a day in the life | 日常のある1日
コロナ禍という振り返ってみても不思議な年月が流れ、それらの日々はしっかりとした足取りでいつもと変わらず平等に時間を回収していった。
人間とは不憫なもので、世の流れを感じるようにできていて、
僕は振り回されないように何とか足の裏に地面を感じながら歩んでいたように記憶している。
その間も自然はいつもどおり四季を巡り、動物達はそれぞれに与えられた生き方を全うした。
人々が時間を取り戻すように慌ただしく動き始めた2023年。
天邪鬼な僕の心は急に静かになった。
する事、したい事が思い浮かばなくなったのだ。
そんな日を過ごしている中、こうべくつ家の森田さんから連絡がきた。
[ a day in the life ]
というテーマでカバンを作ってみないか?
映画とカバン
電話で映画をアイデアの材料にしてみてはいかがか?という話を決めた後日
、ミーティングのため清荒神まで足を運んで頂いたが、結局具体的なことは決まらず居酒屋で飲むだけのような形となった。
何度も「仕事の話に戻るで!」と言われていたのですが、僕には何もアイデアが浮かばなかったので、終始趣味の話にすり替えた。
つまり話をはぐらかすという手法を使ったのです。
沈黙が怖かったのだ。
おそらく考えても何がしたいのか分からない自分がもどかしく、それを悟られたく無かったのだと思う。
周りの気楽な世間話が細かい弾丸のように耳から入り脳で留まる。
森田さんはそれを察してか好きな映画を同じように語る。
そんな時間が過ぎていく中、ささやかではあるけれど、お互いに人生の支えがある種の映画の中にあることを感じた。
よし!瓶ビールの底が見えるまでには何かを掴むぞ。
そう思いながらビールが無くなっては追加をし続けた。
解散までには一応、共通の趣味の映画の中から今回の1作を選ぶこととなった。(結局好きな映画の監督が同じだったからという素敵な理由)
何とか次へのパスポートは得たものの、
問題は、それで自分の作品が作れるのか?という疑問。。。。
sep25072317
何度も観たその映画。
細部まで見返して改めて、撮り方や色の使い方、間、音楽、人間の本音と建前の表情などが自分に合う映画だと感じる。
その中で感じとった湿度と体温、それに物憂げな空気感と決意を作品に込めようと思った。
私は別れを告げなかった
何も言わないまま。。。
ただ立ち去った
道を渡るのに
遠い“回り道”をしようと決めた
住み慣れた部屋を見上げ、ハイヒールのかかとは主人公の心を表しているかのように地面を右往左往して行く先を決めかねる。
でも決心してかかとを上げ、部屋に背を向けて歩き始めた。。。。
妙に印象に残るワンシーン。
「道を渡るのに遠い回り道をしようと決めた」
最短距離で失った時間や心を取り戻そうと世界が動く中で、遠い回り道こそ今の自分が望んでいる事だと気づいた。
修行時代、周りと自分の状況を比べて心折れそうになった時、工房から大正駅まで歩く30分の終電までの道のりで、口癖のように唱えてた言葉
「ねえ、誰かが言ったよ。ゆっくり歩け、そしてたっぷり水を飲めってね」
~ 「1973年のピンボール」より~
あの時に感じていた、奮い立つでもなく、ホッとするでもない、
やるべき事を淡々と進めるための力を必要としていたのだ。
考えがまとまるとあっという間にバッグは仕上がった。
須磨にある森田さんのところへサンプルを持って行き、タイトルを決めるミーティングをしに海岸へ。
日は沈みかけて、海水浴客はまばら。
犬の散歩や階段で座って話す人々、海から上がって砂浜で余韻に浸る人など須磨の日常がそこにはあった。
タイトルはあっけなく決まった。
すでにそこに用意されてたかのように。
[ sep25072317 ]
この答え合わせはこうべくつ家のアトリエまで。。。。。
a day in the life
チャーリー・チャップリンの言葉
「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」
人生には機微がある。
それはSNSで共有するような事ではない、自分だけの大切な宝物のような出来事。嬉しいことも、深い傷もある。
そんな日常のある一日を切り取って繋げていくといつか肩の力が抜けて愛おしく思える時が来ると思う。
a day in the life - 日常のある1日 -
この企画はまだ始まったばかり。
今も色んな場所で全ての人に日常のある1日が訪れる。
ジム・ジャームッシュ監督の「ナイト・オン・ザ・プラネット」
という色んな世界のタクシードライバーを主人公にした映画が好きだ。
徳島しか知らなかった高校生の僕に世界の日常のカルチャーショックを与えてくれた作品。
色んな1日を表現していくと、いつかこの映画のような企画展になれば良いなと思っている。
焦らず回り道をしながらも。
イベント詳細
『 9月展|風穴 ~ kaza-ana~ 』
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2023年9月16日(土)〜9月24日(日)
11時から18時 *20日(水)は店休日
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〒6540055
神戸市須磨区須磨浦通5−5−24
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