【映画】土を喰らう十二ヵ月
見終わった後の感想を最初に書くのは変かもしれないが、とても美しくとても静かな贅沢な映画だと思った。
立春の風景から物語が始まる。
立春といえど、信州はまだ雪に囲まれている。
お茶を立て、漬物を漬け、芋を焼き、筍を煮、梅を漬け、栗を煮…
季節に応じた食材を料理していく。
便利な道具は使わず何もかも手作業。
どれもこれも美味しそう。
美味しそうというだけではなく美しい。
豪華な料理ではなく、どちらかといえば質素な料理であるが、ものすごい贅沢さを感じる。
物語の中の主人公は当たり前の生活なのだろうが、こういうのが本当の意味での『丁寧な暮らし』なのだろう。
都会で流行りの『丁寧な暮らし』は映えを意識するのもが多く、誰かに見てもらうための暮らしなのだが、この映画を観てその方達にさえ到底真似のできない丁寧な暮らしを見ることになった。
静かな生活。
美味しいごはん。
ただそこには自然が生み出す音と、料理を作る音だけが響いている。
まったくのお手上げ状態だ。1ミリも真似などできない。
ただ私にできることは、自分の身体は自分が食べた物でできているということを認識することだ。認識しながらこれからは食事をしようと思った。
真知子の食べっぷりがすごくいい。
食べている時の顔がサイコーにかわいい。
さんしょ(犬)も素朴でかわいい。
さんしょもツトムの手作りのごはんを食べている。
ツトムの印象に残っている言葉がある。
「明日も明後日もと思うから生きるのが面倒になる。今日いち日暮らせればそれでいい」
そう思いながらツトムは長い間生きてきたのだろう。そしてこれからもそうやって生きていくのだろうと思った。
冬至…
また周りは雪景色になった。
白菜の漬物を漬けるツトムの姿がある。
これもまた美しい姿だ。
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