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まず大きな道をいく

僕自身、作曲もギターも独学だったので誰かに”習う”ことが初級者にとってどんな体験になっているのか想像の範疇でしかない。弾きたいからギターを弾いていたし、曲を作れる人になりたいと確信していたから作曲に必要なこと(楽譜の読み書き、コードなど)は自発的に学んでいった。

「もし自分がギターを始めた頃にレッスン通いをしていたら、なにを質問するだろう?」
あるいは「もっと早めに知っておけば良かった・・・・!」ということはないだろうか。それが僕のレッスン内容を考える軸になっている。


苦労するところを補完してあげたい

楽しく弾いて欲しい、作曲を楽しんで欲しいと言うのは簡単だ。(リアルで僕を知っている人は分かってもらえると思うが)音楽を楽しくやっている姿を見せてやると、生徒さんは一時的にはやる気になる。
だけど、実際のところは『苦労して習得すべき技術や知識』につまずいてしまう。いや、もっと具体的にいえば『数をこなす』ことが難しい。

実際のレッスンで使っている初級者用資料

たとえばギター初級者にはオープンコードを丸暗記する課題を出す。順番通りに「100周すれば必ず覚えるから」と提案する。実際にレッスン中に10周くらいすれば、ある程度は覚えていく。
どうしてオープンコードを丸暗記しなければならないか、それはすでにギターが弾ける人にとっては説明不要だと思う。要するにオープンコードを並行移動して様々なコードを弾くようになるから、基本となるオープンコードのパターンを覚える必要がある。ここが曖昧だとバレーコードを習得するときの負担がキツい。
だけども初級者の生徒さんにとっては”その先”は見えていないから、この課題の意義がそれほど深く伝わることはない。

そういう時にいつもこう説明する。


「まず広い道を覚えましょう」

「まず広い道を覚えるようにするんだよ。隣の街まで行くことをイメージして欲しいんだけど、一番広い国道を覚えて往復できるようにまずなりたいでしょ。そこから『こっちの道の方が早く着く』だとか『この時間帯はこっち』とか、『ここを曲がれば細い道があって美味しいお店がある』とかを知っていく。用事があって脇道に入ったとしても、また大きな道に戻ってくるでしょ。だからとにかく最初は大きい道を覚えるのは大事なんです、そうしないと迷っちゃうから」

音楽でも”迷う”という状況は発生する。音楽理論の勉強しようとする人が、一番根っこのインターバルやコードシステムが100点になってないから「これはどうなってんの?!」と理解できず極論や異論、精神論に逸れていく人は音楽に迷っていると見ている。
そういった状況に陥らないように、基本の基本はちゃんと体得しておいた方が、将来的に楽になる。

「音楽って脇道に大事なことが埋まってるけど、脇道にばかり目がいって大事な大筋を見失っちゃいがちなんだ。弾き語りで大事なのは”最後まで歌い切る”ことだし、DTMだと”1曲を作り切る”ことなんだよ。『ちゃんと到着する』っていう体験を重ねなきゃ次に行けないのよね。だから僕は最初に”広くて大きい道”を教えるようにしている」


僕もたくさん迷っていた時期が

僕は20代半ばくらいから完パケの音源を作る仕事を始めたけど、当時はミックスもアレンジもマスタリングも情報が少なく、少ない情報をたよりに試行錯誤してなんとか乗り切った。それなりに乗り切って、悔いが残りながらも積み上げてきたことで自分の実力になっていったように思う。
そのとき一番の支えになったのは、専門学校時代のSRクラスのノートだった。EQについて、コンプについて、ちゃんとした先生に一通り指導を受けていたから、そこで迷うことがなかったのは随分と助かった。
ネットでは基本的な知識を検索しても”秘策”だとか”裏技”ばかりが上位に出てきて、大事なことを言ってる動画やブログは地味で埋もれてしまう。基本は基本として学ぶことが難しい環境にあると感じる。
だから少なくとも、僕のレッスンでは基本の基本をしっかり教えられるようにと思っている。それは地味で退屈かもしれないけど、まず『広い道を教える方針』は変わることはないだろう。

きっとその方が、息の長い音楽をやっていけるようになるから。僕は生徒さんに音楽を続けて欲しい。

サポートなんて恐れ多い!ありがたき幸せ!!