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子どもビール

先日父から車を借り、久しぶりに真昼から1人道を走った。
天気雨後の待ち侘びた日光がサングラスに反射していてとても気持ちがいい

いつもは右折する道を左に行ってみたり
気になる道を徹底的に進む。

「あ!この道だったんだ」
みたいな小学生の探検時代を思い出す。
これでもかと体をくねらせている山道
そんなに俯かなくてもといいたくなる坂道
エンジンブレーキを不器用に効かせながら
両サイドの白線を超えないようにハンドルを切る

「有料道路いってみるかぁ」と意気込み
馴染みの峠を駆け上り、インターチェンジへ
目的は綺麗な景色をみる 
僕の心はワクワクで満たされていた

しかし、僕は出会ってしまった
未だかつてないあの時から「変わらぬ憧れ」に

料金所を超え、一息ついていると
霧が急に立ち込めてきた
太陽はすぐそこにあるのはわかっている
だが、僕は戻ろうか頭を悩ませた
友人とドライブに来た時
濃霧で引き返した思い出が蘇っていたのだ

それでもやはり590円払ったことが忘れられず僕は計画通りのルートを走ることを決め
左側の道へ繰り出そうとした

その瞬間、
ウインカーを出す一台の車が向こうに
だが、霧のせいでよく見えない
「車種はなんだろう…リトラクタブルの車…
多分トレノだ!ハチロクの!」



ついに来た。
僕が小学生の頃から追いかけたテールランプ
リトラクタブル式のヘッドライト
あの時の幻想が現実となった。

僕は彼に道を譲り、アクセルを踏み込む。
気分はまるで高橋涼介だ。
車は一瞬で化け 大好きなRX-7に
道にはグランツーリスモのような線が現れ
必死にコーナーを抜ける
メーターに僕のスピードは測らせなかった。

なんとか食いつき、フィニッシュ。
思わず頭を下げた 
リトラクタブルじゃないのにも関わらず

あの日、僕が飲んだのは
立派なハイネケンだった。

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