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こうなれば、人間などに用はない

2022.4.7(木曜日) Cherry blossoms are fluttering

またひとつ時が進んだ。

バスルームで洗濯物の仕分けをしていると、猫が「にゃ、にゃ、にゃ…」と言いながらリビングから廊下を抜けて私の寝室に走って行くのが見えた。
「おい、どうした?」とベッドの下に潜り込んだ猫に問いかけてもじっとうずくまって何も言わない。
リビングの窓の外に、時々鳩がやってきてうちの猫に向かって睨みを効かせることがある。また鳩か何かに睨まれたんだろうと思ってリビングに行ってみると、吊り下げられたワイングラスがゆらゆら揺れてブラインドの操作コードもゆらゆら揺れてる。
あらっ?っと思いテレビをつけると地震情報が流れている。
猫がにゃ、にゃ、にゃ、と言っていたのは「地震だ、地震だ」と言ってたんだな(と、勝手に思っている)
まったく気が付かなかった。
以前は地震に敏感な体質だったけど、こういうのも老化現象のひとつなんだろうか...…そう言えば、同じマンションの住人のおばあさんが、以前けっこう大きな地震があったときに「地震があったの?まったく気が付かなかったわ」と平然とおっしゃってたのを思い出した。
私もそうなりつつあるのかしら。
これからは猫を頼りにしよう。

気を取り直してお茶を飲みに行こう。
いつものカフェに行く。
今日は失敗の日だ。
カフェの一角におしゃべり好きのおばさま方が6人ほど陣取っている。少し離れたところに座りいつものように書きものをする。
おばさま方は声が大きい。
若者もおしゃべりしているのだけど、若者のしゃべり方って音より息の方が多い。だからうるさくないのだ。
一字一句聞き取れるほどおしゃべりに花が咲いていた。

1時間半ほどいて、晩ごはんの材料を買って帰宅する。

午後、何気なく外を見たら白いものがたくさん舞っている。何だろうと目を凝らして見ていたら、ベランダにそれがひとつ落ちてきた。ベランダに出て確かめてみると桜の花びらだった。近所の街路樹に植わっている桜が風に乗って舞っているのだと思った。「15階まで飛んできてくれてありがとう」と言いながらそれを拾う。きっと数日、いや数時間?で萎れていくであろう花びらを自分のものにするのは忍びなく、また風に乗せてやった。他の花びらと混じってどれがどれかわからなくなったが、またどこかにふわっと落ちて誰かを楽しませるかもしれない。
それとも、「もう人間などに用はない」と、自由気ままに舞っているのだろうか。

そろそろ終わりだな。
春の主役は人間のために精一杯演じきって散っていく。
地面に落ちた花びらは誰からも見られることはない。
舞う花びらに「申し訳ないね」と声をかけた。
春が終われば夏が来る。
夏が終われば秋が来る。
主役は次々にやって来る。



読んでいただきありがとうございます。 書くこと、読むこと、考えること... これからも精進します。