯一の理由だ。)と、物事が進化するサイクルであった。後者は、試してみて失敗し、うまくいかない要因を見つけ、それをじっくり検討し、改善させて、改良版を試すことで再びサイクルを始めるというものだ。それをたくさん行えば行うほど、プロジェクトに対する透明性が増してくるし、より良い結果が生まれるに違いない。これを応用するために、私は自分自身に多くの質問を投げかける必要があった。

投げかける必要があった1つ目の質問は、次のようなものだ。プレイ中にドーパミンを放出させて、その結果、楽しみを生み出すものは何か。その答えは、ユニークな特徴があるわけではないけれど、そのほとんどは意味のある意思決定や、こういった意思決定がゲームに影響を与えるとの感覚を伴う。これは、戦略ゲームに関して、全く運要素がない「チェス」ver2.0を作るという形ではなくて、プレイ中にプレイヤーが自分の制御下にあると感じられるように、ランダム性を最小限にしなければならないということである。全てにおいて最も重要で、気づくのに最も時間がかかったことは、今のところ、バランスだった。

そういったことをじっくり考えていると、私が楽しめることに従って、ゲームデザインを最適化するために取り組む必要があった他のポイントをリスト化したんだ。セットアップと片付けが早く済む、当初から面白い選択がある、ゲームに常に参加する、たくさんの小さな報酬がある、肯定的なところに集中する、プレイ時間が短い、達成感がある、リプレイ性が高い、時間、テーブル、カード配置場所を合理化する、プレイヤーインタラクションがちょうどいい具合を保つ。加えて、私が現実世界で大好きなことに関連したテーマを手掛けたいと思った。

たくさん話すことがあるので、このダイアリーを様々なセクションに分けた。みんなは興味を持った特定のセクションを読むことができるし、数日間かけて全てを読むこともできる。また、一度に全部を読んでも、全く読まなくてもいい。それはみんな次第だ! 各セクションは、私が望むものを実現するまで何回もじっくりと検討した要素で構成されている。忘れないでほしいのは、この長い過程の中で、本当に私の頭を巡った全てを要約した文章であることだ。きっと、言うべきことを忘れているところもあるだろうけど、「アース」を製作している間に、私がした最も重要なデザイン上の決断が含まれていることを願っているよ。

クレジット: Max Tar

1:「アース」のバランス

「アース」に関して直面した主要な問題というのは、ゲームのバランスだった。というのも、このゲームは、強い非対称性があって、カードの引きについてはランダム性が伴ってしまう。また、「アース」には、対照的な要素も多くて(それぞれの色と生息地が同じ数ある。)、物事のバランスをとるのに役立っている。私は、可能な限り、自然に近いゲームを作りたかったし、それが同時に強さと複雑さを表すものであってほしかった。そうするためには、全ての植物、地形、イベントが活躍できるように数学的なシステムを作成する必要があった。

「アース」には、全てのカードに多くの変数があり、得点獲得方法も様々あるので、繰り返されるプレイの中で全てのカードがほぼ同じ回数使われるようにすることが主な課題だった。私が統計学者でないことは頭に入れておいてほしい。だから、できる限り努力してこの作業を行った。私は、完全なる透明性という観点から、みんなにこのデザインに関する情報をお示しする。それは、議論を生み出したり、考え方(the concept)をより良くし、自分のゲームのバランスを取るための優れた方法について知りたいと考えている人たちに洞察を与えるために行うんだ。これが誰かの役に立つのであれば、本当に嬉しい!

地球という惑星では、ある植物が特定の環境下により適応するように、植物の中には、このゲームの状況次第では他の植物よりもよく成長する。だが、地球規模という視点で見れば、全ての植物にふさわしい場所があるものだ。私の目標は、もし、プレイヤーが多くの回数をプレイしてくれたならば(例えば、1000回とかそれ以上)、全てのカードが平均的に同じ得点を生み出し、常にある植物が他の植物よりも優れていたり弱かったりするといった状況がないように、ゲームをデベロップすることだった。また、カードの中には、ゲーム開始時のカードとして非常に優れているものがあって、別のカードの中には、ゲーム終了時のほうが優れているものがあって、また別のカードにはゲームを通して平均的であるものがあるといった感じにもしようとした。

クレジット: 左からMax Tar, Max Tar
※元記事は単純に上下に画像が挙げられているが、本文が左右としているで配列を変えている。

左側のカードは、コストがあまりかからないし、エンジンに対して良い効果を与えるので、ゲーム開始時には優れていると思う。他方、右側のカードは、コストがかさむし、エンジンに対する効果もなく、最終得点計算の条件のみしかないので、ゲーム終了時に使えるカードとなる。

このゲームには429枚のユニークカード(中には、異なる効果が記載されている両面のカードもある。)があることを考慮すると、(※バランスをとることは)非常に難題だった。そうするために、確率とゲーム制作時から蓄積してきたテストプレイ(512回以上のプレイヤーの異なるもの)の統計値を用いて、カードの1枚1枚に現れる全ての変数の強さを計測して検討する必要があった。あらゆる確率を考慮に入れる必要があったんだ。

それぞれの目標カードと得点カードがゲームごとに現れて、そのカードが影響を与える変数1つにつき平均でどの程度の得点を生み出すのかという確率を用いた。そのことを考慮して、1つ1つの変数が、多数回のゲームにおいて、全てのカードの平均として、どのくらいの得点に相当する価値があるのかを計算することが可能となった。これが変数のリストだ。

カードの種類
基本勝利点
植物キューブスロット
成長(growth)スロット
3つ以下の植物キューブスロット
3つ以上の成長スロット
2つ以下の成長スロット
4つ以上の成長コマ
植物キューブスロットや成長スロットのある植物
エンジンが生み出す平均点

要素
名前に地名がある
名前に色がある
名前に動物がある
2色の色
多数の色
4以上の勝利点
3以下の勝利点
4つ以上の土壌(soil)
3つ以下の土壌
4つ以上の植物
2つ以上の植物
偶数の勝利点
奇数の勝利点
5以上の成長値
4以下の成長値
6つの植物キューブスロット
黒色のカード
山頂(brow)カード
地形カード
2つ以上の生息地
1つ以下の生息地

例として、イロハモミジ(Japanese maple)を挙げるとしよう。コストは3以下、勝利点は偶数で3以下、岩場と寒冷地が生息地、樹木で名前に地名がある、4つのキューブスロットがあって、4つ以上の植物キューブスロットがある、高さが3だから3以上の高さとなり、成長値は4で4以下の成長値、黄色で、3つの成長スロットがある、黄色でエンジンに成長+1、キューブ+1を与える。これらを全て考慮に入れて、このカードの平均的な価値を計算する。そして、注ぎ込むコストと比較して全てのカードとバランスを取った。まさにこのカードの平均的価値は15.78で、エンジンの強さは2.8と算出される。

クレジット: Max Tar

カード上のあらゆる変数に対して、価値等を計算できるようにするための方法について簡単な例を挙げよう。左上にある3以下の土壌コストをみる。

3以下の土壌に対して各エコシステムカードが生み出す得点を計算する。
3勝利点 / 3以下の土壌コストがかかる2枚のカード = 1.5勝利点 / 3以下の土壌コスト

ゲーム内でこのエコシステムを所有する確率
3/64 = 0.046875

この条件における1ゲームごとに生み出される平均点得点
0.046875 * 1.5 VP = 0.0703125

3以下の土壌のファウナカードと地形カードそれぞれについて、このプロセスを繰り返す。3つの結果を併せると、3勝利点以下というカテゴリのみにおいて、1ゲームごとに平均して0.222575勝利点の価値があることが算出される。他の全ての変数についてこのプロセスを繰り返し、ゲーム中の全カードの平均得点を計算する公式を作る。そして、各カードが実際にどのくらいの価値があるか明らかにしてくて、全ての変数を1つのアルゴリズムに統合させた公式を作るのに3か月かかった。その後、このアルゴリズムを用いて、1枚1枚のカードのバランスを修正した。

=X276+K276+(N276*0.55)+(L276*0.3791)+(R276*0.5488)+(AE276+AF276+AG276+AH276)* EF!G476+(AJ276+AL276+AI276+AK276)*EF!H476+(AS276+AT276+AU276+BC276)*EF!I476+(N276*EF!J476)+(L276*EF!K476)+(AM276+AN276+AO276)*EF!O476+(AQ276*EF!P476)+(AV276*EF!R476)+(AW276*EF!S476)+(AX276*EF!T476)+(AY276*EF!U476)+(AZ276*EF!V476)+(BA276*EF!W476)+(BB276*EF!X476+3*EF!I476)+(BK276*EF!Y476)+(BL276*EF!Z476)+(BM276*EF!AA476)+(BO276*EF!AB476)+(BR276*EF!AD476)+(BS276*EF!AG476)+(BC276*EF!AJ476)+(BD276*EF!AK476)+(AD276*EF!AL476)+(BU276*EF!AH476)+(BV276*EF!AI476)+(BW276*EF!AM476)

上の公式は複雑に思えるかもしれないけれど、どの変数も、カード上に記載された要素の平均的な価値を示しているだけだ。各カードに当てはめると、その合計値が平均的な価値となる。めっちゃ大変な作業をしたら、ゲーム中の全ての植物カードと地形カードを含めた「アース」のバランスは、グラフのようになった。

クレジット: Max Tar

もし、見たいのであれば、Excelのスプレッドシートのリンクを掲げておいた。注意してほしいのは、最初に見たら面食らうかもしれないけれど、一度じっくり見てもらえれば、その大部分は意味がわかると思うよ!

「アース」のエクセルのスプレッドシート

とはいえ、留意してほしいのは、私は統計学者では全くない。それに、この公式やモデルは、確実に、完璧とは程遠いものだ。けど、1枚1枚のカードの全般的なバランスに関して良い感触を抱くのに十分な堅実さがある。このような見方は、人間のテストプレイによる視点では不可能だ。だって、関連する多くのインタラクションと可能性があるからね。統計学者であれば、確実に、私よりもかなり優れたものが作れて、現実に一層近い結果が得られるだろうさ。この作業をしている間のミスを減らすために、Excelシートにおいて簡単なプログラミングをすることを強く勧めておくよ。

ミスの数やExcel上で行きつ戻りつするのを減らすために、カード上の変数を変えたら自動的に列を埋めてくれる基礎的なプログラミングを用いる。

例:3以下の土壌の列において、上記のイロハモミジの下のセル(※AU3セル)
=IF(J4=3,"1","")
(※AU3セルは上記の関数ではなく、=IF(E3<=3,"1","")が表示される。そもそも参照するセルが誤っている。そして、この関数ではJ4セルの数値が3であれば、1を返し、そうでなければ何も返さないというもので本文中の説明と整合しないことは注意)

J4セル(※正しくはE3セル)は、そのカードに対する土壌の価値に関する列である。つまり、もし、土壌の価値が3以下であれば、エクセル上のそのセルには自動的に1が入力される。そうでなければ(4以上であれば)、そのセルは空欄のままだ。だから、もし、私が土壌の価値を変えて4という数値を入れたとしたら(※3の誤りかと思われる。)、毎回、ダブルチェックをする必要もなく、自動的にその列に1と入力される。全ての変数についてこれを行う。そうしたら、カードの要素を変更したら、全ての変数が自動的に変更されて、その公式に自動的に入力してくれる。多くの起こり得るミスを最小限にするために、あらゆることを自動化する必要がある。

カード上の特定の変数がどれくらい多くのカードにあるかというパーセンテージ(the % of prevalence of all the variables on cards)を計算するためには、単純な以下のエクセルの公式を用いる。そして、カード枚数で除すればいい。

=SUMPRODUCT(BA2:BA284)

そうすれば、ゲーム中に3以下の土壌コストのカードは125枚あり、プレイ可能なカード全体の51%になるということがわかる。この情報は、この変数を対象とする全ての目標がどのくらい多くの点数を与えるべきなのかを決定する際のバランスをとるのに大変役立つ。

私は、ゲームの背景にあるこういったエンジンを開発した。だって、あらゆる複雑な戦略ゲームは、こういった統計学的なものの恩恵に強く受けることになると堅く信じているからね。各カードにある全ての変数を用いることで、カードがたくさんあればあるほど、プレイヤーにはより多くの可能性とやりとり(interaction)が発生する。あまりにも多すぎるので、人間の目、ましてや100人の人間の目くらいであるなら、いかなる感覚や感情を排しつつ、全てを指摘したり、一貫性のある形でバランスを生み出したりすることなんてのはできない。効率的な方法で、そのような作業をこなすことができるのは、アルゴリズムだけだ。そのことはどうしようもない。他のデザイナーがこの戦略を用いているかどうかはわからないけど、こういったことは、全ての複雑な現代戦略ゲームの未来の姿になると強く信じている。

このアルゴリズムは、ゲームのバランスをとりつつ、「アース」に高いリプレイ性をもたらしてくれた。全てのカードはバランスが取れており、あらゆる状況や目標の組合せによって強さが定まるので、ゲームは、毎回、プレイヤーが常に異なるものを探し求める探検のようである。前回のゲームでは非常に強力なコンボが、次のゲームでは最悪なコンボと化すかもしれない。プレイヤーは、2回のゲームにおいて、全く同じことをすることは決してない。カードを見て、"いつもこのカードを使うのさ"とか、"このカードは絶対に使わない"とかと言うようなカードは存在しない。こういったことは、他のカードより優れているカードがたくさんある「クランク!」(3枚のカードを引く)や「ウイングスパン」(1つの卵で2つのリソースを得るカラスや、1つの卵で2枚のカードを引くカード)で経験したことだ。常に使用することができるカードもあれば、ちょっと見ただけで常に獲得されるカードもある。

アルゴリズムがあることで、プレイヤーは、勝つためにいつも同じことをしなければならないと感じず、全ての勝つための戦略を試そうと思うので、高いリプレイ性がもたらされる。アルゴリズムは、常にプレイされたり、全くプレイされたりしない強すぎるとか弱すぎるとかといった"ぶっ壊れカード"の数を減らす。この点に特筆すべきことはないね。

「アース」のバランスは、テストプレイと蓄積された統計にも基づいている。あらゆることがゲームの勝敗を左右する。統計があることで、各ゲームの違いを作る全てのことを計算することができるようになる。高いリプレイ性をもたらすのは、目標カードだ(ファウナカードやエコシステムカード)。だから、この統計というのは、こういったカードの均衡を保つこともできた。この2つのカテゴリにもたらす得点のバランスはもっとすごい。というのも、ゲームの変動性はここから由来するして、楽しさを生み出すからね。プレイヤーがプレイするそのカードの基本価値に与えられる得点も高い。この理由は、ゲームの要素を制限するものは土壌というリソースで、ゲームのゴールは、究極的にはカードをプレイすることだからね。

他のカテゴリ(成長、植物、堆肥(composts)、地形)は、似たような平均的な価値を生み出す。だから、全ての戦略は、バランスが取れていて、ゲームに勝つことができる。プレイヤーは、多くの異なる戦略を用いてゲームに勝つことができる。複数の目標や得点方法を無視して、そのほかのことを最大化してもだ。小さいカードだけをプレイするレース戦略(※ちまちまと得点を稼いで逃げ切る戦略)も有効だが、私は、レースをして早くプレイすることがシステム的に最善の選択というようなゲームに「アース」をしたくなかったので、そのほかの戦略と同じくらいの強さだ。得点を獲得するための方法が様々あるおかげで、1つの手番において、(プレイしたくないのであれば、)0点の価値かもしれないし、完全に戦略と合致すれば50点の価値があるように、「アース」はデザインされた。

地形カードは高い価値があるので、バランスを取るのは非常に大変だった。1枚のカードを引いたら、それだけでプレイヤーがゲームに勝利してしまうゲーム終了時の"トップデッキ“という状況は避けたかった。こういった理由から、地形カードで得点をするためには多くの土壌が必要となる。地形カードをプレイするには、少なくとも最低限の計画立てが必要だ。この点については、ランダム性を最小限にしたかった。得点カードのコストが高いおかげで、プレイヤーが運良く必要なカードを発見するかもしれないが、そのカードは地形カードかもしれないし、そうじゃないかもしれない。地形は、必ずしも、"トップデッキ"に有効というわけではない。本当に終了時の状況次第だし、このことこそが、ゲームが壊れないようにと思って導入したことだ。地形をプレイすることで勝つことができるが、地形をプレイしなくとも同じくらい勝てるんだね。

イベントカードも同じくバランスを取るのが大変だった。みんなにイベントカードをプレイしてもらいたかったけど、常にプレイされるわけではない。平均的にイベントカードがどのくらいの得点をもたらすかを把握するために、手札に入ってくる可能性があるあらゆるカードについて平均的な価値を計算する必要があった。イベントカードは、プレイヤーが時々プレイするくらいに作られているが、常にではない。ちょっとした報酬をもたらすものも中にはあるので、かなり頻繁にプレイされることもあるが、大きな優位性をもたらすほどではない。大きく優位になるカードはコストがかかって、ゲーム終了時にマイナスの勝利点をもたらすことが多い。結局のところ、他のカードと同じようにイベントカードも計算しておいた。つまり、同じような平均的な得点をもたらすようにするが、めちゃくちゃ場の状況に依存することとなる。こうすることで、「アース」のプレイヤーに、操作性と驚きを与える

異なるアクション間のバランスも超重要だった。勝つために常に同じアクションをひたすら行う必要があるというゲームにはしたくなくて、全てを同じ強さにする必要があった。カードをプレイする必要があるゲームの中には、明らかに、他のアクションよりもカードをプレイするアクションの方が重要となっていることが常だ。しかし、それでも、状況次第では良くも悪くもなるように 、4つのアクションにおけるあらゆる要素の価値が考慮された。「ウイングスパン」で起こるような状況を避けたかったんだ。このゲームでは、ほとんどの場合において、最終ラウンドの5アクションでそれぞれのフィールドで同じことができるように黄色のラインを最大化しようとする。だって、それこそが得点を最大にする動きだからね。

クレジット: Max Tar
「アース」で行うことができる4つのアクションは、釣り合いがとれている必要があった。ゲームの唯一の目標はカードをプレイすることなので、最も強いアクションは緑のままだが、それでもなお、これらのアクションには調和がとれていると思うね。

当初、バランスをとるアクションは、黄色のアクションと比較されていた。黄色のアクションを5枚カードを引いて3つ成長させるというものにして、他のプレイヤーは3枚カードを引いて3つ成長させるというふうにしようとした。5人プレイでテストプレイをした時、大量のカードの山が1回のゲームでは足りなかったんだ。したがって、コンポーネントの観点からは、「アース」では最高でも4枚が限界だった。そして、これに基づいて他のアクションの強さを計算した。こういう理由で、緑色のアクションでも4枚引いて1枚を残すというようになっている。もし、プレイヤーが2枚以上残してしまうと、5人プレイの時にはメインデックが尽きてしまうからね。アクションは、それでも十分に大盤振る舞いになっている(generous)と結論づけた。その時点で、もし、プレイヤーが特定のリソースをもっと欲しければ、エンジンを組み上げて欲しいものを得ることは非常に容易い。

異なるアクション間だけでなく、異なる戦略間でも重要だ。私にとっては、コストを減らして地形をプレイするレース戦略というのは、成長、植物、堆肥、それに大きな地形カードをプレイする戦略と同じくらい良いものであることが重要だ。上述のExcelシートによって、あらゆる勝利への道筋のバランスをとることができた。

最後に、バランスに関しては、全ての目標カードがある程度同価値であることが重要だった。これは、既知の各要素のパーセンテージを用いることができて、達成することはわりかし容易だった。実は、どの目標がどれくらい多くの得点を獲得し、どの目標がどのくらい多くの要素を達成すべきかを決定するのは簡単だった。

2:単純でオープンなルール

多くの理由から、単純なルールのゲームが本当に楽しいと気付いた。まず、単純なルールはインストが簡単だし、理解も容易い。そうすることで、もっと頻繁にいろんな人と遊ぶようになる。次に、単純なルールは例外処理の余地も少なくなる。そうすることで、よりすっきりしたデザインになるし、合理的なゲームにつながる。

グルームヘイヴン」、「トワイライト・ストラグル」、「アナクロニー」などのような複雑なルールのゲームも心から楽しむけれども、遊ぶ頻度としては少なくなる。既にルールを知っている人たちや、既に何回かプレイしたことがある人たちと遊ぶことのほうが好む。そして、遊ぶ頻度が少なくなるがゆえに、私にとっては、こういったゲームに追い求めているドーパミンを得ることの妨げとなっている。

したがって、単純なルールというのは、私的に、「アース」に絶対不可欠なものだった。こういった理由で、プレイヤーが自分の手番で選ぶことができるアクションを、たった4つの異なるアクションにゲームを分割した。このゲームにおいては、基本的に、冬、春、夏、秋のアクションから選ぶこととなる。

冬:6植物と2土壌を得る。
春:4枚カードを引き、2成長を得る。
夏:2枚のカードをプレイし、4枚のカードを引いて1枚を保持する。
秋:5リソースと2堆肥を得る。

目標は、4×4のカードのタブローを作って、各ゲームで与えられる7つの目標を達成し、最大化することだ。それで終わり。各プレイヤーボード上にあるアイコンのインデックスを少し見れば、準備は95%完了だ! 新規プレイヤーにインストするのに、大体5分かかり、最大でも10分で終わる。

また、単純なルールだと、ゲームで最も制限的なルールが少ないということになる。私の友人の1人である素晴らしいビデオゲームデザイナーは、かつて、ゲーム中のメカニクスは、ゲームそれ自体に反して機能することはあり得ないと語ってくれた。もし、そうだとわかったら、それを取り除くべきだ。こういった理由で、手札のカード枚数に制限はないし、所有できる土壌リソースに制限はないし、タブロー上にカードを配置するにも最小限の制限しかない。時として、様々な理由で、ゲームには恣意的な制限が設けられて、それが不満につながることもあるかもしれない。「アース」は、非常に制限のないオープンワールドのエンジンビルドゲームだ。これは、完全にテーマと合致していると思う。可能性は膨大で、たくさんの素晴らしいことを成し遂げることができる。あらゆるかいけつさ解決策の中から最高のものを見つけてみてほしい!

制限が多すぎてカードがプレイできないといった理由で、カードをプレイすることができないゲームほどいらだたしいものはないよね。そういうわけで、土壌という1つの通貨にだけにしておいた。そして、土壌は、非常に手に入りやすくなっている。プレイヤーは、同じように植物3個と土壌2つをいつでも交換できる。だから、土壌を入手する方法は1つ以上ある。このことが、このゲームにおける主要な制約だ。土壌は非常に手に入りやすいので、何をプレイすべきかという意思決定は、(※ゲームに)押し付けられた選択肢ではなく、多くの素晴らしい選択肢から選ぶこととなる。

(例えば、−4℃以下で、酸素濃度が4%以上でしかプレイできないといった)特定の状況下でのみプレイすることができる「テラフォーミング・マーズ」にあるようなカードは避けたかった。あるいは、「ウイングスパン」にあるような特定の環境下でのみプレイできるカードは避けたかったね。その理由は理解するところだけれど、こういったルールは、プレイできるコンボの数を最小化し、ゲーマーに対するごまかしになる可能性がある。こういった邪魔な段階(layers, ※層)を取り除くことによって、より良い体験、もっと多くのコントロールが得られるし、不満も少なくなり、より多くの可能性が生まれることにつながる。そういったことから、より高いリプレイ性ももたらすことになる。

私は、「アース」でいつでもプレイできるイベントカードに対してもこの思考プロセスを適用させた。最初は、カードをプレイするためのアクションを利用しながらでしか、イベントカードをぷれいできなかった。最終的に、全くイベントカードはプレイされなかったんだ。そこで、プレイヤーは自分の手番の最初にイベントカードをプレイすることができるようにした。これは、プレイヤーの選択肢に対するコントロールを奪うことになるので、不満しか生み出さない無駄な制限ルールに成り果てた。「マジック:ザ・ギャザリング」におけるインスタントのように、いつでもプレイできるという形にした。そうすると、イベントカードのために全てを変更した。突如として、イベントカードは、「アース」における楽しさと選択肢の主要な位置を占めるようになった。ただ、ルールを単純化してゲームをオープンワールドのままにしようとしただけで。

同じプロセスがファウナ目標(ゲーム中の早取りの目標)の獲得でも起こった。当初、混乱を減らすために、プレイヤーは自分の手番でのみ獲得できるというルールだった。こいつもまた、無駄で不満を生むものだった。そして、同じ原理を適用して、いつでも獲得できるようにルールを単純化した。そうすることで、ゲームに楽しさがもっと加わり、計画したのにしたいことができないという不満を減らせた。またしても、ルールを単純化してこうなったんだ。

直接得点カード(地形)をメインデックに加えるという選択も、ルールの単純化の一例である。最初は、多くのゲームにあるように、地形カードとゲーム終了時の得点カードが異なる山札となるようにしたかった。しかし、そうすると、ルール、セットアップ、ルール説明等の無駄となるような余計な段階(layer)を加えることになるだけだと気付いた。こういうカードを直接他の山札に入れ込むことは、ゲームの単純性、スピード、楽しさを著しく向上させた。

私が本当に好きなゲームの例として、「サイズ -大鎌戦役-」がある。このゲームでも、プレイヤーは、自分のプレイヤーボード上の4つの取り得るアクションから1つを選ばなければならない。私がプレイするたびに、ゲーム中に、連続して同じアクションを2回できたらいいなぁと思う瞬間がある。しかし、プレイヤーがそのようにできないようにしている制限ルールがある。その理由が存在することは理解するけれども、「アース」では硬直的な(rigid)ルールを最小限にしたかったので、同じ方向性に進むのはやめにして、プレイヤーの自由選択に任せることにした。ルールを少し単純化して、より多くの選択肢を与える。したがって、プレイヤーにコントロールを与えることなる。

楽しさを高めたままにしておいて、不満レベルを低めるためにルールを複雑化する必要があるという珍しい例外がある。そのような例の1つは、ゲーム終了のルールだ。当初は、4×4のタブローを初めに完成させたプレイヤーが、直ちにゲームを終了させて、そのことに対する最終ゲーム得点を得るというものだった。この単純なルールは、ゲームを最初に始めたプレイヤーが有利であったことから、不満を生み出してしまった。そういったプレイヤーは、手番で終了する可能性が高くて、アクションを選んで大きなボーナスを得る状態になる手番が1つ多いということになる。

これは、ランダムイベント(スタートプレイヤーを決める)によって引き起こされる不公平な状況を生み出す。全プレイヤーにとって公平で不満を減らすためには、特にこの場合については、スタートプレイヤー以外の全員が追加の手番をすることができるようにすることによって、ルールを複雑にする必要があった。そうして、ゲームの終了ルールについては、プレイヤーが自分の4×4のタブローを完成させたラウンドで終了することとした。

私は、5人でプレイしている時の別の例外に気づいた。当初は、各プレイヤーは、ゲーム開始時に1枚の島カード、1枚の天候カード、1枚のエコシステムカードが配られた。そして、プレイヤーは、カードのどちらの面をプレイするか選択しなければならなかった。私の友人は、手番順でいうと5番目だった。その友人の島カードの両面は、ゲーム開始時に引くことができるカードとリソースが限られており、5人目のプレイヤーだったとしたら最悪だ。ランダムに発生することをコントロールできなかったことから、彼にとっては不満だった。10枚の島カードと天候カードがあるので、各プレイヤーは、ゲーム開始時にカードのどちらかの1つ面ではなくて2つの面を使えるようにした。このことによってルールを複雑化したわけだが、選択肢が増えるし、私の友人に起こった状況みたいなことを減らすことができたので、そうする価値があった。

また、「アース」には、多くのカードと効果があるので、大量のアイコンを利用しつつも、簡単に理解なものにしたかった。こうすることで、プレイヤーは、全てのカードを読む必要がなくなって、アイコンを見るだけで済むので、ゲームが理解しやすくなった。良い形でゲームを単純化したので、一旦、アイコンを把握してしまえば、プレイが速くなる。「アース」のカードは検索するに十分な量が既にあるので、みんなには(※カードを)読むことに時間を費やしてほしくなかった。それでも、カードの中には複雑で単純なアイコンでは表せないものもあるので、文章を含める必要があるカードもある。全てのことができる限り明確で、自分の対戦相手が何をしているのかが遠くからでも把握することができるように、「アース」を制作しようとした。アイコンと色を見分けるのは非常に簡単だと思う。それが目標だったんだ。また、色覚異常の人たちがゲームをプレイしやすくするために、詳細とアイコンを詰め込もうとした。プレイヤーの選択ボードにマッチした色においては、異なる質感を設けた。

最後に、私にとってオープンなルールを採用する上で本当に重要なもう1つの点は、対応できる最も広いプレイヤー範囲で、「アース」がプレイされるようにすることだった。先ほど言及したように、この点での制限要素はカードなんだ。デックには283枚のカードあるというのにね。6人プレイでは、デックが足りなくなってしまい、良いことではないよね。良いニュースは、このゲームがバランスが取れていて、1人から5人までならうまい具合にプレイできるってことだ。これは、ダウンタイムを減らす同時アクションと、プレイヤー人数が何人であろうと、カードがバランスが取れていると確かめられるアルゴリズムのおかげだね。明らかに、5人プレイの方が2人プレイよりも若干時間がかかるけど、全員が常にプレイをしているのでそんなに差はない。

このゲームのルールは単純でオープンだけど、「アース」の複雑さと美しさは、ゲームを通じてしなければならない膨大な種類の意味のある意思決定と選択に由来する。あらゆる要素が良いことになり得るが、プレイヤーは、何が最高かを見極める必要がある。エンジン、色の効果、配置、コスト等のためにカードを選択することが厳しい決断になるかもしれない。他のプレイヤーがあまりに多くのものを得ることを妨害しつつ、欲しいものを得るために適切なアクションを選択しなければならないかもしれない。プレイヤーは、どのカードを保持して、どのカードを捨てるかも選択しなければならない。

だから、心配にならないでほしい。たとえルールが単純だからといって、短い時間の中で考えることはたくさんある! 適切な意思決定をしたという満足感は、ゲームを通じてずっと得られるさ。

3:早いセットアップと片付け

私たちボードゲーマーが、ボードゲームのコンポーネントを動かすのが好きだとしても、セットアップや片付けをする時よりも、実際にゲームをプレイする時のほうが常にドーパミンが多く出てるよね。これは認めざるを得ない。こういった理由で、早いセットアップと片付けができるゲームが欲しかったんだ。みんなに1枚のボードを渡す、大量のユニークカードの山札をシャッフルする、各プレイヤーにゲーム開始時のカードを配る、テーブルの中央にリソースを置く、目標カードを配置する、はい、プレイの準備は完了だ。

私が、ゲームの中心(a main medium)としてカードを選んだのには様々な理由があるが、その1つの理由は、手早く簡単に扱えるからだ。カードであれば、セットアップも片付けもより早く終わる。製造の合理化という面もあるけど、こうした理由で、全部同じフォーマットになった。

アルナックの失われし遺跡」や「ミステリウム」のようなゲームが大好きだ。けど、配置するトークン、駒、カードが大量にあって、セットアップに時間がかかる。あまりに多くの異なるコンポーネントを入れたくなかったのは、こういった理由からだ。「ギズモ」や「世界の七不思議」のようなゲームも非常に素晴らしい。けど、異なる山札があるというのは、セットアップを長くしてしまう。だから、「テラフォーミング・マーズ」「レース・フォー・ザ・ギャラクシー」、「ウイングスパン」のような1つの大量のカードのデックを選択した。私は、「アース」をできるだけ多くの機会にぱっと開けて遊べる(pop open and play)ゲームにしたかったんだ。

こうすることで、「アース」は、5分間でセットアップと片付けが済むゲームとなった。多分、カードをシャッフルしている間、ゆったりとして、話したり、他の何かをしたりしたとしても10分かな!

4:最初から面白い選択

早く始まり、1手番目から直ちに面白い選択と戦略ツリーが伴うゲームのほうが良いに決まっている。ダウンタイムを減らすし、すぐにドーパミンが放出される。そうして、優れたエンターテイメントの道具となる。

このことを学んだのは、私が「スタークラフト2」の大ファンというのも一因だ。数年前に、デザイナーが、このゲームに対する私の楽しさに大きな影響を与える変更をゲームに加えた。デザイナーは、カジュアル勢、競争勢、プロ勢において、ゲームの開始が全員常に同じであることに気づいた。最初に6ワーカーから12ワーカーまで得る。そして、戦略ツリーは、プレイヤーが12ワーカーに到達した時に本格的に作動する。それに気づいたデザイナーは、みんなが12ワーカーから開始することにした。この1つの小さな変更が大きくゲームを改善したと思う。そうしたことで、プレイヤーにより多くの報酬をもたらし、ゲームの開始直後からインパクトを与える意味のある意思決定をもたらしたので、1秒目からゲームが早くなり、楽しさが増した。

それを念頭に入れると、「Stone Age」にあるようなメカニクスは避けたかった。このゲームでは、何よりも食料が必要なので、自分の農場を建築することがゲーム開始時においてほぼ常に良い選択肢である。また、最初の数手番は、エンジンを作動させるために、リソースや何枚かのカードを蓄積することに専念するだけといったエンジンビルドゲームにおいてみられるようなことも避けたかった。「スタークラフト2」のように、初手番からエンジンが作動できるようにして、ゲームが進むにつれて優れたものになっていくようにしたかった。「ギズモ」、「サイズ -大鎌戦役-」、「ウイングスパン」をプレイする時に、3つのゲームは本当に大好きだけど、それでも、エンジンを始動するために特定のアクションが必要となるので、私がする選択(choices)やその選択の幅(options)は、最初から限られているように感じた。そういったゲームは、何をすべきか私に指示してくるように感じた。このことは、私の選択肢や持っているかもしれないコントロールを制限することとなる。よって、楽しさも減少する。

この状況を修正するために、友人と私が「世界の七不思議」をプレイする際にすることから着想を得た。ファンメイドのワンダーをたくさん印刷しておく、今では合計して50個以上はある。ゲームの開始をより良くして多くの選択肢をもたらすために、3つのワンダーをランダムに配って、ゲームが開始する前であってもどの戦略を採用するかに係る選択があるようにした。そうすると、ゲームと楽しさが始めから……、うん、ゲームが始まる前からだったね! 「アース」でも、これと同じことを再現しようとしたんだ。

各ゲームの最初に、プレイヤーには、両面の島カード、気候カード、エコシステムカードが2枚配られる。これらは、「世界の七不思議」におけるワンダーに相当するものだ。島カードは、プレイヤーの開始時のカード、土壌、堆肥、勝利点、エンジンをもたらす。気候カードはエンジンを成長させるし、エコシステムカードはゲーム終了時のボーナスをもたらす。プレイヤーには、4つの異なる島カード、気候カード、エコシステムカードが配られて、ゲームが始まる前に選ぶこととなる。したがって、開始直後から、こういった選択をして、ゲームに大きな影響を与える戦略的な意思決定を伴うちょっとしたドーパミンの放出がみられる。プレイヤーは、ボード上の目標や、特定のゲームにおいて構築したい特定の戦略に合わせようとする。

クレジット: Max Tar

加えて、これらのカードは、ゲームが始まる前からプレイヤーの開始時のエンジンを構成して、まさしくゲームの開始直後から自分の戦略について考える機会を与えてくれる。

20枚のユニークの島カード、20枚の気候カード、64枚のエコシステムカードがあるので、25,500通り以上の開始時の可能性がある。これは、たくさんの(※「世界の七不思議」における)ワンダーを作り出すことになる!

この明確な事実は、非常に高いリプレイ性をもたらすので、長期的な楽しさと「アース」が生成するドーパミンに大きな役割を果たす。頻繁にプレイするようになって、「アース」がみんなにより多くの楽しさをもたらしてくれるんだ。

このゲームの基本的なアクションも、素早いスタートと多くの選択肢をもたらすようにデザインされた。随分前に本当に楽しんだゲームは、「アグリコラ」だった。「アグリコラ」は、出版されて以降、このジャンルにおける多くの他のゲームを形作った(defined)堅実なユーロゲームだ。例として、このゲームを用いようと思う。だって、私は、常に「アグリコラ」で望んでいたものを得ようともがいていて、結局、1時間以上プレイした後で、数個の野菜と動物敷かない状態で終わることに気づいたからだ。今では、同じ時間をかけても得られるもの(※報酬)が多いので、「カヴェルナ:洞窟の農夫たち」のほうが好きだ。

これを避けるために、基本となるアクションそれぞれが、大きなボーナスをもたらすように「アース」をデザインした。だから、プレイヤーは、直ちに4枚のカードと2つの成長を得るか、5つの土壌と2つの堆肥を得るか、6つの植物と2つの土壌を得るか、直接2枚のカードをプレイし、4枚のカードを引いて1枚のカードを残すかのいずれかを選ぶ。こうすることで、より優れたより満足感のある報酬が得られたり、ゲームとエンジンが素早く始められたり、より多くの選択肢が与えられることによって運要素を減らせたり、有利なことができないとかやりたいことができないとかが原因で行き詰まって不満が溜まるのを避けたりすることができる。基本的なアクションがこんなふうに莫大な利益をもたらすゲームは、私の知る限りはこのゲームだけだし、私の意見としては、「アース」が素晴らしいゲームになっているポイントの1つである。

カード上のアクションもプレイヤーに大きな利益を与える。だから、一、二枚のカードをプレイすると、1手番目直後から堅実なエンジンを作動させることができる。こういったゲームの開始時における決断のほとんどは、「スタークラフト2」で気づいたことに由来している。だから、ブリザード・エンターテイメントには感謝したいね!

5:常にゲームに参加する

これまでの人生で多くの大型戦略ゲームをプレイしてきた。そして、その多くについて、私は2人でのプレイだけを好んでいる。もっと多くのプレイヤーがいると、一日中ゲームに参加することになることが多い。2人プレイではなく6人プレイだったら、一般的にドーパミンがあまり出ることはない。私は、暇な時間があまりないゲームを楽しむんだ。2人プレイしかしないゲームには、「ツォルキン:マヤ神聖歴」、「カヴェルナ:洞窟の農夫たち」、「Fresco」が含まれる。「カヴェルナ:洞窟の農夫たち」を7人でプレイすることは決して容認しないと思う。誰がそんなことをしようと思うのかわからんけど、自分の手番と手番の間で本が読んで、いくつかのレシピにある料理を作れるだろうね。

本当に多人数プレイにうってつけで、絶えず良い塩梅のドーパミンが出るゲームというのは、私の考えでは、「ジャスト・ワン」や「ディクシット」のようなパーティーゲームとか、みんなが常にプレイしている戦略ゲームになるんだ。こういった種類のゲームになると、同時ドラフトや同時アクション選択というのは、ゲーム中に全プレイヤーが行動をし続けられるので、面白いよね。同時ドラフトについては、「世界の七不思議」、「ブラッドレイジ」、「スシゴー」が思いつくね。同時アクションであったら、「レース・フォー・ザ・ギャラクシー」/「ロール・フォー・ザ・ギャラクシー」、「タイニータウン」、「Valeria: Card Kingdoms」が頭に浮かぶ。

こういった種類の戦略ゲームのどちらとも、良い選択だった。けど、私は、(土壌コスト、プレイするタイミング、カードを捨てるタイミング等を踏まえて)最終的に複雑な戦略の選択ができる場になると感じたので、同時アクションのほうにすると決めた。他のプレイヤーがあるアクションを選択すると、利益は小さくなるけれど、自分もそのアクションがプレイできる状態になる。そして、選択されたアクションに係る全てのカードを起動させる。

個人的に重要なこととして、「アース」の主要な面としてもう1つあるのは、最終得点が計算されるまで誰が勝者か分かりづらくするということだ。数年前にプレイした「カタン」のゲームを思い出すよ。そのゲームでは、ゲーム開始から20分後に負けたと分かった、そして、それから1時間もゲームは継続したんだ。負けたと分かってからは、残りのゲームに熱中できる気分ではなかった。「アース」では、そんなような状況を避けたかった。まず、ゲーム中に誰が先頭にいるかを非常にわかりづらくなることが多いようにした。自分が先頭にいると分かっていると考えるかもしれない。その後、他のプレイヤーが結局勝利することになるのさ。次に、ゲームの時間を早めて、必然的に何時間も座らなくてもいいようにした。3つ目に、もし、勝利することができなかったとしても、なお、達成すべき多くのポジティブなことや楽しいことがあって、正しくプレイしたら、デック中の地形カードが常に逆転の機会を与えてくれるようにした。

最終的に、「アース」をプレイしたら、プレイヤーは常にゲームに参加していることとなる。そのことは、次のポイントであるところのたくさんのちょっとした報酬があるという話につながる。

6:たくさんのちょっとした報酬

常に参加させるためには、ゲーム中にある小さなアクションや可能性を最大化することが必要となる。このことは、「World of Warcraft」が世に出た時に学んだことだ。ドーパミンを分泌させるためには、何も受け取らないよりも、ちょっとした報酬を受け取っているほうが絶対に良い。幸いにも、「アース」はテンポが早くてすぐに終わるので、ビデオゲームよりかは何日も熱中しないで済む……。このちょっとした報酬を与えるシステムは、カード上のアクションが本当にわずかな報酬から大きい報酬までの範囲があることの理由となっている。特定の状況下では利益を得ることができないカードをたくさん作るのではなく、大部分のカードが一般的に多くの報酬をもたらすようにした。定期的に報酬が与えられるのは楽しいし、最終的によりポジティブな体験を生み出す。「アース」では、プレイヤーは、常に、新しい土壌、植物、成長、堆肥、カードを手元で受け取る。この全てが、プレイヤーがすることの選択肢を増やしてくれる。かなりの手間がかかるけれども、駒を動かす手間よりも、常にこういった報酬があるという利点のほうが大きいと思っている。また、その利点のほとんどは、ゲームに影響を与えるちょっとした戦略的な選択を示唆する。

この点については、イベントカードも同様に主要なツールだった。イベントカードによって、プレイヤーは、2枚のカードの効果が発動している間であっても、ゲーム中にいつでもちょっとした報酬が得られる。こうすることで、プレイヤーが自分の戦略についてコントロールしているように感じるし、選択肢も増える。また、プレイヤーが全手番で参加し続けるようにもなり、同様に他のプレイヤーを驚かせる潜在的な可能性ももたらす。「アース」が優れたゲームとして必要不可欠なものが、まさにちょっとした報酬という追加の段階であった!

7:ポジティブなことに焦点を当てる

ゲームをプレイしていると、最も嫌いになりがちな要素は、長いプレイ時間のかかる殴り合い(take that)のゲームであることに気づく。私は、「ラブレター」や「レッド7」のような、非常にテンポが早くてめっちゃ楽しくておかしい殴り合いのゲームが大好きだ。プレイする前であっても死んでしまうかもしれない。私は、これらのゲームを楽しくプレイした経験がある! 私は、ウォーゲームの大ファンではないけれども、「Cyclades」や「Kemet」を楽しくプレイした。私は、「マジック:ザ・ギャザリング」をたくさんプレイしたことがある。けど、「マジック:ザ・ギャザリング」をプレイしたことがないゲーマーっているんかな? 2021年の私のお気に入りのゲームの1つは、「Street Fighter: The Miniatures Game」だった。このゲームは、非常に殴り合うゲームだけど、15分間で終わるゲームだ。だから、それで全て良いわけだ。

あまり楽しめないのは、長い時間をかけて自分のボードを構築したが、誰かがやってきて構築したものをぶっ壊していく戦略ゲームだね。ボードゲームをしていて、そんなような体験を多くしたよ。こういったゲームは、他のプレイヤーのボードを全てぶち壊すプレイヤーにとってはドーパミンが放出されるゲームになるけれど、自分のスーパーコンボを全滅させられたプレイヤーにとってはほとんどネガティブ(※原文はpositiveだが、タイポだと思われる。)なだけではないかね。「Boss Monster: The Dungeon Building Card Game」において、スーパーなダンジョンを築き上げるのに膨大な労力を注いだが、適切なテストをする前に、まさに目の前で破壊されていくのを目撃するだけだったといったような体験を思い出すね。多くの人たちが、そんなようなゲームにやりがいを感じているのは知っているけれども、「アース」では、こういった悪い感情を避けたかったんだ。こういうわけで、「アース」において、トルネード、津波、ハリケーンのようなあらゆるイベントは、プレイヤーボードにしか影響をもたらさない。そこで、異なる資源を得るために自分のリソースを破壊するが、他のプレイヤーのボード上のものを全滅させることには決してならない。私は、小さな自分自身の島の神になったように思ってるよ。

「アース」におけるインタラクションの多くは、ファウナ目標という早い者勝ちの目標から生じている。インラクションは、他のプレイヤーから得られるものを最大化しようとしつつ、自分自身のアクションやプレイするカードからもっと多く得て、ゲームを早終わらせるという形でアクション選択からも生じているね。

いくつかのゲームでわずらわしい私が気づいた別のポイントは、目標にいち早く到達したプレイヤーだけが、得点と達成した喜びを得るということだ。そういった状況は、4人でプレイした「アイル・オブ・スカイ:族長から王へ」で私に偶然起こった。そのゲームでは、ラウンドの最後に最も金を所持していたプレイヤーが5点を得て、2番目に多いプレイヤーが2点を得て、他のプレイヤー全員は0点だった。2ラウンドの際には、めちゃくちゃ頑張って、できるだけ最も多く金が得られるようにした。私は13金で、他の2人のプレイヤーは14金だった。だから、私がこのプロセスに膨大な労力をかけたとしても、彼らは両方とも5勝利点を得て、私は0勝利点だった。こいつは、あまり良い感情が湧かないよね。

そこで、こういった形をとらずに「アース」で私が行うと決めたことは、目標を達成した最初のプレイヤーにより多くを与えるけれども、なお目標に到達した全プレイヤーに得点を与えるというものだ。したがって、最初にファウナ目標に到達した者は15勝利点を得る、2番目であれば11勝利点を得る、3番目であれば8勝利点、4番目と5番目には6勝利点と5勝利点という感じだ。目標を達成しようと頑張ったのであれば、最後に目標を達成したとしても、なお報酬を得るというメリット(the positivity)がある。私は、いかなる犠牲を払ってでも、食料を乞う必要があるといった「アグリコラ」においてみられるようなメカニクスを避けたかった。誰が、物乞いをするようなゲームをしたいと思うだろうかね? ゲームというのは、プレイが下手だからというわけではなくて、選択をするための楽しくて前向きな悩みに焦点を当てるべきだと思う。

「アイル・オブ・スカイ:族長から王へ」では、例えば、1番目、2番目、3番目、4番目のプレイヤーに対して、それぞれ9点、6点、4点、2点の勝利点が与えられることもあり得たはずだ。得点の差は同じでも、全員が少なくとも何かを達成できたように感じられる。そうするのであれば、バランスが取れるように、ゲーム中の他の目標全てについてもっと多くの得点をもたらすようにしなければならない。結局、「アース」のように、より多くの得点を獲得するゲームとなる。得点計算するのは面倒だけど、物事の壮大な計画においてドーパミンが生成される。

ゲーム中のほとんどのことがポジティブになっていることに関して私のした妥協点の1つは、イベントの中にはプレイヤーにマイナスの得点をもたらすものがあるということだ。そういうイベントは、プレイヤーに多めの利益をもたらすものとなっている。だから、自分の島に自然の力を解放するかどうかを決めるのはプレイヤー次第となっている。最終的に、イベントにかかるコストよりも、イベントから得られるものが多いので、プレイヤーはポジティブな印象をもつ。しかし、バランスという問題については、いつも機械的にプレイされないようにするために、マイナス点を与える必要があった。

結論として、ボードゲームをプレイしている際に、プレイヤーが感じることになるかもしれない不満を最大限まで減らそうとしたんよ!

8:短いプレイ時間

みんな忙しい。まあ、ほとんどの人が忙しいよね。こういう理由から、ゲーマーとして、必ずしも、ゲームをプレイするのに二、三時間もかけないわけだ。短い時間の中で「アース」が遊べるようにすることは、私にとってかなり重要なことだった。このことは、取り組む必要があった最も重要なことの1つだった。

戦略性の高さを維持しつつ、それを実現するために役に立ったことは、みんなが常にプレイするということだった。例えば、4人プレイの「The Castle of Burgundy」を挙げると、このゲームでは、他のプレイヤーの手番中は、次の手番で何をしようか考えること以外には何もしない。そうじゃなくて、もし、同じ時に全員がプレイするのであれば、テーブル上で同じ体験を維持しつつ、プレイ時間を4分の1に減らせるだろう。1回プレイするのと同じ時間をかけて「The Castle of Burgundy」を4回プレイできることになり、4倍楽しいことになる!

まあまあ、実際には、この点について、数学的な話は意味がないということには同意するね。けど、話のポイントは理解したはず。全員が同じタイミングでアクションを選んでいる場合には、全プレイヤーの戦略やボードも同じように進行していることを意味する。だから、全プレイヤーが同じ量のドーパミンを放出しつつ、ゲームは早く終了する……。ゲームを30分プレイしたとしても、全員が深く覚醒するような(brain burner)素晴らしい体験をすることとなる。

早く終わるゲームを制作するのに役立った別のポイントとして、各アクションが大量の利益を生み出すということがあった。プレイヤーは大量のものを溜め込むので、1手番や1アクションごとにたった1枚のカードとか1つの資源とかを受け取るよりも、物事を早くすることができる。こうすることで、行き詰まってしまうリスクを減らしつつ、めちゃくちゃペースを加速させることができた。また、カードをプレイするためのアクションを選択する場合には、多くのゲームにあるような1枚のカードをプレイするのではなく、2枚のカードをプレイできるようにした。こうすることで、戦略や楽しさに手を加えることなく、ゲームを相当加速させることができた。1手番で3枚のカードというのも試したところ、過剰になってしまって追うのが困難になった。だから、2枚というのは、最適解(the sweet spot)だった。

私の彼女と私は、たくさんの回数、「アース」をプレイしてきた。私たちでプレイした中には、セットアップ、片付け、得点計算を含めて、最長で30分かかったものがある。そして、30分のゲームの間、常に与えられるちょっとした報酬のおかげで、いかなる高い戦略性を有するゲームに勝るとは言わないまでも、それに匹敵する覚醒するような体験をした。このことは、毎分を数えるような限られた時間の世界において非常にプラス要素となったと思う。

現実的な話をすると、「アース」のゲームは、全員が常にプレイしていることがあって、プレイヤー人数が何人であろうと、大体30分から60分かかる。最初の数回は、ゲームを知り、プレイ中に提示される膨大な選択肢の量に慣れるのに最大で90分かかるかもしれない。中には、提示される膨大な選択肢の量が過剰だと感じてしまって、意思決定をするのに長めの時間がかかってしまう人もいるかもしれない人もいるので、このことは常に参加するプレイヤーによりけりだ。結局、早いプレイ時間、膨大な量の選択肢、限られた制約というのは、本当に「アース」を素晴らしいゲームにしてくれたと思う。

9:達成感

多くのゲームにおいて、最終的に、あと数手番あれば、よく油の効いたマシーンを走らせるという満足感が得られたのになぁというように思うに至る。常に、食欲にまみれているという感じだね。こういったことは、「ギズモ」や「レース・フォー・ザ・ギャラクシー」でたくさん起こったことだった。これらのゲームでは、本当に素晴らしい手番とアクションができたはずなのに、ゲームが終わってしまうといったことが起こる。

こういったことから、「アース」では、上述した2作品とは異なり、プレイヤーが、12枚のカードではなく、16枚のカードをプレイした後にゲームが終わることになっている。そうすることで、プレイヤーは、自分のエンジンを限界まで強化する時間が与えられる。このゲームにおける戦略の1つは、早く先に出ることだ(to race)。だから、プレイヤーが最適なエンジンをまた完成させることができないのに終わってしまう多くのゲームがある。しかし、エンジンを最大化することに焦点を当てるゲームも中にはあって、プレイヤーは、苦労が最大限発揮されるような探求をする時間が多くある。

個人的には、全てが完成して、意図していたとおりにできたことよりも満足できるものなんかない。そんて、「アース」にはそういったことがたくさんあるんだ!

10:リプレイ性の高さと勝利への道筋の多さ

良きボードゲームというのは、リプレイ性が高いゲームである。確かに、数回プレイして盛り上がるゲームもあるさ。でも、個人的な意見として、最高のゲームというのは、テーブルを叩き続けるゲームなんだよね。様々なカテゴリで、リプレイ性の高い素晴らしいゲームというのはある。手指を使う(dexterity)ゲームとして、「Crokinole」、「タンブリンダイス」、「くるりんパニック・リターンズ!」、「PitchCar」等が思いつく。パーティーゲームだと、「コードネーム」、「インカの黄金」、「La Boca」(※「レクト・ベルソ」)、「ハイパーロボット」、「コンセプト」、「ピクテル」等がある。戦略ゲームには、「Tikal」、「Stone Age」、「世界の七不思議:デュエル」等が思い浮かぶ。これらはどれも素晴らしいけれど、私が熱中したり、何度も何度もプレイしたりした戦略ゲームのほとんどには、いくつかの共通点があった。大量のカードの山、スタート時の可能性の多さ、各カードの可能性の多さ、そして、めちゃくちゃ多い勝利への道筋だ。

例として、「グルームヘイヴン」を挙げるとすると、私が他のゲームをプレイしないで6か月間連続してプレイしたゲームであって、中毒性がある。それは、カードとその効果における膨大な数の可能性のおかげだと思っている。また、大量の成長要素(progression)とちょっとした報酬があるおかげでもある。プレイするたびに、新しいことや新しいコンボを発見するから、長時間にわたって50回以上もプレイしたよ。

さて、「Zombicide」と比較してみよう。このゲームは、最初に発売された時に私が心の底から楽しんだ別のダンジョン探索ゲームだ(うん、それ以降、様々なバージョンが発売された。)。私は、オリジナルのバージョンを15回プレイし、全てのシナリオをプレイし、本当に楽しんだんだ。だから、「ゾンビサイド グリーン・ホード」が発売された時は、興奮した。このゲームは、最初のバージョンが出てから5年経過して発売された。Kickstarterで支援することに決めたよ。(「グルームヘイヴン」のセッションを50回以上した後で)「ゾンビサイド グリーン・ホード」をプレイしたら、このゲームが全く古臭くなっていないことに気づいた。6年にわたって主要なルールやゲームのプレイ方法を変えなかった。そして、「ゾンビサイド グリーン・ホード」の1シナリオをプレイしたら、カードの山全てと出会うこととなるほとんどの可能性をを一通り体験した。もう一度プレイすると、同じことを繰り返す羽目になるので、興味を失ってしまい、二度とプレイすることはなかった。

「グルームヘイヴン」は、カードに伴う可能性や相互作用の数が膨大なので魅力的だと思う。こうした理由で、「アース」では、各カードに33種類の変数、28枚のユニークなアースカード、64枚のユニークなエコシステムカード、46枚のユニークなファウナカードを入れ込んだ。200回以上もプレイした後でさえ、いまだに新しいコンボが発見されて、毎回ゲームが始まる前に新しいコンボを探してしまう。それによって、このゲームが新鮮に感じ続けられるようになり、複数回プレイした後であっても、心にグッとくるような体験が維持される。

「アース」のカードにみられる多くの変数に加えて、若い頃からプレイしたあらゆるゲームから着想を得て、様々な種類のカード効果を導入した。これによって、多様な戦略とゲームをプレイする様々な方法が許容される。カードの効果は多様だ。土壌、植物、成長、駒、カード、堆肥、ゲーム終了時の勝利点が得られたり、別のカードに重ねてカードをプレイしたり、土壌、植物、成長、駒を失ったりする。いつでもプレイできるカードもあるし、直接利益を与えるカードもある。他のカードの効果をコピーするものもあるし、2色、3色のカードもある。こういったあらゆる効果の選択は、行うべきユニークな選択が多く提示されるようにしている。こうすることで、多くの変動性が加わって、リプレイ性が生まれる。

山札に直接最終得点カードを加えることで、リプレイ性が加わる。そういったカードは、劇的にプレイヤーの戦略を変更させるし、常にゲームごとに異なってくる。最初から手元に残しておいて、そのカードに関連する全体的な戦略を練ると決めることができる。もしくは、単純にカードを引いて山札を探索し、最終的に自分にとって良いカードを手に入れることができる。

要素や得点を獲得する手段に多様性を多く作り出すことも、リプレイ性や楽しさを大幅に向上させる。直線的な要素で得点するものもあるし、最も長い線で得点するものもある。ほかに、隣接するカード、行や列で得点するものもある。これと全ての目的を混ぜ合わせると、毎回のゲームで解くことになる全く新しいパズルとなる。

得点計算の方法もたくさんあるので、二度と同じことにはならない。それに、前回のゲームではよかったものが、次のゲームでは非常に悪いものとなるかもしれない。したがって、勝利への道筋が複数あって、毎回のゲームでする必要がある探求によって、「アース」には計り知れないリプレイバリューが生じる。

11:テーブルとカードスペースの合理化

前の項目は、テーブルスペースとカードスペースを合理化することなくして達成することはできないだろうさ。みんなテーブルがある。そして、その上のスペースは、テーブルサイズによって限られている。もし、テーブルが巨大であれば、制限させる要素というのは、テーブルに座る人たちの腕の長さになる。とにかく、言おうとしているのは、あまりに広すぎて、ボードゲームをプレイする楽しさが損なわれてしまわないような、テーブル上を占めることができる理論上の最大限のスペースというのがあるということだ。

「アース」には、それを最大限活用してほしかった。そのために、最善だったのは、カードを使って全てのプレイヤーの高台(the plateau)を作ることだった。毎回のゲームでは、283枚のカードから16枚の異なる組合せしか用いない。そうすることで、変動性やリプレイ性が合理化できるし、毎回のゲームでは全てのプレイヤーに異なる盤面をもたらす。ただ、目の前の人が利用できるテーブルスペースをほぼ全て食い尽くしてしまう。テーブルスペースの大部分は、実用性があるものに用いられる。「アース」は、詰め込みすぎることなく、テーブル上の各プレイヤーが利用できる表面上のエリアの大部分に広がる。そして、広がっている全てのものは、少なくとも1つの機能を果たしている。

クレジット: Max Tar
コンパクト化した2人用ゲーム。画像は、以下のリンク先のQuackCoの素晴らしいレビュー動画から引用した。
https://www.youtube.com/watch?v=X5iocVcf_aEt=33s

私は、同じ目的でカードのデベロップをした。カード上には33種類の異なる要素が見られる。私は、やりすぎないように、このフォーマットのカード上にできる限り多くの情報を詰め込んだ。これ以上の情報を加えると、おそらく過剰なカードになってしまって、情報を見つけ出すのが難しくなる。それに、カードの美しさを損ねてまでそうしなければならないこととなる。カードの美しさは、楽しさや没入感にも大きく寄与しているというのにだ。「アース」では、最大限に自分のカードを使うことができるが、それでも読みやすくて(※情報が)見つけやすい。このことは、個人的に、ゲームから得られる楽しさの中で主要なポイントだ。

加えて、「アース」におけるファウナ、エコシステム、地形の得点計算によって、プレイヤーは、ボードをどのように作り上げたかに左右される様々な配置に応じて得点を得ることができる。エンビンビルドゲームの大部分においては、インタラクションや戦略を生み出す2次元空間(the 2d space)を用いていない。このことは、得点計算システムとして主に2次元の配列空間を用いている「Ecosystem」という名の素晴らしいゲームから着想を得た。この得点手段を用いることで、その他の全ての得点手段に加えて、空間と時間の合理化を大幅に向上するということが判明した。これが、新しい勝利への道筋を加えつつ、既存のコンポーネントを使用し、ルールを単純にしたままで、ゲームの長さを短いままにできた。

これは、すでに必要とされていた表面上のプレイエリアを用いることでリプレイ性を高めるので「アース」にとって素晴らしかった。「ギズモ」、「テラフォーミング・マーズ」、「世界の七不思議」/「世界の七不思議:デュエル」、「レース・フォー・ザ・ギャラクシー」/「ロール・フォー・ザ・ギャラクシー」、「スシゴー」を例にすると、プレイヤーは、プレイエリアにカードを配置し、そのプレイエリアはテーブルスペースを取る。しかし、一度、カードが配置されると、配列に作用するようなメカニズムは存在しない。そうすると、使用されているテーブルスペースがあって、今では限られた役割しか果たしてない。この可能性を付け加えることで、「アース」に、ゲーム性を深めてより高いリプレイ性を生み出す追加の可能性の段階をもたらす。

最初に、カードドリブンゲームが許容するあらゆる可能性が大好きなので、カードドリブンゲームにすることとした。カードは非常に安価である。それを用いて、カードが非常に多くの役割を果たすようにカード上の要素を与えることができる。これは、「アース」のカード上にある33種類の異なる要素によって強調される。

他のゲームのコンポーネントとカードを比較すれば、多くの点でカードに利点がある。ゲームの物理的なコンポーネントの大部分は、生産するのに1枚のカードよりもコストがかかるし、多くの場合、1つしか機能を果たさない。要するに、木製やプラスチック製のミニチュア、キューブ、宝石、矢が思いつく。これらは、カードと組み合わせなければ1つの機能しか有しないのに、カードよりも非常に多くのスペースを割き、コストがかかる。没入感を高めるのには優れているが、同じ値段であれば、リプレイ性に影響を与える限られた用途しかないコンポーネントよりも、ゲーム中にもっと多くのカード、インタラクション、可能性があったほうが好む。個人的に熱中できる可能な限り最高のゲームを生み出すことは、あらゆるボードゲームコンポーネントの中で最高のもの、すなわちカードに多くの制作コストを注ぎ込むことを伴うものだった。

トークンやパンチボードさえも、カードよりもコストがかかる。だから、据え置き(static)の大きなボードや多くのトークンを印刷しても、カードと同じくらいのリプレイ性をもたらすわけではなく、常に似たようなコストで物を比較してしまう。他のあらゆるコンポーネントは、カードと比較して、スペース、コスト、楽しさ、リプレイ性を合理化する方向にはならない。他のコンポーネントにもっと多くの意義と機能をもたらす唯一の方法は、カードを用いるか、カードと一緒にパンチボードを用いるかということになる。カードは、生産するのにトークンよりもはるかに安価なので、「アース」にはうってつけの方法だった。楽しさ、スペース、リプレイ性、そして合理化という目的のために、これが間違いなく最善の選択だった。

ボードについて語るにあたって、「テラフォーミング・マーズ」を例にしよう。このゲームでは、メインボード上に直接目標が印刷されている。ボードを印刷するのは高価だ。多くの機能を有するから、印刷する価値があるってものだ。けど、「テラフォーミング・マーズ」では、常に同じ機能しか果たしてくれない。毎ゲーム、全く同じ称号と褒賞を目指すことになる。問題というのは、印刷が高くつくので、同じゲームにおいて多くのボードを印刷して、許容される価格で売ることができなくなるということだ。したがって、据え置きのボードは、リプレイ性に影響を与える傾向にある。カードは、ボードほど高価ではないし、スペースも取らない。1枚のボードの値段で、カード上には多くの称号と褒賞を印刷することができる。ボードと対比して、多くのスペース、コスト、リプレイ性を合理化する。最終的には、消費者にとってより良いこととなる。

数値を軽く見ただけで、カードとボードの力を単純な数式が出てくる。「アース」では、46個のユニークなファウナ効果と64個のエコシステム効果がある。4つのファウナと2つのエコシステムは、共通ボードを作り出す。したがって、異なるボードの可能性の数値は、カードが両面で、そのうちの2つは同じゲームには絶対に現れないので、(46 x 44 x 42 x 40) x (66 x 64) = 14,362,951,680通りとなる。この数式は、あまりにも単純化されていて、100%正確な数値というわけではない。しかし、規模感(an idea of the scale)を把握できる。カードによって実現できる可能性をカバーするには多くのボードが必要となる。パンチボードでもカードと同じことができるが、66+44(※110)個の大きなトークンは、110枚のカード以上にはるかにコストがかかるだろうね。

ボードについての話を続けることとして、「アース」の最初の可能性と「世界の七不思議」の最初のワンダーを比較しよう。「アース」では、3つの異なるスタート時の効果/条件で始めるのに対して、「世界の七不思議」の大部分のワンダーでも3段階あるので両方のゲームは比較可能だ。「アース」では、20枚の異なる両面の島カードと気候カードと、64枚のエコシステムカードがある。すなわち、20 x 20 x 64 = 25,600通りとなる。こういうカードで得られるのと同じ可能性を得るためには、25,600個のワンダーを印刷しなければならない。このように、カードは、リプレイ性に関連したゲームのコンポーネントの合理化にプラスに働く。ボードや他のコンポーネントと比較する際に、この全てが言えるんだ。

それでも、「アース」では小さなボードがあって、プレイヤーがどこに置けばいいかを示したり、セットアップや片付けの時間を容易にしたり、ゲーム体験をもっと楽しくしたりする。これらは、ちょうど議論したとおり、全てのゲームに固定の条件を持たせたくなかったので、ゲーム中のやりとりに対して最小限の機能を果たしている。こんなようなボードは、選択肢、変動性、プレイヤーにあるかもしれないコントロールを制限すると思う。これは、カードによって全てもたらされるので、ボード上でそうするよりも優れているはずだ。

そうとはいえ、プレイヤーボードを合理化しようとしたよ。両面を使って、片面は通常ゲーム用、もう片面は初心者用といった感じだ。ボードは、詰め込むことなく、可能な限りカードのほとんどが物理的に当てはまるようにした。説明文が全員のボード上にあるので、プレイヤーは常にルールを思い出せる。目標が小さめのトークンではなくてカードにしたことも、遠くから読むのが容易いということて、スペースの合理化に関して大きなプラスだった。カードがどこに行くかを示す単純なアイコンがある。

クレジット: Max Tar

似ていて奇妙なゲームを生み出してしまった目標は、1つのゲームで両方の目標が出ないように、同じカードの両面にしておいた。ファウナカード、エコシステムカード、島カード、気候カードは、手札として持っていないようにするために、全て両面だ。こうすることで、何か有益なものになるようにカードの表面が合理化されている。カードの機能を合理化するだけで、作り出すことができるリプレイ性や楽しさを合理化する。私は、各ゲームで利用できる目標を合計で8つ以上か7つ未満で試してもみた。7つ以上では、追うのが困難になった。7つ未満では、選択肢とリプレイ性が減った。7つというのが、「アース」では最適解のように思われる。

最良の価格で、無駄がないようにこのゲームが手に入るように非常に労力を使った。ちょうど364枚のカードがあるが、91枚のカードが印刷された4シートで構成されていて無駄がない。もっと多くのカードを設けると、このゲームのコストが高くなり始めてしまっただろうし、多くの人に手に取ってもらえるようにできる限り最安の価格にしたかった。こうすることで、もっと楽しくなるからね。ゲームのエコロジカル・フットプリント(※地球の環境容量をあらわしている指標で、人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な面積として示した数値)を減らすように、主に生分解可能なコンポーネントを用いるつもりだ。全てのカードとコンポーネントは、セットアップと片付けに合理化された箱の中にしっかりと収まる。

私たちは、教育的であるようにしてゲームに追加の役割も加えたかった。プレイヤーが望むのであれば、現実の地球に関する新しいことを学ぶことができるように、現実世界のフレーバーテキストを加えた。ルールは、ソロモードや2対2モードを含めて16ページの文章にうまく収まった。これも同じような合理化の賜物だ。テーブルスペースや「アース」のあらゆる面を合理化するために1つ1つの細かい点を網羅するようにした。

12:プレイヤーインタラクションを程よく保つ

私は、ユーロゲームを本当に楽しんでいる。こういう理由で、「アース」では、目標やアクション選択に関する競争を通じた間接的なインタラクションが大部分となっている。ソリティアゲームを作りたくはなかったが、完全に他のプレイヤーのボードをぶっ壊すことができるゲームも作りたくはなかった。こうしてしまうと、先ほど言及した項目である「7:ポジティブなことに焦点を当てる」で述べたとおり、あるプレイヤーは心の底から楽しいのに、他のプレイヤーは怒り狂ってる可能性が非常に高いという状況が作り出されてしまう。

こういうわけで、「アース」におけるインタラクションは間接的だ。より大きなボーナスを得られる1番目になれるように同じ目標を巡って争う。ある特定の色について本当に強いエンジンを開発して、その色をプレイする時に対戦相手よりも優位に立てるようにすることもできる。対戦相手の支配する色について強いエンジンカードをプレイして、対戦相手がプレイしたら利益を得ようとすることもできる。ゲーム終了時の得点条件のある他のプレイヤーの地形も注視して、他のプレイヤーが多数回行ってきたことから利益を得ようとしなければならない。

自分のことだけ見てプレイして、他のプレイヤーが何をしているかに注目しないと、良いプレイヤーにはなれない。自分の効率を最大化するためには、対戦相手が何を企んでいるかを常に知らなければならない。しかし、対戦相手がしていることをぶっ壊す方法は一切ない。十分に周りを見て自分の戦略をより良い方法で合理化することによって、本当に効率的に優位に立てるようになる。

「アース」はめちゃくちゃインタラクションのあるゲームとはかけ離れているが、それでもインタラクションはたくさんあるんだ!

13:現実世界で私が愛する事柄に関連したテーマ

私は昔から自然を愛していて、自然に関するゲームを作ることは私にとって魅力的だった。私が作ったゲームで自然に関するものは他にもある。例えば、「BrilliAnts」、「Mini DiverCity」、「Galaxies」といったようにね。個人的な意見として、これらのゲームはそこそこのゲームだ。けど、制作中に、じっくりとゲームや目標を検討したわけではなかったので、合理化するようになった。自然というテーマが、「アース」を始めたきっかけ全てだった。私に植物をテーマにしたゲームを作ってほしいと言ってくれた恋人であるIsabelle Touchetteなくして、このゲームは存在しなかっただろう。彼女なしでは、アイディアが成長することはなかったし、今回、「アース」に関してこの文章を書くことはなかっただろうさ。

私たちは共に自然を愛好する者で、やっていることを楽しまないで、この仕事をやり遂げることは不可能だっただろう。個人的に、現実世界な関連したゲームというのは、常に良い気分にさせてくれる。日常生活の中で知っていることに関連づけることができて、時折、新しいことが学べる「PARKS」、「東海道」、「キャリコ」のようなゲームが本当に好きだ。そういったことがボードゲームをもっと優れたものにして、より一層ポジティブな体験を生み出してくれる。こういったことが、自然に関連するゲームを手掛けようと決めた大きな理由だ。

私にとって並外れた重要性のあることの1つは、テーマをゲームの中に溶け込ませようとすることだった。私は、みんながゲームをプレイする際に、テーマを感じてほしいと思っている。そして、できる限りテーマ性のあるようにするために、何時間も何時間もゲーム中のカード全てに手を加えるのに費やした。「アース」はゲームにすぎなくて、百科事典ではないので、バランスの問題のせいで多くのテーマ性を損なう(unthematic)決断をしなければならなかった。そういった決断は、個人的な見解として、各カード上で完璧で正確な情報をもたせることよりも、なおより重要なものであった。最終的に、「アース」のカードの大部分は実に自然の一端を(a small glimpse of Nature)捉えることができたと思う。

「アース」は、プレイヤーに生命の循環を感じさせるようなゲームにしたかった。こういう理由で、カードが堆肥になり得るし、植物キューブが土壌リソースに変化するし、イベントカードや植物によって、プレイヤーは他の要素と交換することができるようになる。まさしく自然みたいにね。こんな形で自然に着目すると、何も得たり失ったりしておらず、単に移ろい行くだけだ。結局、「アース」は、自然自体の経済を表したゲームとなり、植物、樹木、土壌が通貨となっている。貨幣じゃなくてね!

14:得点計算

優れたゲームは、もれなく得点計算が多様である。例えば、私は、「宝石の煌き」のようなセットコレクションのゲーム、「Ecosystem」のような二次元の配列ゲーム、「The Castle of Burgundy」のような何でも得点になるポイントサラダのゲームが大好きだ。「アース」には、こういった要素を全て取り入れることとした。これは、コストがかかることになった。

みんなには正直に言うと、この問題に対する合理的な解決策が見つからなかった。得点手段の多様性と、1ゲームで生み出すことができる膨大な得点量は、得点計算が簡単になるようにするためだけのために不採用となってしまう「アース」において並外れた重要性をもつ2つの要素だった。得点手段が多くあるので、全てを数え上げるのにも時間がかかってしまう。悲しいかな、先ほど述べたとおり、人生のあらゆることはコストがかかってしまう。

このゲームのために考えた最善の解決策は、アプリを開発することだった。アプリでは、各プレイヤーのボードの写真を撮ることで直接最終得点がわかるというものだ。でもだ、そういったアプリは、非常にコストがかかってしまい、開発するには複雑で、私たちの場合には選択肢にはならなかった。

この状況をできる限り抑えるために見つけた最善の方法は、各プレイヤーが同時に各カテゴリに応じた自分の得点を数えて、結果を得点計算シートに記載して伝えるということだ。だから、各プレイヤーは、基本となる勝利点を計算し、その後にイベント点を計算し、その後に堆肥について計算するといった感じだ。各段階で、プレイヤーは、誰がリードしているかわかるので、計算が終了するまで競争と興奮が維持される。

クレジット: Max Tar

複数の得点方法が「アース」にもたらした非常に良い点は、最終得点が計算されるまで誰が勝者か分かりづらいということだ。これは、大部分のゲームにおいて、プレイヤーが最後まで参加している気持ちになってゲーム体験を楽しんでくれるということを意味するんだ!

15:ソロモード

普通は、みんなと一緒にいる時にゲームをすることを好む。ゲームというのは、体験を共有したり、より多くの楽しさ(遊ぶことと社交的な交流をすることを同時に行う)を生み出す多機能的な活動を伴う優れた手段だと思う。実のところ、私は、マジでマジでボードゲームをプレイするのが好きなんだ。こうして、ソロモードがプレイされるようになり、1人であってもこの趣味を楽しむことができる。数独とかのパズルが本当に好きだが、ソロボードゲームというのは、全く異なるユニークな体験をもたらすと思っている。ソロボードゲームは、いずれも新しいパズルを解くようなものだ。そうして、「アース」にソロモードを搭載することは必須だった。

ソロゲームを心から楽しんだゲームとして、「ロビンソン漂流記」、「Goblivion」、「オニリム」のシリーズもの(※Oniverseというらしい)、「アナクロニー」、「レース・フォー・ザ・ギャラクシー」、「ウイングスパン」、それに「テラフォーミング・マーズ」がある。私が好んでプレイしていたものは、もう1人のプレイヤーをシミュレートするAIと戦うものであることに気付いた。この形は、例えば、カードやボスを倒すというよりも、もっとリプレイ性が高まることになると思った。私がプレイするたびに新しくてユニークなゲームをプレイすることができる。こうして、「アース」のためにGaiaというAIを開発した。Gaiaには4つの難易度があり、まさに実際のプレイヤーのように、あるところでは予測可能だが、それ以外では予測不可能となるものだった。レベル1から順に私の勝率を言うと、80%、50%、30%、5%といった感じだった。

約5%の勝率にとどめたのは、意図的なものだ。超困難な課題があると楽しいが、一度、賭けに成功したので、勝つ可能性はあるんだと思う。達成するのは非常に困難だが、困難な課題が好きでしょうがないみんなのために非常に難しいレベルを維持しておきたかった。どのレベルでも、Gaiaは、かなり攻撃的で、すぐにゲームを終わらせようとしてくる。ゲームが終了する前に誰が勝っているかを見分けるのは難しいね。

また、ソロモードでは操作の手数も減らしたかった。プレイヤーが何をしているかに従って、AIが異なる形で反応するようにしたかったので、こういった操作のバランスを取らなければならなった。そういうことで、ソロモードの操作は限定的になっているが、それでも、AIにプレイヤーのアクションに応じた異なる反応をしてもらうために相当な量がある。これにより、プレイヤーは、Gaiaと対峙している時に思いつく選択肢が多くなる。より多くのコントロールを与えて、それにより満足感ももたらされるが、プレイヤーにとって計算のためのメモ取り(bookkeeping)が少し多くなるというコストがかかった。

最終的に、「アース」のソロモードの良いところは、高いリプレイ性があって、ゲームの非常に良いところとポジティブさを感じさせてくれるところだと思うね!

16:Inside Up Games

Inside Up Gamesには、一緒にこのプロジェクトを手掛ける機会を与えてくれたことに大いに感謝しているよ。彼らが製作してきた多くの素晴らしいゲームは、常に、最高品質のコンポーネントと広大な愛情を伴う、競争力の高い価格となっている。Inside Up Gamesのみんなは、いつも笑顔で、親しみやすい。一緒に仕事ができて素晴らしかった。彼らと一緒に仕事をしていれば、今市場でみられる値段に対して最高の品質につながるということには100%の自信がある。

最初から、彼らは「アース」を本当に真剣に取り扱ってくれて、気が狂ったように手を加えていった。私がした以上のことだと思うね。だから、今以上に幸せになり得ない。彼らと一緒にこの大規模なプロジェクトを手掛けることができて光栄だよ。

このゲームに対して現実世界の写真を使って作業することを選んでくれたこともとても嬉しい。それは、私が当初考えていた「アース」の構想と同じだった。アートワークも大好きだが、同じくらい写真も好きだ。現実世界の素材で作業するので、地球に関する美しい写真を使う機会がなければ悲しんでいただろうさ。こうしたことで、ユニークで他のゲームとは一線を画する現代的な見た目がゲームにもたらされたと思う。

Inside Up Gamesは、「アース」のアートワーク、アイコン、インフォグラフィックス(infographics, ※情報、データ、知識を視覚的に表現したもの)、ルール、テストプレイに関して、極めて優れた仕事をしてくれたと思う。このゲームの見た目は間違いなく豪華だと思う。

今のところ、私たちは大量のやりとりをしてきたが、全てがスムーズに進む。この大規模なプロジェクトにおいて驚くべきことだ。Conor McGoeyには特に感謝したい。彼は、ゲームをできる限り高いレベルにすることに関して、私や私からのあらゆる特別な要求に耐えてくれた。彼が「アース」について膨大な労力を割いてくれたことはわかっている。このゲームは、彼がいなくては今ある形の影もなかっただろう。その点については、彼に感謝したい!

17:おわりに

今まで話してきた要素を全て「アース」に混ぜ合わせると、何百回プレイしても飽きることがないゲームができあがった。私と恋人は、220回のゲームをプレイしてきて、いまだに飽きてない。ほとんど毎日プレイするけど、あまりにも楽しくて、300個以上のゲームコレクションの中から他のゲームを取り出してプレイしたいとは思わない! 私は、この価格で消費者の手に届き、あらゆる要素が最適となって、最高の体験とリプレイ性をもたらすように、「アース」を合理化しようとした。

「アース」が万人向けのゲームではないことはわかっている。もし、重量級のウォーゲーム、ダンジョン探索ゲーム、インタラクションが強いゲームを探していたり、さもなければ、パーティーゲームや手指を使うゲームを探していたりするのであれば、「アース」は間違いなくそれらとは異なる。「アース」が完璧ではないとしても、ネガティブな点を最小限にして、ポジティブな点を最大限にしようとした。得点計算や操作は、特定の人にとっては難しすぎるように思えるかもしれない。しかし、最終的には、「アース」のあらゆる良い点は、大きく欠点を消し去ってくれると確信してるよ。ユーロゲーム、戦略ゲーム、覚醒するようなゲーム、カードドリブンゲームがお好みならば、「アース」はぴったりだ!

みんなには、私と同じくらい「アース」とその均衡を楽しんでくれると心から願っている。それを叶えるために、心を込めて、限界まで自分の能力を高めた。このゲームは、完璧には程遠い。けど、私が考えつく最高に合理化されたゲームであることから、誇りを持ってこのゲームをお示しすることができる。正直な話、「アース」を最高のゲームにするためにできることは全てしたんだ。それに、Inside Up Gameのみんなもそうだった。もし、この文章で私が書いたことについて、以下のコメント欄で議論したいのであれば、より嬉しくなるだろう。コメントしたり質問をしたりするのは遠慮なくどうぞ。

もし、ここまで読んでくれたならば、読んでくれてマジ感謝だ!

Maxime Tardif

追記:人生の中でこれほど激務で多くの時間をかけたプロジェクトはなかった。科学の博士論文をした時ですら、こんな長くかからなかったというのに! 植物をテーマとしたゲームを作ってほしいと優しく言ってくれた恋人のIsabelle Touchetteには感謝している。彼女なくして、このアイディアは成長しなかったし、「アース」に関するこの文章を書くことはなかっただろうね。

Kickstarterのリンクは以下のとおり
https://www.kickstarter.com/projects/insideupgames/earth-1

以上

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