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【研究】「『甲乙丙丁』がどうしてこの順番なのか」気になったので、この理由を「漢字の成り立ち」を元に解き明かしてみた結果…

お久しぶりです!

漢字の面白さを
伝え続ける男kuです!

突然ですが
あなたは「甲乙丙丁」という
言葉を知っていますか?

契約書や博士論文などで
順序や優劣を示すために
使われます。

特に
甲は相手のこと・または
1番目上の立場の人のことを指し、
乙は自分のこと・また大抵は
2番目の立場の人を指します。

このような使い方がある中で…

ここで疑問に思った
あるんです。

なぜ「甲乙丙丁」という
順番でなければいけないのか。

「乙甲丙丁」でも
良いのではないのか、と。

パッと漢字を見ても
「甲」に相手や1番
「乙」に自分や2番という
意味は見受けられないですよね。

確かに十干の中で
「甲乙丙丁」という並びが
生まれた、ということも
知ってはいます。

ならば、「十干」のなかで
どうして「甲乙丙丁」の
並びになっていったのか。

占いだから、神の言葉に
したがってこの漢字の並びに
なったのでしょうか?

それではどうにも
納得がいかないんです。

私のエゴです。

「納得したい…」
「漢字を“漢字たらしめた”
その根拠を…!!」

その並びを根拠づける
理由をどうしても
知りたくなったのです。

一緒にその謎を
知りたい!というかたは
どうぞ見ていってください!

・「甲乙丙丁」の成り立ちについて

僕にとっての聖書である
「新漢語林」を使用しながら
各漢字の成り立ちを見ていきましょう。

①「甲」の成り立ち

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「甲」は甲骨文字を起源とし(上図)
「尾をひいたかめのこうらの象形で、
こうら・から(p967)」の意味を示しています。

つまり上図は亀の甲羅を
示しているということです。

②「乙」の成り立ち

画像2

続いて「乙」も甲骨文字を起源とし(上図)
「ジグザグなものの形にかたどり、
物事がスムーズに進まないさま(p45)」
を表しています。

ジグザグなものなので
もしかしたら概念から
創造された文字かもしれませんが

木の棒や蛇の様子を
描いたものかもしれません。

③「丙」の成り立ち

画像3

「丙」も甲骨文字で(上図)
「脚の張り出た台の象形(p33)」の
ことを示しています。

この漢字の本質・イメージとして
「張り出し広がる」ものを
表しているので

例えば「病」は「疒」という
病(ウイルスなど)を意味するものが
「丙」と併用されることで
(広がり出る)ニュアンスを
持たせているのです。

④「丁」の成り立ち

画像4

「丁」も甲骨文字であり(上図)
「釘(くぎ)の頭を上から見た形(p11)」
にかたどっており
「くぎ」を表しています。

また、ここから「丁」は
本質・イメージとして
「安定」を指すことが多いです。

「町」に「丁」が入るのも
田んぼがくぎを打ったように
あちこちに点在している様子から
「田畑による作物収入の安定」を
示し、

それがそのまま現在のニュアンスである
「(人が一体となって安定を享受する)共同体」
を表していると推測することができます。

①〜④を見ていく中で
共通することは

「甲骨文字を起源に持つ漢字」である

点です。

本来、卜占の際に用いられたことを
起源としている甲骨文字だった
ことを考慮してみると

「甲乙丙丁」が十干に派生した漢字だ
というのは
いくらか納得できることがありますね。

「甲」が「匣」ではないことも
「丁」が「訂」ではないことも…

会意文字や形声文字が発達していない
占筮の時代で、すでに登場している
漢字といったら甲骨文字・金文文字
ですからね。

ですがこれではまだ不十分です。

「甲乙丙丁」は
漢字の成り立ちだけでは
その順序を根拠づけることができず

1番や2番という意味を
付与された理由も明確に
なっていません。

なので次は「甲乙丙丁」が
流用された「十干」について
見ていきましょう。

・「十干」と「甲乙丙丁」の
関係について

「十干」の意味は
当然「新漢語林」に
記載されておりませんので

今回はこちらのサイトを
引用させていただきます。

※十二支についての言及もなされていますが
ここでは「十干」について上記のサイトを
参考に記していきます。

「十干」というのは
古代中国の殷(いん)の時代に生まれた
「日」の数え方で、

1ヶ月を10日ごとに3つに分け、
その区分を、甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、
戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)
の順に名付けたようです。

そして(こう)や(おつ)は
音読みですが、訓読みにすると
見方が変わります。

甲→(きのえ)→木の兄
乙→(きのと)→木の弟
丙→(ひのえ)→火の兄
丁→(ひのと)→火の弟
戊→(つちのえ)→土の兄
己→(つちのと)→土の弟
庚→(かのえ)→火の兄
辛→(かのと)→火の弟
壬→(みずのえ)→水の兄
癸→(みずのと)→水の弟

このようになります。

木の兄と書いても
「きのえ」と読むようで

「えと」という言葉は
この「兄弟」の文字から
来ているのだそうです。

・十干の中にある
五行説の「木火土金水」の順序の意味

十干という考えには
五行思想と陰陽思想の
二つが根底にあります。

特にこの五行というのは
「木火土金水」という5つの概念が
重要になってきます。

Wikipediaの内容だと

木(もく )
→木の花や葉が幹の上を覆っている立木が元となっていて、樹木の成長・発育する様子を表す。「春」の象徴。
火(か)
光り煇く炎が元となっていて、火のような灼熱の性質を表す。「夏」の象徴。
土(ど)
植物の芽が地中から発芽する様子が元となっていて、万物を育成・保護する性質を表す。「季節の変わり目(夏の最終日)」の象徴。
金(きん)
土中に光り煇く鉱物・金属が元となっていて、金属のように冷徹・堅固・確実な性質を表す。収獲の季節「秋」の象徴。
水(すい)
泉から涌き出て流れる水が元となっていて、これを命の泉と考え、胎内と霊性を兼ね備える性質を表す。「冬」の象徴。

と記されています。

十干の考えも
五行思想も陰陽思想も
古代中国が起源ですので

旧正月(2月初め)にくる
季節を1番目と数えます。

日本では暦上で
この時期を「立春」と呼びますね。

なので中国も同じように
この時期を「春」として
考えたのでしょう。

なので1番最初は「木」から
始まることになります。

「木」にあたる十干は
「きのえ(甲)」「きのと(乙)」
でしたね。

なのでこの漢字のまま
進めたら「甲=1番初め」「乙=2番目」
という解釈で良いのです。

…良いのですが…

別に「甲=きのと」と
呼んでもいいじゃないですか?

「甲=きのえ」である
根拠は一体なんでしょう?

なぜ「甲=きのえ」
なんでしょう??

・テキトーに「甲=きのと」でもいい!
とかはなく「甲=きのえ」が
絶対である理由

そこで先程の
「甲乙丙丁」の成り立ち
ヒントになります。

それぞれの漢字の意味を
思い出してみましょう。

甲…こうら・から
乙…ジギザグしている
丙…張り出て広がる
丁…安定

これは物事の過程を
表していないでしょうか?

から(殻)から出たものが
ジギザグしながら広がり
やがて安定してくる

ということです。

よく「十干」を
植物の過程として
捉える人もいますが

漢字の成り立ちの目線に立つと
漢字というのは我々に様子・イメージ・概念を発信するものなので
植物を直接指しているとも限りません。

動物でもその他の生命でも
仕事の始まりも
「甲乙丙丁」という漢字で
様子を指し示すことができます。

(ですが十干自体、季節の変わりを
示すものなので、植物でしょうけどね笑)

つまり漢字の成り立ちという観点から
ジグザグしたもの→殻→張り出て広がる
という発想はなく

殻→ジギザグしたもの→張り出て広がる
の方が自然・当然なので

甲が先頭に来て
乙が次点になる
ということなんですね〜

・結論

五行思想による
「木火土金水」の発想と
「甲乙丙丁」の成り立ちから

甲が1番最初を示し
乙が2番目を示す
ということ

になります。

今回はこの結論に
落ち着きましたが

殻を示す漢字が
必ずしも「甲」である
必要性を見抜いていませんし

ジグザグ・物事の進みを
示す漢字が必ず「乙」である
必要性もここで明らかになっていません。

時間があったら
解明していきたいと思います😊

では、また👋

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