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映画で知り、本で生き、舞台で弾ける。

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映画、本、観劇の記録です。 この3本の柱でわたしは成り立っています。
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#日記

現実的なくせに、どこか弱虫

2024.2.5 (月曜日) I'm wimpy 雨の月曜日である。 『雨の月曜日』とかいうと、詩や小説の題材になりそうだが、 私にとっては週の初めなのに鬱陶しいなという感情しかない。 今日の私は過度に現実的である。 時々、過度にロマンチックになるから帳尻合わせとしては丁度いいのかもしれない。 夫はいつも自転車通勤をしているが、雨のせいで徒歩で行くようで、 「あぁ、めんどくさいな」と、夫もまた今日は現実的な様子である。 市川沙央さんの『ハンチバック』を読み終えた。 読み

にぎやかな落日

にぎやかな落日/朝倉かすみ 光文社 ある雑誌の紹介文に、 『自分の今後、そして自分の老後について思いをはせながら読むことになる小説だ。』と書いてあった。 確かに読んでる最中に、何度も亡くなった父や母のことを思ったし、生きていれば必ず訪れるであろう自分の落日についてもいろいろ考えながらの読書であった。 物語は、北海道で一人暮らしをする83歳になるおもちさんが主人公。 甘いものが大好きで間食がやめられず持病の糖尿病が悪化してしまう。 夫(勇さん)は施設に入っていてもう帰って

ドラマ 『季節のない街』

ドラマ『季節のない街』全10話見終わった。 大人の切ないおとぎ話である。 みんな、愛おしい存在だった。 ひとつひとつのエピソードだけを拾っていくと、それはよくある話ではあるが、宮藤官九郎の手によって人間の根底にあるさまざまな思いが、これでもかと見る者に訴えてくる。 このドラマの原作になっているのは山本周五郎の同名小説『季節のない街』で、以前は黒澤明監督がこの原作を元に映画『どですかでん』(1970年)を撮っている。 もちろん今回のドラマは時代を現代に置き換えて作られているの

【NODA・MAP第26回公演】 兎、波を走る

酷暑の中、新歌舞伎座へと向かう。 最寄り駅にはものすごい人の波で観劇前から酔いそうな気分で劇場へと向かった。この暑さとこの人並み...これもこのお芝居の演出のひとつなのではないかと思うほど、人を酔わせる夜だった。 定時開演。 * 潰れかかった遊園地が物語の始まりの舞台となる。 妄想の世界と現実の世界、その中に時間渦の不思議が織り込まれていく。 とある場所から脱走してきた兎(高橋一生)、妄想か現実かわからない場所で迷子になったアリス(多部未華子)、アリスを探し続けるアリスの

[映画] ケイコ 目を澄ませて

私が岸井ゆきのさんのことを知ったのは2018年のNHK朝ドラ「まんぷく」の中だった。その時は彼女に対しての情報は何もなく、元気で可愛らしい人だなという思いで見ていた。それから時々ドラマなどで見かけるようになって頑張ってらっしゃるんだなと思っていたところ、先日の日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞されて感動的なコメントをされていた。 素敵な女優さんになられたのだなとその時思ってこの作品もいつか観ようと思いながら今日になった。 物語は、 耳が聞こえない実在のプロボクサー小笠

人生って、複雑で曖昧な問いの連続

2023.5.19(金曜日) obscure 昨夜遅くに降り始めた雨が今朝も飽きることなく降っている。 今日一日降り続くという予報が出ている。 今朝も昨日の件で少し気持ちが沈んでいる。 気温は低いが、湿度が高くて蒸し暑い。かといってエアコンを入れるほどではないと思い、夫にお願いして出勤前に2台の扇風機を出してもらう。 今年はえらく早いお出ましとなる。 ダイソンの扇風機は、羽根がなく真ん中に穴があいている。そこを茅の輪くぐりのように通り抜けたりして猫が遊んでいる。こうやって

梅切らぬバカ

映画『梅切らぬバカ』を観た。 定かな記憶ではないが、それはこの映画の制作発表の場だったと思う。 主演の母親役の加賀まりこさんに誰かが質問した。 「役作りとか難しくなかったですか?」 それに対して加賀まりこさんは、 「私、実際に自閉症の息子がいるので、実生活の延長みたいで映画でも役作りとか特に難しくはありませんでした」 というふうなことをおっしゃっていた。 私はそのことを知らなかったので「えっ、そうなの?」と驚きながら聞いていたのだけど、あとでそのことの正式なインタビューを受

ある日の映画鑑賞

Dr.コトー診療所 先日、映画の招待状が届いた。 私に見せたい映画があると、時々招待状を送ってくださる方がいる。 それで、映画『Dr.コトー診療所』を観てきた。 招待状をくださった方に「観てきました」という報告と、私が感じたことを素直に書いて、さっきメールを送った。 流行りの洒落た映画でもなく、奇想天外なストーリーがあるわけでもないのだが、こういう映画は日本人にとっては必要な映画ではないかと思った。 弱い立場の人たちに平等に分け隔てなく愛を注ぐ…言ってみれば民のヒーローの

映画 『川っぺりムコリッタ』

ずっと観たかった映画「川っぺりムコリッタ」をやっと観た。 きっと極上の幸せが待っているだろうと思いながら観た。 荻上直子監督・脚本となれば、私の中であるイメージが浮かび上がる。それは決して悪いイメージではなくて「辛くても悲しくても決してあなたを裏切らないよ〜」という包み込むような優しさが漂うイメージだ。 それが確信になった。確かになった。 ここに登場するギリギリの崖っぷちの人々を暖かく包み込むような映画で、それぞれがそれぞれの事情を抱えて、それぞれの方法で何とか生きている姿

ドキュメンタリー映画 [THE GREEN LIE]

ドキュメンタリ映画「THE GREEN LIE グリーン・ライ エコの嘘」を観た。 毎日、毎日、マスコミやCM、その他さまざまなサイトで「サスティナビリティ」という言葉を聞いている。果たして企業がそれを口を酸っぱくして連呼するほど一般市民はその意味を理解しているのだろうか? たぶん理解している人は一部の人だけのような気がする。 サスティナビリティの意味は、 「sustain(持続する、保つ)」と「-able(~できる)」を組み合わせた言葉で、日本語で「持続可能性」を意味する

映画 『死刑にいたる病』

公開直後、観ることが怖くて時期を引き伸ばして今になってしまった。 映画『死刑にいたる病』を観た。 何をしても面白くないと感じ鬱屈した生活をおくる大学生の筧井雅也の元に、ある日突然一通の手紙が送られてきた。その手紙は、24人の若い男女を猟奇的な方法で殺害した犯人である榛村大和からの手紙だった。 拘置所から送られてきたその手紙には『会いにきてくれませんか』と書いてあった。 雅也は数日間いろいろ考えて榛大和に会いに行くことにした。 面会室で雅也は大和から思わぬことを聞かされる。そ

HOUSE OF GUCCI

映画[ HOUSE OF GUCCI ]を観た。 テレビでこの映画のコマーシャルが流れてくるたびに「あっ、観たい」と思っていたが、テレビコマーシャルもなくなって、映画フリークたちのブログ記事もピークを終えたところを見計らって観た。 コマーシャルや他の方の感想の先入観がある期間はどうしても観れない性分だなので、いつも一歩遅くなってしまう。 最初は謙虚な夫婦生活をおくっていたパトリツィアとマウリツィオだったが、徐々に自分の権威を主張するようになる様子が不気味だった。 伝統的な家

椿の庭

ずっとずっとずっと観たかった映画「椿の庭」をやっと観れた。 自分自身に心の余裕がずっとなくて、ガサガサした気持ちのままにこういう映画を観てもうまく受け入れられないだろうなと思っているうちに2年の月日が流れていた。 今だ!と思って観た。 すごくすんなり入ってきた。 今で間違いなかったんだなと思う。 物語はそれほど複雑ではない。 神奈川県葉山に海が見渡せる位置に建つ古い家がある。 庭には季節ごとに花が咲き、多くの木々に囲まれた中にその家は美しい姿で存在している。 そこでは絹子(

大人計画 ドライブイン カリフォルニア

昨夜、舞台「ドライブイン カリフォルニア」を観てきた。 開演は午後6時で、会場は家と目と鼻の先くらいのところにあるから10分前に出ても間に合うのに、大好きな大人計画の舞台ということもありもう午後4時くらいからそわそわしていた。結局5時半に家を出て会場の近くのカフェでいろいろ妄想しながら開演を待っていた。 * 始終、涙が止まらなかった。 確かに悲しい話なのではあるが、一言で言えばかっこいい舞台だ。 私は初演(1996年)こそ観ていないが、2004年の再演を観ている。 今回は