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詩11「落雷」

赤い雲が裂けて
森の奥の一本の樹に落雷する
燃え広がることなく
昼間のように明るく燃える
リスは非常食を持って逃げた
ひっそりと深い森の奥
誰も知らない
わたしの胸の中
一本の木が燃える
燃え尽きる様子のないそれは
光の樹のようになり
神様の遣わした大きな鹿
ああわたしは滅んで行くんだね
そして生きていくんだね
涙は蒸気に変わる
わたしの顔を焼く
見知らぬわたしになる
わたしはわたしの髪を捧げる
胸の中の一本の樹がずっと燃えている
それは一冊の本を愛してしまった
わたしのいのち

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