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サブテキストのある日常

2021.3.10(水曜日)  era of peace?

咳をして目が覚める。

少し痰も絡んでいる。熱を計ってみる。平熱だ。ひと安心して起き上がる。感染者が少なくなってきたとはいえ、私が感染しないという理由はどこにもない。ドキドキしながら朝ごはんを食べる。食後、念のため風邪薬を飲んだきっと風邪ということにしておこうという浅はかな考えからだろうと思う。

事実はわからない。

午前をなんとなくやり過ごして、午後にじっとしていられなくなり散歩に出る。マンションの前に多くの就職活動中の男女が信号待ちをしていた。インターンシップ参加者だろうか、就職合同説明会参加者だろうか、よくわからないけど、みんな楽しそうにおしゃべりしている。2022年卒の新入社員を採用する予定の会社は全体の8割くらいだと聞いている。ただやりたい仕事に就くのはもっと割合が低いのだろうな。私から見るとこの子たちはまだまだ子供だ。この騒ぎ方でわかる。公共の場で大きな声でしゃべり、周りに気を使うことなく団体で道の中央に陣取ってる。もし人事担当者がこの場にいたら、きっとチェックが入るだろう。まぁ、いいや、私の知らない親から生まれた知らない子たちだ。私がヤキモキしてもこの子たちには伝わらない。

公園に着く。老人や若者や鳩が散歩したり遊んだりしている。フェンス内では男子がキャッチボールをし、女子たちはシロツメグサの周りでおしゃべりしている。彼らを見て、あぁもう春休みに入ったんだなと気がつく。『鳩にエサをやらないで下さい』という立て看板の前で鳩にエサをやっている老人。足を引きずりながらカートにつかまり散歩する老人。犬に引っ張られて転びそうになる主婦。綺麗にお化粧したママ友集団。それらを私はベンチに座って見ている。この世は平和なのか騒乱なのかわからない。

どんどん時間が過ぎる。

沈丁花の甘い匂いがマスクを通して匂ってくる。もう枯れかけているにもかかわらずものすごい匂いを発している。最後の足掻きだろうか...生き物はみんなそうなんだろうか、人間もそうなんだろうな。

ありふれた風景を飽きずに見ている。さっきの足を引きずりながらカートにつかまり散歩する老人が向かいのベンチに座った。まるで何十年か後の自分を見るようだ。もう時間なんて過ぎなきゃいいのにと思った。

帰りに寄り道したスーパーで、特売のきゅうり3本と特売のトマト1個をカゴに入れた。特売ばかりじゃ申し訳ないと思い、特売じゃないリンゴ2個追加した。小心者極まりない私。こういうところが私がいまいち突き抜けないところなんだろうなと思う。マンションに到着すると、待ち構えてたかのように管理人が「おかえり〜」とまるで自分の娘に声をかけるように私に言った。私の「ただいま」の声が小さかったのだろう。管理人が不思議そうに私を見つめる。

気持ちがちょっとざらつく。

常に誠実でありたいと思うが、サブテキストはそうではないようだ。



*管理人と私の関係性は...↓







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