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『Beep21』セガ・アーケードメモリーズ by 元『Game Watch』記者 石田賀津男 -memory 13- 様々なテクニックによりプレイヤーは大熱狂! 「電脳戦機バーチャロン」


1980年代から1990年代、セガのアーケードゲームは、当時はどのように盛り上がっていたのか、「あのころのセガ」についてじっくり綴っていく『Beep21』好評連載『セガ・アーケード メモリーズ』。今回執筆するライターは、元Game Watch記者の石田賀津男氏です。石田氏は「電脳戦機バーチャロン」において「うぃす」というハンドルネームで活躍し、その界隈かいわいでは名の知れた存在でした。今あらためて「バーチャロン」について、そのメモリーを執筆していただきます。

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今回の執筆者 :石田賀津男氏(元『Game Watch』記者)


石田賀津男(いしだ かつお):1977年生まれ、滋賀県出身。「スペースハリアー」に憧れた幼少期を経て、「電脳戦機バーチャロン」に熱中したことをきっかけにメディア業界へ。インプレス「GAME Watch」記者の後、現在はITとエンターテイメントのミックス分野を得意とするフリージャーナリスト・企画・編集。インプレス「窓の杜」にて「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」を連載中。

対戦格闘ゲームが主流だった時代に登場した「電脳戦機バーチャロン」

フリージャーナリストの石田賀津男と申します。今回は1995年12月に登場した3Dロボットアクション・シューティング「電脳戦機バーチャロン」のお話です。本作のプレイヤーであれば、当時の筆者のハンドルネーム「うぃす」でご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

本作が登場した1995年頃は、まだ2D対戦格闘ゲームが主流だった中、3D対戦格闘ゲームが人気を集めはじめていました。セガでは「バーチャファイター2」が大ヒットしていましたし、見た目のインパクトが強烈な「ファイティングバイパーズ」もありました。対戦格闘ゲームのバリエーションがとても豊富で、ゲームセンターでの対戦がとても盛り上がっていた時期だと認識しています。

その中にあってなお、本作はとても異質な存在でした。対戦ゲームではあるものの格闘ゲームではなく、キャラクターは人間ではなくロボット。操作デバイスはツインスティックと呼ばれる2本の操縦桿そうじゅうかん。対戦には2台の筐体きょうたいが必要で、レースゲームのような専用コクピット筐体までありました。

その異質さゆえに、人気ナンバーワンの大ヒット作という印象ではないながらも、当時のゲームセンターに通っていた方なら、誰もが記憶に残っている作品です。

©SEGA CHARACTER DESIGN:KATOKI HAJIME
©SEGA CHARACTER DESIGN:KATOKI HAJIME
ゲームセンター向けの「電脳戦機バーチャロン」の当時のブローシャー(表面)
©SEGA CHARACTER DESIGN:KATOKI HAJIME
電脳戦機バーチャロン」筐体。

ツインスティックと高速機動戦闘のインパクト

本作が多くの人の目を引いた理由は、ツインスティックという独自の操作デバイスの存在感と、ロボットによる高速機動戦闘だと思っています。

まずツインスティックですが、2本の直立した操縦桿の先に、それぞれ2つのボタンが取り付けられたものです。この操作デバイスを採用したアーケードゲームは本作が初めてではないのですが、今をもって希少きしょうであることは確かです。

そのツインスティックで操作するゲーム内容というのが、ロボットが高速で走り回りながら戦うというものです。ロボットというと、ガシャンガシャンと音を立てて歩き、見た目にも鈍重なイメージがありますが、本作はスマートな人型のロボットがブースターで加速しながら走ります。走るというのは言葉のあやではなく、文字通りダッシュでけていきます(足を動かさずスライド移動するキャラクターもいますが)。

ほかにも上空高くジャンプもできます。また攻撃は銃や爆弾、ミサイルなどロボットごとに異なる3種類の武装を使い分けられる上、近距離ではる・なぐるといった近接攻撃も可能です。

©SEGA CHARACTER DESIGN:KATOKI HAJIME

ロボットの動きを見ていると、高速かつバリエーションに富んでおり、広いフィールドを駆け回る様子は、それまでの対戦ゲームとは一線を画した自由さがありました。それをツインスティックの2本・4ボタンだけで操作できるとは信じられない、という第一印象を持った方も多かったと思います。

実際にプレイしてみると、ツインスティックに凝縮ぎょうしゅくされた操作系の素晴らしさがわかります。スティックを倒すとその方向にゆっくり移動し、親指にあるターボボタンを押すとその方向に高速ダッシュを開始。ジャンプは左右のスティックを外側に開くようにします。これだけで広いフィールドを縦横無尽じゅうおうむじんに移動できます。

攻撃は左右のトリガーがそれぞれ2種類の武装に対応。さらに両トリガー同時押しで3つ目の武装が発動します。攻撃はジャンプ中やダッシュ中などに発動することで性能が変化し、中には立ち状態で発動した時とは全く違う性能に変化するものもあります。近接攻撃は、一定距離まで近づいてトリガーを引くだけで発動します。

見た目はとても高速で複雑な操作が必要なように見えますが、実はシンプルで直感的にまとまっています。3D空間をロボットが駆けまわるというゲーム内容は、ツインスティックという独特なデバイスにより、とても簡単に実現されています。この驚きもまた、本作を印象付ける要素の1つと言えます。

©SEGA CHARACTER DESIGN:KATOKI HAJIME ツインスティックは2本の操縦桿を握り、親指部分と人差し指部分のボタン(合計4つ)で操作する。

まるで少女? ロボットの外見がユニーク

そして当時、周囲の目を引いたもう1つの要素が、ロボットのデザインです。カトキハジメ氏(アニメ『機動戦士ガンダム0083』『機動戦士Vガンダム』などシリーズのメカニカルデザインを担当)がデザインしたロボットは、とても人間味のあふれる外見になっています。リアルなロボットとして考えるなら、足がもっといっぱいあったり、戦車のように実用的な武装を取り付けたりしているものですが、本作は人間味ある個性でまとまっています。

当時から本作を指してよく言われたのが「ガンダムを動かせるゲーム」でした。アニメに登場するガンダムのように2足歩行し、手に持った武器でロボットが戦うというのが、既に本作の魅力になっていました。

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