見出し画像

古代祐三が訊く! セガサウンドの秘密【後編】セガ・川口博史(Hiro師匠)インタビュー(聞き手・古代祐三/文・鶴見六百)

【おしらせ】ただいまデザインのリニューアル中です。

古代祐三さんがHiro師匠にインタビューするという、ゲームミュージック界のレジェンドvsレジェンド企画、その後編です。

▼前編がまだの方はこちらから!
(※「前編」をご購読いただくと
創刊号のすべての記事も閲覧できます)

※初めての方はこちらのワンツー・ダブルパックがお得でオススメです!(※ご購入いただくと創刊1号・2号すべての記事を読むことができます!)

前編では、Hiro師匠のコンピュータ体験から始まり、音楽的なバックボーンと、そこから培われた作曲作法について、驚きの事実が明らかになっていきました。今回の後編では、作られた曲が実際にどのようにゲームに落とし込まれていったのか、古代さんの非常にマニアックな視点から質問が繰り出されます。ますますコアでディープな内容となっていく後編をどうぞご覧ください。(2022年2月7日・リモートにて収録)

昨今の情勢を考慮して、対談はリモート会議での収録となりましたが、リモートならではのやりとりもあって、終始楽しく、そしてとても深い話となっています。ぜひみなさんご覧ください。

音色の話

© SEGA

古代 音色は自分では作ってなくて、プログラマや打ち込む人に任せていた?
Hiro いや、FM(音源)の音色はいろいろ作っていたと思う。ハングオンではまったくやってないんだけど。
古代 ハリアーのときは?
Hiro スペースハリアーはBGMの打ち込みはしてないけど、音色のパラメータは自分でいじった気がする。
古代 効果音は?
Hiro 効果音はやってない。

古代 じゃあ、アウトランの音色は師匠のオリジナルの音色?
Hiro いや、もともとあったやつを少し変えて…とかだったかな。
古代 それはどこから提供されたもの?
Hiro DX7の(プリセット)データを自分で見た気がするな…。
古代 私は4オペのシンセから移したりしていました。
Hiro 4オペはそのあとFB-01(※39)でやったかな。これは4オペだよね。
古代 4オペです。…これですよね?(※部屋に置いてあった実物を見せて)

※39 1986年にヤマハから発売されたFM音源ユニット。YM2151と同じ4オペレータ・8アルゴリズム・8音同時再生というスペック。

Hiro 発売って何年だろ?
──1986年です。
Hiro じゃあアウトランがたぶんDX7で、パラメータを何とか小さくしてやってて、その後はFB-01を会社で買って、それで作っていた。
古代 なるほど!
Hiro 筐体上で作るよりは、FB-01のエディタのほうが使いやすかったので。
古代 アーケードセガ基板の音源スペックを決めていたのは誰なのでしょう? ハリアーのときはYM2203(※40)とSEGA PCMという組み合わせにしようとか、仕様は誰が決めていたのでしょう?
Hiro 当時のハード設計者に音マニアがいて、その人が決めていた。…基板設計の…名前忘れたけど、その人がやってた。

古代 当時、サンプラーって、高価で珍しい時代だったと思うんですよ。だから、あんな多チャンネルのPCMを実装しようという発想自体がすごいんですけど、誰が決めていたのかなって。
Hiro ああ、どうだろう…佐藤(秀樹)さんに聞けば分かるかもだけど。とにかくハード側にいた音マニアの方が決めてました。

古代 その仕様が実装された仮の基板が届いて、それで曲を作っていたんですか。
Hiro 当時はハリアーボードとかアウトランボードとか言われていたけど、徐々にサンプリングの容量は増えていって、これは嬉しかったですね。最初全然入らなかったので。最初にハードを設計したときは、ゲーム中に声や効果音を出すためにサンプラーの機能を載せたらしいんだよね。でも、うちらからしたら、サンプラーって楽器じゃない? しかも夢の楽器でしょ? 高いやつなんて1000万円くらいしたからさ。そんなハードが自分の目の前にあったら楽器にしたいじゃない?(笑) それでドラムとかいろんな音を入れ始めたんだよね。ハード設計の人は最初は楽器という使い方は想定していなかったのかもしれない。

古代 音源の割り振りとか、それを考慮したアレンジがすごく素晴らしいことに、ここ10年20年であらためて気付きました。当時耳コピしてたときはそういう情報が出ていなかったので、PC-8801mkIISR(※41)が発売されたときに、「FM音源だから同じ音が出せる!」ってそれだけで興奮して耳コピして…でもどうやっても「このドラムの音色、絶対無理だよな」とかになって。少ないチャンネルを削ってドラムを再現して、当時はそれで満足していたんですが、最近になって当時の(ハリアーとかアウトランとかの音源)スペックが分かって、「当時からこんなスペックだったんだ!」とビックリしました。
Hiro それは思っていたよりスペックが高かった?
古代 高かったですね。PCMは8~16チャンネルの間だったと思うんですが…。
Hiro アウトランは8(チャンネル)じゃなかったかな?
古代 スペハリがけっこう鳴っているんですよ。8チャンくらい。
Hiro スペハリは8だね。ハングオンは2チャンくらい?
古代 ハングオンは少ないですね。スペハリ以降はガンと増えて…。
Hiro ハングオンのときにもドラムを入れてたんだよね。鈴木裕さんにバンドっぽい曲にしてくれって言われたから。でもゲーム中は走行音でPCMチャンネルを使っちゃっているから、ドラムが鳴らない。
古代 当時はゲームの方に夢中でそこまで気がつかなかった(笑)。
Hiro それをハード設計側が知って、「ドラムと効果音は一緒に鳴ったほうがいいんだ」ってなって、ハリアーでアップデートしたんじゃないかな。
古代 ああああ、なるほど。
Hiro パワードリフトのころには、サックスとかトランペットの音もPCMに入っているよね。
古代 パワドリはそんなリッチだったんですね。
Hiro PCM容量が増えたおかげでね。

※40 ヤマハの音源IC。4オペレータのFM音源とSSG(PSG)音源を備えている。
※41 1985年発売。ゲーム向け性能を強化した機種。YM2203が搭載され、「ゲーセンのゲームと同じ音が鳴る!」と当時のファンを狂喜させた。さらに拡張サウンドボードを追加すると音源数を倍にでき、マニアックなファンを狂喜乱舞させることとなった。

古代祐三の極めてマニアックな質問

ここから先は

17,133字 / 13画像

各マガジンの通常価格の単品合計が2,980円のところ、こちらの一気読み超全部入りパックだと2,480円で買うことができます。4つのマガジンの総文字量は120万文字超!新書10冊分近い大ボリューム!永久保存版アーカイブとしてぜひ!

21世紀に奇跡の復活を遂げた『Beep21』の2021年〜2022年の記事すべてを一気に読める超お得なパックがこちらです!『Beep21』…

単品販売はそれぞれ500円ですので、初めて『Beep21』を買う人には、こちらがちょっとだけお得で便利です。一度購入すれば、この後追加・更新されていく記事もすべて追加料金なしで読むことができます。他では読むことができない大ボリュームの記事の数々をぜひお見逃しなく!※1号か2号をすでにお持ちの方は同じものですので、買わないようにしてください(単品でご購入ください)。

好評発売中の『Beep21』の創刊1号と2号を一気に全部読める、ちょっとお得なワンツーパックです。今から一気に創刊1号と2号の全部の記事を…

単品販売はそれぞれ500円ですので、初めて『Beep21』を買う人には、こちらがかなりお得で便利です(1号あたりなんと40円引きです!)。一度購入すれば、この後追加・更新されていく記事もすべて追加料金なしで読むことができます。他では読むことができない大ボリュームの独自記事の数々をぜひお楽しみください!※1号か2号をすでにお持ちの方は同じものですので、買わないようにしてください(その場合は単品でご購入ください)。

好評発売中の『Beep21』の創刊1号・2号・3号の記事を全部収録した全部入りトリプルパックです。今から一気に創刊号から3号まで全部の記事…

500円でこの号を購入したあとは、記事が追加されてもそのまま追加料金も必要なく新しい記事を読むことができます。創刊号には18本の記事(総文字数25万文字以上)が収録されていますが、この創刊2号はそれ以上の数の記事を読めるように準備しています。ぜひ『Beep21』を手にして、あの時の熱い想いを感じてください。

伝説のゲーム誌『Beep』が2021年に21世紀仕様になって帰ってきた! 奇跡の復活から3ヵ月。 『Beep21』創刊2号が発売されました…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?