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[自由詩]5分間の恋

駅の跨線橋を登る途中
ふと顔を上げると入道雲が佇んでいた
よくよく見ると、なんだか
微笑む無垢なうつくしい女性に見えた

それはまさしく一目惚れであった
空の色が薄まってきた夏の夕暮れ
歩けばまだ汗が滲む程度には暑い
その中で貴女は、静かに笑っていた

そのうつくしさを切り取るべく
貴女がもっとよく見える場所まで
アスファルトを早足で歩いた
雲の流れに急かされるように

ようやくひらけた場所に出て
レンズを向けて画面を覗いた
見れば貴女はいつの間に
ドレスを纏った猫に変わっていた

「猫様でしたか、驚きました」
心の中で声をかけると
猫がいたずらっぽく笑った気がした
その愛らしさに私は勝てない

涼しい部屋で一息ついて
程よく漬かった胡瓜をかじった
ふと窓の外に目をやると
いたずら猫は姿を消していた

どうやら私は、振られたらしい
あまりに儚い恋であった。

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