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映画で知り、本で生き、舞台で弾ける。

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映画、本、観劇の記録です。 この3本の柱でわたしは成り立っています。
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記事一覧

【テレビドラマ】団地のふたり

【ドラマ感想文】 NHK BS プレミアムドラマ『団地のふたり』 同じ団地のそれぞれの実家に住んでいるノエチ(小泉今日子)と奈津子(小林聡美)の日常を描いたドラマ。 ふたりは子供の時からこの団地に住んでいる幼馴染で、ふたりとも独身で55歳。ノエチは大学の非常勤講師、奈津子は自宅でイラストレーターの仕事をしている。 今までいろいろな人生経験をし、お互いいろいろ悩みはあるようだが、それでもふたりは持ち前の明るさでおもしろおかしく暮らしている。 ふたりの会話は、日常生活そのもの

ベスト・エッセイ2024 (日本文藝家協会編)

【読書感想文】 ベスト・エッセイ2024(日本文藝家協会編)・光村図書 また本が付箋だらけになった。 エッセイとは?ということをネットで検索してみると、 『自由な形式で、自分の意見や感想などを述べた散文のこと。また、特定の主題について述べる小論文、論説のこと』 となっている。 あらゆるところにエッセイはあり、こんな私でさえエッセイと名のつくものを書いているが、心を動かすエッセイを書くことはもちろんだが、そういうエッセイにに出会うのもなかなか難しい。 光村図書から毎年発売さ

夜明けのすべて

【映画感想文】夜明けのすべて 大雨の降っている中、傘もささずにバス停のベンチに座って動かない女性がいる。バスがやってくるが乗ることもなく、びしょ濡れでベンチに座り続けている。 会社員の藤沢美紗(上白石萌音)である。 その後ろ姿を映し出しながら、藤沢美紗の心の声が流れる。 物語は… 藤沢美紗はPMSがあり病院に通っていた。 PMSとは月経前症候群のことで、月経前になると精神的症状や身体的症状が顕著に現れること。彼女の場合は、イライラしてちょっとしたことで誰かれ構わず怒鳴りつ

TIMELESS

【読書感想文】  TIMELESS ・ 朝吹真理子 揺蕩うような物語だなと思った。 愛する人と、昔話を語り合ってるような… そんなお話しだった。 揺蕩うようなと最初に書いたが、書かれている言葉自体はとてもテンポが良くて、言葉がシャワーのように降ってくる。 ポンポンポン弾んだり、シャーシャーと流れたりする。 読む側が理解しようが彷徨っていようがお構いなしに降ってくる。 「ここまで読もう」と決めて読み始めるが、その箇所に来るとやっぱり次のページを捲りたくなるような騒動に駆られ

【映画】夜空はいつでも最高密度の青色だ

映画感想文感想文「夜空はいつもで最高密度の青色だ」 どこかの誰かが言っていた「この映画、とてもいいよ。特に都会で生活している人にとってズシンと来る映画だよ」と… 都会で生活する人にズシンと...それだけでもう映画を観なくてもわかるような気がした。 それでも観た。 たぶん、いいことばかりではないだろう、いやいいことなんてこれっぽっちもないかもしれないとは思うが、時には棘のようなものに刺されてみたいという願望が私の中にある。そうしないと心も体も頭も緩慢になってしまうかもしれない

【読書感想文】 恋ははかない、 あるいは、プールの底のステーキ

恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ ・ 川上弘美 また今回も惑わされてしまった。 川上さんが書く作品は、いつ読んでも何を読んでも面白くて、そして不思議な空気が流れている。 それほんと?ほんとなの?という出来事や想いが描かれているのだが、 そんな、ふふっと笑えるような物語の中に少し刺を含ませたような表現が時々あって、そのふんわりドキドキとしたのを楽しみにいつも読んでいる。この作品もそれは多分にあり、小説のようであり、エッセイのようであり、日記のようでもあり、川上さん

【詩集】 真珠 ・荒川洋治

惑わされる...これはきっと叙情の惑いなのかと こうなれば、もうどうでもなれと思いながら読み終えた。 詩というものを読んだことがないわけではない。 子供の頃から現在に至るまで、有名無名に限らずあらゆる詩を読んできた。 そして自分でも詩を書いた。 これだけ長いあいだ詩と関わってきたのに、荒川洋治さんの『真珠』にこれだけ惑わされて、「読み解けるもんなら解いてみる?」と、問われる詩集は始めてだった。 正直に白状しよう。 私は読み解けてはいない。 そもそも詩というのは、読み解くも

茶柱の立つところ ・ 小林聡美

【読書感想文】 茶柱の立つところ 何かの女性雑誌を立ち読みしていたら、小林聡美さんが新刊を出されたという記事を見かけた。 それは日々のことを綴ったエッセイだと知った私は、その足で雑誌コーナーから新刊書コーナーに移動してこの本を買った。 私は小林聡美さんの佇まいというか、持ってらっしゃる雰囲気というか、どこがどうという理由ははっきり答えられないのだけど、とても好きなタイプの女性だ。 以前(2021年1月20日)に『誰もが小林聡美になりたがる』というエッセイをこのnoteに書い

映画館の隅っこで、未来をそっと夢見てた

【映画にまつわる思い出 with WOWOW 参加作品】 少し戸惑っていた。 私は映画に少し戸惑っていた。 今の私の素直にな気持ちである。 ありとあらゆる映画をテレビやスマホで見れる時代になった。 映画好きにとっては最大級の幸せな時代なのかもしれない。 しかし、子供も頃、母に連れられて行った映画館の子供さえも魅了する雰囲気が忘れられない。 重い扉を開けて中に入ると、外の世界と一線を画した世界がそこにあって、きらびやかな世界というより、その反対のどこか秘密めいた世界があった。

BLANK PAGE (空っぽを満たす旅)

【読書感想文】BLANK PAGE 空っぽを満たす旅/内田也哉子 樹木希林さんと内田裕也さんの娘である、内田也哉子さんが書かれたエッセイとなる。 この本はかなりの人気だと聞いている。現に私の知人の半分がこの本を購入していた。也哉子さんのお母様である希林さんの人気も凄まじかったが、その娘となると若い方も加わってさぞかし人気なのだろうと思う。 希林さんは、女性の方、それも若い方というより年を重ねられた方に絶大な人気がある。 希林さんが生前書かれたエッセイは今でも売れているようだ

現実的なくせに、どこか弱虫

2024.2.5 (月曜日)  I'm wimpy 雨の月曜日である。 『雨の月曜日』とかいうと、詩や小説の題材になりそうだが、 私にとっては週の初めなのに鬱陶しいなという感情しかない。 今日の私は過度に現実的である。 時々、過度にロマンチックになるから帳尻合わせとしては丁度いいのかもしれない。 夫はいつも自転車通勤をしているが、雨のせいで徒歩で行くようで、 「あぁ、めんどくさいな」と、夫もまた今日は現実的な様子である。 市川沙央さんの『ハンチバック』を読み終えた。 読み

【映画】 月の満ち欠け

1年前だろうか、私は知人から勧めで偶然この佐藤正午さんの「月の満ち欠け」の原作本を読ませていただいていた。 「不思議な物語だなぁ」という感想を持ちながら読み終えたのだが、 その後そのことに触れることもなく、読書感想文を書くこともなく、私の中ではそこで終わっていたのだが、また別の知人から「おもしろい映画があるけど観てみたら」と勧められたのが、偶然にもあの時の小説が映画化されたこの「月の満ち欠け」だった。 この二つの偶然は何か意味があるのか、それとも単なる偶然が続いただけのことな

にぎやかな落日

にぎやかな落日/朝倉かすみ  光文社 ある雑誌の紹介文に、 『自分の今後、そして自分の老後について思いをはせながら読むことになる小説だ。』と書いてあった。 確かに読んでる最中に、何度も亡くなった父や母のことを思ったし、生きていれば必ず訪れるであろう自分の落日についてもいろいろ考えながらの読書であった。 物語は、北海道で一人暮らしをする83歳になるおもちさんが主人公。 甘いものが大好きで間食がやめられず持病の糖尿病が悪化してしまう。 夫(勇さん)は施設に入っていてもう帰って

ドラマ 『季節のない街』

ドラマ『季節のない街』全10話見終わった。 大人の切ないおとぎ話である。 みんな、愛おしい存在だった。 ひとつひとつのエピソードだけを拾っていくと、それはよくある話ではあるが、宮藤官九郎の手によって人間の根底にあるさまざまな思いが、これでもかと見る者に訴えてくる。 このドラマの原作になっているのは山本周五郎の同名小説『季節のない街』で、以前は黒澤明監督がこの原作を元に映画『どですかでん』(1970年)を撮っている。 もちろん今回のドラマは時代を現代に置き換えて作られているの