『Beep21』真・セガハード列伝─セガサターンデザイン秘話【後編】
【追加更新】US版セガサターンコントローラーの写真と解説を追加しました(2024/02/29)
2024年はセガサターン30周年! 次々と明かされる当時の裏舞台
2024年はセガサターン30周年の年となりますが、本記事の前編ではセガサターンのデザインは、どのようなものが提案され、どのような経緯で最終的にあの形になったのか?についてお届けしました。
この中で、本邦初公開のソルクス・デザイン社による黒いセガサターンのモックアップの写真も掲載され、大きな反響を得ました。ブラックカラーをベースにメガドライブからの系譜を正統進化させ、本体に大きく金色で「32・BIT」の文字が印字されたその姿は、ご覧のように非常にスタイリッシュで、ソルクス社・渾身のデザインと言えるものでした。
▼参考 ソルクス社・高須社長メディア初登場!前編【全編無料公開中!】
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当時の誌面に載っていた予想図について
──当時『BEEP!メガドライブ』に掲載された予想イラストは、まだ東京おもちゃショーで公開されるかなり前の段階の予想図だったんですが、今見ると結構デザインが本物(の製品版セガサターン)に似ているように見えます。
及川 ……これは僕はタッチしてないですね。僕が描いたものではないです。
──当時、編集部側で描いた予想図ですので。たぶん状況から見て、非常にクローズドに見せてもらったものを絵にしたのかもしれません。当時この記事を担当していたのは『BEEP!メガドライブ』の編集長だった近藤裕でしたが、残念なことにもう亡くなられているため、その当時のことが今となっては...でして。
及川 ああ、そうですか…。何で僕が描いたものではないのかって、この再現図はロゴが綺麗に描かれてないからです。スケッチを描くときにロゴは命ですからね。人形の目と一緒なので。ロゴを曲がって描くとかはありえない。だからたぶんスケッチかデザインモックなどを見て、(モックアップの)現物はメディアにはまだ出せないということで、現物を見て一生懸命イラストに描き起こしてくださったものなんでしょうね。
──この(テレビモニターに投影されている)及川さんのセガサターンのデザインはイラストではなく"(モックアップの)現物"なんですか?
及川 これはモックアップ本体を実際に撮ったものです。画像が粗いのは、なぜかというとDIGIO(デジオ)という当時最先端(笑)のデジカメで撮ったものだからですね。
戸崎 画質が悪くて全然シャンパンゴールドに見えないね(笑)。
及川 CGですか? スケッチですか? って感じなんですけど、これ、実物なんです。
戸崎 当時(これは)すごいインパクトがあったんです。シャンパンゴールドに塗られて、ちょっと家電チックというかAV機器チックな、おしゃれなデザインがポンと目の前に出てきて、みんな目を奪われてしまいました。他のデザインは、そんな感じではなかったんじゃないかな。
及川 ソルクスさんは、それまでのセガの手法で生産できるデザイン。
樹脂のシボのザラザラしたところ(金型に施す梨地処理)と、光沢のコントラストで。あとはシルク印刷するくらい。
他の案はそれすら考えてなかったですね。だから事実上、そんなにデザイン案の選択肢はなかったかな、と思います。
戸崎 ソルクスさんは、セガの当時の設計力とか生産インフラを踏まえた上で「もうちょっと頑張ったら、これは作れますよ」というレベルのものを提示してくるんですよね。今のレベルの中で収まるものじゃないです。今回はここをがんばらないと、このデザインは実現できないですよ。でも、その頑張り方はこうですよと、業者を紹介してくれたり、部分的にそこの図面を書いてきてくれたりして、実現方法も提案してくれる。そこがすごい会社なんです。「なるほど、そういうやり方が世の中にはあるんだ」と勉強させていただける会社だったんです。それが今回はどうするんだ??と。
及川 世の中で、同じプロダクトを何千万台か作る機会に恵まれることというのは、ほとんどのデザイナーはないわけです。ソルクスさんのような優しいおおらかな方もいれば、僕みたいに雑な人は「やりなさいよ、それぐらい」と(笑)。「こんなに沢山作られる製品に携わって、すごく恵まれた環境で仕事しているんだから、トライしなさいよ。全く不可能ではないので、頑張りなさいよ」と思って、デザインが先行しちゃったんですね。
戸崎 モーターショーのコンセプトカーで「どこにエンジン乗るんですか?」っていうものと同じかな?
及川 そこまで言わないでよ(笑)。
戸崎 「どうせこれ、作らないんでしょ」と思ったら、「えっこれ、生産しろって言うんですか!?」みたいな話で大騒ぎになったのを覚えてます。
──コントローラーも、ワイヤレスの想定で?
及川 それも「技術的にできることなんだから、当然やりなさい」っていう話で(笑)。だって、その方が親切ですし。当時の家電を引き合いに出したらアレですけれど、ワイヤードのリモコンの家電なんかなかったですからね、'90年代は。5万円くらいの製品なら、コントローラーもリモコンでしょう、という話なんですけれども。僕は外(のデザイン会社)から入って来た人間なので、しがらみもなく言ったんだけど、結局そこは論破できず…、という話だったんですけど(苦笑)。
戸崎 セガサターンの最初のトピックは、ここら辺の具体的な経緯の話ですよね。
シャンパンゴールドをどうするか問題と実際のスケジュールの問題
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