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点滴ルームへようこそ 7

Day 7

10時25分着。いつも通り。
椅子席に誰もいない。
こんな日もあるんだなぁと思いながら窓際の席に座る。
患者数が少ないせいか、看護師さんたちも余裕があるようでにこやかに話をされている。
今日はまた違う看護師さんが担当になった。
ベテランさんだ。年齢は私と同じくらいか少し年上かなと思う。
作業を進めながら世間話を上手にされる。

「今日で7回目ですね、少しは落ち着きました?あとちょっとですよ頑張りましょうね」
「少しでも変な感じがあったら遠慮せずにおっしゃってくださいね。些細なことでも私たちの情報になりますから」
「ここ数日、暖かい日が続いているから通院も少しは楽ですね、寒いとそれだけで外に出るの嫌ですもんね」
「あそこのカフェのモーニングセットお勧めですよ。5〜6種類あってワンコインで12時まで食べれるんですよ。私たちスタッフもよく使ってます。機会があれば一度ぜひ」

などという何気ない世間話を合間に入れるのがすごく上手。
話すテクニックはさすが年の功(これは禁句なの?)を感じる。
落ち着く。
そんなわけで1時間があっという間に過ぎた。
最初は長く感じた1時間も最近はあっという間に過ぎる感じがしている。
いろんなことに慣れてきたのだろうと思う。

「今日は空いているので、ゆっくり休んでいかれてもいいですよ」と言われたが、いくら居心地がいい点滴ルームといえども病院の中ということには変わりがない。カフェやホテルでゆっくりするのとはやっぱり違う。
「またいつ混んでくるかもしれないので帰ります」と言って退室した。

帰り際、病院の正面玄関のところで知人とすれ違う。
見つからないように目を伏せたが「あらっ、イトカズさん!」と、声がかかる。
「あぁ...見つかっちゃった」と心の中で思う。
「こんなところで会うなんて…どこかお悪いの?」
「いや、ちょっと人間ドックで...」
と、誤魔化す。誤魔化す必要はないのかもしれないけど、話が長くなるのが嫌で嘘をついた。
「私は婦人科の検診に引っかかっちゃって...」
と、聞いてもいないのにお答えになる。
これもあの共有というものなのか。
共有もなぜかこの場所で、この方とはめんどくさい。

今日はどこにも寄らず帰宅。
猫が甘えて足元にスリスリしてくる。
当たり前だが、猫は私のこの状態を知らない。いつもの元気でおバカな飼い主だと思って寄ってくる。
この時ばかりは「人間の言葉わかって欲しいな」と思う。


2023.2.8(水曜日)7回目が終わった。
8回目へと続く…

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