Won’t you stay for me ~我が愛しの葬式まんじゅう~

地元にあるお菓子屋さんの閉店のニュースを聞いて複雑な気持ちの土曜日でした。 名物のせんべいが人気の店なのですが、経営者の高齢化とコロナでの売り上げの低下が理由だそう。 

故郷を離れているものにとって、戻ればそこにいてくれる銘菓とか名物という存在はいつも思い出すわけでなくても、やはりそこにいてくれないと困るもの。勝手に出て行っておきながらいなくなられては困るなどとわがままは承知の上でこんなことを書いているわけですが、特にコロナ禍の中で、「帰省した時には○○しよう」は妄想であり目標であり希望です。


前出のせんべい、実は私はそれほど執着がないのですが違う店の通称「葬式まんじゅう」は無くなったら泣いてしまいます。我が家の定番中の定番といった感じのそのお菓子屋さんで春はイチゴ大福、夏は水まんじゅう、秋はどら焼き、冬はクリスマスケーキと昔から通い詰めているのです。その中でも「葬式まんじゅう」は一年を通して食べていました。お腹にたまるほど良い大きさ。不思議にコーヒーでもお茶でもきちんと合う、甘さ控えめのアン。私にとってくつろぎのティータイムそのものなのです。
なぜこんな縁起でもない名前がついているかというとお葬式の香典返しがお茶とこのまんじゅうという家が非常に多いから。友人たちにも問題なく通じていましたからかなりの普及率だと思います。田舎あるある、でしょうか。
正式名称は味噌まんじゅうというらしいのですが、それが判明したのもつい四、五年前。私をそれこそ歩く前から知っている店主夫妻が、「知らないと思うけど」と笑いながら教えてくれました。


さて、このお店はめでたいことに御年30歳のご長男が跡を継ぐ予定とか。ここ十年ほど東京で修行しているのですがそれを聞いて私には一抹の不安がよぎります。なぜなら彼は洋菓子店で修業しているのです。対して、葬式まんじゅうは和菓子。後継者が帰って来てお店が様変わりなんて話はそこら中に転がっています。
今度帰ったら、そこのところをしっかり聞いておかなくては。

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