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爪切り奇譚

2021.7.27(火曜日) Nail clippers

爪切りを探す。

2〜3日前から爪を切りたくて爪切りを探すが、部屋中探しても見つからない。普通のグリップ型の爪切りはあるのだが、私はグリップ型はあまり好きではなくてずっとニッパー型のものを使っていた。10年くらい前の自分の誕生日に、一生使えるものをと思って奮発してちょっと高価なニッパー型爪切りを自分で自分にプレゼントしたのだ。ちゃんと専用ケースに入れてバスルームの戸棚に置いてあったのを10日くらい前には見かけていた。それがいつの間にかなくなっている。あんなもの外に持ち出すわけでもなく、誰かに貸すわけでもない。ましてやどこかに転がっていくような形状でもなければ風化するようなものでもない。でもいくら探しても見つからなかった。夫にどこかで見かけなかったかと聞いても「ニッパー型ってどんな形してるの?」とまったく感知してないようだ。

そういうわけで手も足も爪が伸び放題になっている。

きっと部屋の中のどこか隅っこの方で静かに出番を待っていると思うが、もう探すのに疲れ果ててしまった。きっとこれが縁の切れ目なのだろう。人と同じように物とも縁の切れ目っていうのがあるように思う。愛用していたコーヒーカップが突然割れてしまったり、いつも掛けてるメガネのフレームに突然ヒビが入ったり...今までいろいろな切れ目があったけど、何も言わず行方不明になるなんてちょっと寂しいじゃないのよ。せめて別れの挨拶くらいしたかった。

うじうじ言ってても仕方ないので、ネットで同じような爪切りを探した。そして注文した。ポイントが溜まっているサイトで買ったので全ポイントを使ってものすごく安く買えた。到着するのが楽しみである。随分変わり身の早い私だ。切れたのものには興味はない。

でも、探し物や別れた恋人って忘れた頃にひょこっと現れたりする。

その時は何としよう。

埃まみれになって現れたりすると情をかけちゃうんだろうな、私弱いから。だからもういいから。現れないでくれと願っている。

今日は曇っているせいかいつもより少し涼しい。涼しいといっても微々たるものだが、そんな微々たるものにでも縋りたいような暑さが昨日まで続いていた。ようやくスーパーに出かける気持ちになって出かけた。大きな道路沿いではなくて公園のある脇道を通って行った。公園の広場には花火をした後のゴミがそのまま残されていてちょっと嫌になる。そういえば昨夜、窓を開けた時に公園の方から花火をする音が聞こえていた。ポーンポーンという乾いた音とキャッキャと笑う声を聞いて「あぁ夏だな」と感慨に耽っていた。あの時のポーンポーンの残骸がこれなんだな。誰が遊んでたのかわからないが、残念な人たちだ。私の感慨を返してほしいものだ。

今夜は豚汁を作る。

豚肉がとびっきり安かったから。






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