見出し画像

『Beep21』セガ・アーケード メモリーズ by 元『ゲーメスト』ライター 豊臣和孝-memory1- 一大ジャンルを確立させたトレーディングカードアーケードゲーム「WORLD CLUB Champion Football SERIE A 2001-2002」

1980年代から1990年代を中心に、セガのアーケードゲームについてゲームセンターで稼働していた当時の雰囲気、ゲーマーの間でどのように盛り上がったのかなどを綴った好評連載『セガ・アーケード メモリーズ』。今回は約20年続いたシリーズの1作目「WORLD CLUB Champion Football SERIE A 2001-2002」を紹介します。ゲームセンターに一大旋風を巻き起こしたタイトルで、『ゲーメスト』の後にWebゲームメディアで働いていた豊臣和孝氏は本作を熱心に遊んでいた業界人のひとり。どのくらい熱心だったのかは、今回の文章の熱量でわかっていただけるでしょう。じっくりとお読みください。

▼豊臣和孝氏による過去のコラムは以下からご覧ください

※本記事はこちらから見ることができます(※下の「2024年間購読版」はかなりお得でオススメです)

◆「2024年間購読版」にはサブスク版にはない特典の付録も用意していますのでぜひどうぞ!

今回の執筆者 : 豊臣和孝氏(元『ゲーメスト』ライター)

豊臣和孝(とよとみ かずたか):1970年生まれ。元『ゲーメスト』ライター。ゲーム雑誌やWeb媒体編集などを経て現在はフリー。都内デパート屋上やおもちゃ売り場、ボウリング場遊戯コーナーなどの幼少期ホビー体験がライター稼業の原点。'90年前後までの玩具、ボード(ウォー)ゲーム、PC関連も得意。初セガ体験は'70年代に出会った各種エレメカ。

いしずえとなった大型モニター+フラットカードリーダー内蔵サテライト×8構成「WORLD CLUB Champion Football SERIE A 2001-2002」

今回紹介するのは、2002年にアーケード向けにリリースされたフットボール(サッカー)をテーマにしたトレーディングカードアーケードゲーム「WORLD CLUB Champion Football SERIE A 2001-2002(WCCF 2001-2002)」です。「WCCF」シリーズは2019年に筐体きょうたいを刷新した「WCCF FOOTISTA」の2021年バージョンをもって稼働終了となりましたが、本稿は主に「WCCF 2001-2002」にフォーカスした内容でお届けします。

ざっくりとした説明になりますが、「WCCF」は実在するサッカー選手のトレーディングカードをサテライト筐体のフィールドに並べ、監督の立場で指示を与えながらプレイするゲームです。チーム練習で選手を育て、試合では戦術ボタン(方向指示×4、プレス)とアクションボタン(シュート、キーパー)を使い、勝利を目指します。

ゲームを始めるには、まず専用自販機(ベンダー)で選手カードと保護スリーブが各11枚、そしてチームのデータを記録するICカードが入ったスターターパックを購入します。初回のみホームタウン、クラブ名、ユニフォームとエンブレムのデザインを決めたら、最大16枚までの選手カードを登録して練習と試合を繰り返していきます。後々のバージョンでオンライン対戦が可能になりますが、それまではCPU戦もしくは店内対人戦のみでした。

ここで注目していただきたいのは、大型モニターとサテライト8台で構成された豪奢な構成です。このような筐体構成は「WCCF」が初ではなく、1999年稼働の競馬シミュレーションゲーム「ダービーオーナーズクラブ」が直接的なオリジンですが、当時セガが特許を取得したフラットカードリーダー上に配置したカードを読み取るシステムとの組み合わせは、2024年現在稼働中の「英傑大戦」まで続く極めて強靭かつ盤石な礎となりました。

なお、大型マスメダルに匹敵する規模の筐体構成ゆえ、全国一斉稼動とはいかなかったようで(完全新作の専用筐体、しかもこれだけ大掛かりなものは月産にも限度がある)、正式リリースから1年以上かけて順次稼働店舗が少しずつ増えていったように記憶しています。

ⒸSEGA ⒸPanini S.p.A. All Rights Reserved.
The game is made by Sega in association with Panini.

当時としては高額な部類に入るプレイ料金 ~にも関わらず終日満席の大盛況~

本作のプレイ料金は、300円 / 1クレジットまたは500円 / 2クレジットが基本でした。ここで“基本”と表現したのは、2002年5月渋谷GIGOロケーションテスト以来どこでも大盛況となり、多くの店舗ではノートや整理券による予約制となり、ひとり1回6クレジット上限(1,500円)という制限が設けられていたためです。ロケーションによっては待機人数が尋常じんじょうではなく、数時間~半日以上の待ちもざら。「この時間でこの予約人数ではもう無理だな」とあきらめることもありました。

プレミアムな仕様とゲーム内容に応じたプレイ料金設定は、「ダービーオーナーズクラブ」のヒットにより“慣れ”というか“下地”のような感覚ができていた人たちも相当数いましたが、ビデオゲームメインの客層からは「なんでこんな(プレイ料金が)高いゲームにみんな殺到さっとうしてるの?」と疑問をいだかれ、理由は後述しますがサテライト筐体周辺で多くの待機者からガン見されることも珍しくない状況には「怖い」、「気になる」という声まで聞かれました(あくまで「WCCF」稼動最初期の話です)。

プレイ終了後に払い出される選手カードの魔力

「WCCF」に多くの人が惹きつけられた理由はひとつではありません。もっとも大きなウェイトを占めていたのがプレイ終了後に払いだされる1枚の選手カードだったことに、異論をとなえる人はほぼいないでしょう。1チームに登録可能な選手カードは16枚(スタメン11枚+サブ5枚)で、スターターにはスタメンぶんの11枚しか入っていないため、原則としてゲームを始めた直後は払いだされる選手カードを必要に応じてチームに加入させていくことになります。

「WCCF」選手カードには、大きくわけて3つのレアリティが存在しました(以下、公式サイトより引用)。

ここから先は

8,788字 / 3画像

■サブスク版 毎週Beep21とは 伝説のゲーム誌が21世紀の2021年に奇跡の復活を遂げた『Bee…

サブスク版 毎週Beep21

¥500 / 月

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?