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可愛く甘い4月のルードボーイたち

2021.4.1(木曜日) April 1st

髪を切る。

朝めざめたとき、カーテンの隙間からシャーという音がきこえてきそうなくらいの勢いで光が入り込んできた。さすが春の王道4月である。光も騒めきも容赦なく入ってくる。

朝のニュースを見ながら朝ごはんを食べていたら、大阪の感染者が急増したと言っていた。それを聞いて今行かないとまた行けなくなるかもと思い、朝ごはんを食べ終わってサロンの開店時間を待ってヘアサロンに急いだ。

空いていた。予約なしでも待ち時間はゼロ。感染者急増が影響しているのかもと思う。「どんな風にする?」と聞かれたので「片桐はいりみたいにして」と言ったら、「そういうリクエスト初めて受けました」と言って笑っていた。確かにあの髪型をしている人を私は見たことがない。片桐はいり以外に片桐はいりの髪型をしているのは私だけかもしれない。

冬は小林聡美、夏は片桐はいりと決めている。

2時間後、小さい片桐はいり出来上がり。

ヘアサロンの帰りにスーパーに寄る。ちょうどお昼時で近所の会社員たちがお弁当を買いに来ている。その中にいかにも新入社員と思われる人たちもいた。真新しい似合わないスーツを着ているからひと眼でそれとわかる。商品を詰める台のところでその人たちのグループと一緒になり、備え付けの電子レンジでお弁当を温めながら彼らが話している会話が聞こえた。

「このスーパーお弁当が美味しそうやし種類も多くてええな」

「会社の仕事はイマイチだけど、近くにこんなスーパーがあったらお昼は楽勝やな」

「まあなぁ。喰うもんが良ければ、仕事嫌でも何とかなるかな」

「おい、誰が聞いてるかもわからんから大きな声で言うなよ」

私は苦笑しながら聞いていた。仕事の楽しさなんて入ってすぐにわかるわけないから彼らの言ってることは正解だ。それにこのスーパーのお弁当はデパートが経営しているだけに美味しいのも正解。美味しいものがあるということはちょっとくらいのしんどさは何とかなると言うのも私の経験上正解だと思う。似合わないスーツが初々しくて、私は自分の取り戻せない時間を思い少しぼーっと羨ましさを込めて彼らを見つめてしまった。そういえば夫の会社にも今日から新入社員が入るようなことを言っていた。まさかこの子たちではあるまいな...。夫が帰宅したら探りを入れてみよう。

スーパーの帰り横断歩道の真ん中で100円を拾う。

白線に同化した100円玉が私を呼んでいた。

何だか今年の4月がとてもいい月になりそうな気がする。


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