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家族が末期がんと診断されたら ~ 備忘録③

ご家族が、末期のがんと診断されたら・・・
そんな悲しいことは誰も考えたくありませんが、
少しでも予備知識があれば、
少しでもいい判断ができるかもしれません。

そんな気持ちで、私の体験を投稿します。


がんは、芸能人の闘病生活がSNSで発信されたりして、
どんどん身近になっています。
でも、がん治療内容の詳細は、語られることは少ないと思います。
専門的で説明が難しいからです。
つまり、がんに直面した時、患者側には圧倒的に情報が少なく、
私も困りました。

知識は大事です。
なぜなら、本当に患者の心身を最優先で判断できるのは、
患者の家族だけだからです。

末期のがん治療は、治療の選択を本人と家族が行いますが、
本人に体力も余裕もない場合は、最適な選択は家族が担うしかありません。

病院側も、最低限の説明はしてくれます。
ただ、質問して初めて教えてくれることが多いのです。
(医師の時間は有限ですから、当然です)

そして、ある程度の知識がなければ、質問すらできません。
そして、患者側の意見がなければ、
病院のマニュアルと医師のスケジュールに従って、粛々と進んでいきます。
(ドラマや芸能人のように、特別な対応はしてくれません)


私の父がお世話になったのは、この地区で最大の大学病院でした。
一番いい治療が受けれると思ったからです。
しかし、大学病院の医師は大変忙しく、
沢山の患者を抱えながらでも、出張で学会にも行きます。
その間の治療はストップし、基本的に電話で話すこともできません。

病院・看護師からすれば、末期がん患者のがん治療も日常です。
患者の命の危機が迫っていても、日常です。
1日を争う状況でも、日常です。

従って、基本的にマニュアル対応です。


でも!!!!!!!

患者本人および患者家族からすれば、最大の非日常です。
最優先事項です。
仕事や、睡眠や、食事よりも優先されます。
少しでも最良な治療をしてもらうべく、必死になります。
必死になって情報を集めます。

素人でも、
治療方法の判断で、残される時間に違いが出るのは分かっています。
適切な治療でも、1日遅れれば、
体力の方が先に尽きる可能性が高くなります。

しかし、
目の前の患者とその家族がそんな状況でも、
病院、医師からすれば、くどいようですが、それが日常です。
なので、勤務時間や学会スケジュールが優先されます。


冷静に想像してみれば、当たり前ですよね。
病院が患者側と同じ思考回路であれば、
24時間365日働くことになりますからね。

患者毎に、医師が何人も連携して、検査結果を入念に調べ、
最適な治療法を探していたら、キリがありません。
患者側からすれば悲しいですが、それが現実です。



だから、患者側がそれをやるしかないのです。

医師より時間のある私は、
投与される予定の抗がん剤の治験データまで見ました。
(実際に投与されたデータは見当たりませんでした)

治験結果を見ると、
投与しても平均で数か月しか延命できないような結果でした。
しかも、治験は、末期がんでも体力のある患者のみに投与されています。

担当医師に
「そんな限定的な効果しかない薬ですか?」
と尋ねても、
「治験データを確認しますが、効果は患者毎に異なりますので・・・」
としか言ってくれません。
(抗がん剤の種類は一桁なんだから、治験結果くらい頭に入っているのでは???と思いましたが、そんなこと言えません・・・)

何を言っても、私たちの選択肢は2つしかありませんでした。
医師が指定する抗がん剤を投与するか、何もせずに見守るか。
(末期がんかつ場所が悪く、切除も放射線治療もできませんでした)


私の父の場合は、結果的に抗がん剤治療が間に合いませんでした。
でも、その間に合わなかった原因にも不満が残っています。



がんになった方や、詳しい方はご存じだと思いますが、
抗がん剤治療の前には、がんの遺伝子検査を行います。
最も効果的な抗がん剤を特定する為です。
そして、それには2週間から1か月かかると言われています。
(しかも、最適な抗がん剤が特定できないことの方が多い)

私の父の場合も1か月かかりました。
ステージ4の末期がんで、時間との勝負でしたが、きちんと1か月かかりました。
(至急扱いとかではなく普通のスケジュールだったんでしょうね・・・)


そして、主治医との面談のセットも、数日かかります。
(先生は忙しいですもんね・・・。)

そして、治療方針の説明を受けて、「よく考えてください」と言われて、
次のアポが1週間後でした。
(学会も大切ですもんね。出張も仕方ないですもんね。でも、学会なので暫く病院を離れますくらい言ってくれてもいいんじゃないかな・・・)

1日を争う状況だったので、1週間も待てず、
看護師さんに、医師との電話をつないでもらおうとしても、
「学会ですので、先生に電話をすることはできません」
と。

「え???」
(学会て、患者の命より大事で、電話する時間すらないの?)

「学会が終わってからでよいので、電話が欲しいと伝えてください」

「できません」

「え???」
「1日でも早く治療を開始したいのです!。
 あなたが判断できないなら、上司に相談してください!!!」

「わかりました」
こっちの怒りが伝わったようで、やっと前に進みました。
そしたら、すぐに医師から電話がかかってきて、

「抗がん剤治療の開始ですね。分かりました。
 今日は金曜日なので、月曜にその為の検査をします」

「・・・(絶句)」
(土日はみんな休むんだね。検査すらしてくれないんだ・・・。)


月曜日に検査結果を聞くために病院に行くと、
「前回検査より悪いですね。抗がん剤治療はギリギリですね。」

「1日でも早くお願いします!」
と即答したが、

「では、抗がん剤治療をする体力があるか確認する必要があるので、
 一旦、退院して自宅に帰って、支障なく生活できるか確認してください」


「え??????????????」

私が納得していない様子なので、詳しく説明してくれました。
「抗がん剤治療は自宅からの通院しか認められません。
 自宅で通常の生活ができる体力がないと、
 抗がん剤治療には耐えられませんから」


「これまでの入院生活で、父の体力は分かりますよね。
 体力があるから(体力レベル基準をクリアしているから)、
 抗がん剤治療をやる方針ですよね?」

と食い下がっても、
「一旦自宅に帰らないと抗がん剤治療は開始できません」

(まじ???そんなことなら、早く言ってよ!!!)
 ↑ 心の叫び

しぶしぶ了解し、数日後に自宅に帰る為に再度検査をしたところ、
父のがんの進行が思ったより早いことが分かり、
自宅に帰ることすらできなくなりました。

あとは、病院のベットで、日に日に弱っていく父を見守っていくだけ。
抗がん剤治療の方針が決まってから約10日後に、父は逝ってしまいました。




病院と私の最大限の努力があったら、
抗がん剤治療の開始が間に合ったのだろうか?

私がもっと上手く病院とやり取りできていたら、
治療が開始できたのだろうか?

投与する抗がん剤が父に合えば、あと数年は生きられただろうか?

あの病院じゃなかったら、違う結果になっていたのだろうか?


そんなことを口にしても誰の為にもならないため、
このことは口にしたことはありません。
でも、もし、この投稿が、誰かの参考になればと思い、投稿しました。
私自身の悔しい思いも、忘れたくありません。


1人でも多くの人に知って頂きたいのは、
病院でしか治療はできませんが、全てを任せてはダメだということです。

特に、
大学病院は高度な治療ができると思いますが、
研究機関でもあるため、
普通の病院より、病院側の都合が優先されるような気がします。
一長一短だと思います。

普通の病院でも、大学病院と同じで人的資源が限られていますし、
組織としてのマニュアルもあります。
働いているのは、普通の人であり、
多くの方が、上司への相談や他部署との連携は好んでやりません。
マニュアルから外れる対応もしたくありません。
(会社員の方はよくわかるはず)

だから、病院や医師や看護師は悪くありません。
患者側が病院側の事情を理解し、賢くなるしかないのです。

患者側が、患者同士で体験や情報を共有し、
病院側に負けないくらいの情報をもち、
病院側とうまくやり取りしていくしかないと思っています。



最後に、

こんな私の考えを、温厚な公務員であった父が聞けば、
「またおまえはそんな過激なことを・・・。」
と、きっと私を叱るでしょう。

「父さんはそう言うと思ったよ。
 でも、俺が勝手に言っていることだから、聞き流してよ(笑)」

お酒を飲みながら、そんな話がしたかったなぁ・・・(´;ω;`)ウッ…

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