地域における目標設定の3つのポイント!
みなさんは目標設定で困ったことはありませんか?
具体的な目標にならない、目標を設定しただけで活かせないなどなど・・・
特に病院だと、セラピストの目標なのか患者の目標なのかよく分からんことになることも多いです。
地域の分野での目標設定では、”明確で”・”意味があって”・”現実味のある”ことが求められます。
今回は、地域で必要な目標設定のポイントを弊社でも実践しているコツを交えながら書いていきます!
①まずは目標設定のセオリーを知ろう!
ポイントの前に目標設定の基本から!
目標設定関連の本やセミナーでは、ほぼ必ずと言って良いほど出てくるものを紹介するだけなのでサラッといきます。今回は、それに実用性を持たせるところをメインにします。
目標設定の基本と言えば、5W1HとSMARTです。
要は、これに沿ったら具体化されますよという便利ツールです。
早速余談ですが、目標設定は他分野から輸入してきたものが多く、SMARTも元々は経済学者のジョージ T.ドランさんが「目標の確立と各行動計画の発展には、会社の経営過程において最も決定的なステップがある」と言って作ったものです。
英訳に自信は無いので、詳しくは原著をご覧ください。
目標設定の勉強をすると、教育心理学や経済学など多くの学問を横断することになるので結構楽しいです。
話を戻しまして、目標設定のセオリーは以上になりますが、本当に大切なのはここからです。次は、見落としがちな目標設定の罠を述べていきます。
②見落としがちな目標設定の罠!
5W1H とSMARTの沿って目標を立てれば誰でも具体的なゴールが立てられます。
しかし、本当に考えなければいけないのは立てた目標の前後です。
・目標を達成したその先に何がある?
・目標を達成した後の自分が想像できる?
・その目標は本当に達成する必要のあるもの?
つまり、①立てた目標は本当にそれで良かったのか?ということに対して、自信を持って大丈夫と言えるだけの根拠付けをその人の生活内容などから行うことと②目標を達成した時、その人は豊かな生活を送れるのか?ということを考えなければいけません。例を一つ出してみます。
一見、目標は具体的で評価も客観的に行えるので5W1HとSMARTはクリアしてそうに見えます。
では、背景にこんなことがあったらどうでしょうか?
■利用者側
・昨日の普段はやっていない出来事を目標に立てた
・目標を達成しても自分で行う必要が無さそう
・”主婦としての役割を果たす”のは洗濯物干しだけ?
■セラピスト側
・洗濯物干しの動作的にBBSとTUGが適切かどうかの判断を行っていない
・目標となる課題動作の問題点を事実からではなく推測から抽出している
・目標を立てた背景やパーソナリティ関連の情報収集が不足している
ざっくりと問題点を挙げるとしたらこのような感じでしょうか。
表面上はコミュニケーション面での問題は無さそうですが、このまま目標を変更せずにリハビリを続けたらどうなるでしょうか?
■目標を達成したその先に何がある?
→自宅では習得した課題(洗濯物干し)を使う機会は無く、課題達成のために得た身体機能は維持されることなく劣化
⇒その人の生活における実用性・重要性のある目標が望ましい
■目標を達成した後の自分が想像できる?
→元々やっていなかった動作を行うことは、本当に主婦としての役割を果たすことになるとは限らない
⇒モチベーションとなる目標であることが望ましい。相手の「主婦としての役割を果たす」ことに対する定義付けが必要
ただし、間違えてもやってはいけないのが、あまり意味の無い目標だと思っていても、それを否定してセラピストが必要だと思う目標にすり替えることです。
ここで必要なことは、相手が提案する目標に重要度・緊急度・実用度がどの程度あるのかをお互いで吟味し合うことです。その上で、必要性は低くても本人の価値観的に重要度が高ければ、サブゴールも添えて目標達成のための計画を立てていくことが必要だと思います。
僕の病院勤務時代は「相手から言われたことを目標にする」でしたが、追跡調査やデイサービスで働き始めてから思ったのが「目標を達成してもそれをやらなきゃ意味がない」ということです。
そのようにならないためには、目標設定のポイントを抑えておく必要があります。
③分析された目標設定はリハビリを変える!
さて、これまでは目標設定のセオリーと有りがちな間違えを述べてきました。
ここからは目標設定の分析とポイントをお伝えします。
■①その人の生活の成り立ちを分解する■
入院中でも自宅生活中でも人間であれば生活をします。
よく、自分の中に生活があることを前提に生活に必要な動作や福祉用具を考えがちですが、生活の中に環境や本人がいることを考えると幅広い視点で問題点を分析しやすくなります。
この時の分析の手順としては
①生活の構成要素を出来る限り出す(問題点以外の要素も分解。枝分かれする内容は何でもいい&他の項目と被ってもいい)
↓
②出し切ったら「ここを解決しないと目標達成は無理」というところを赤、「ここを解決しないと目標達成は達成できても困る」というところを青、「ここはヘルパーや道具を使えば本人が出来なくても大丈夫そう」というところ緑で囲う
↓
③緑で囲ったところが目標を達成するのに被ったら本人的には地力でできるようになる必要があるのか補助ありきで達成できれば十分なのかを確認する
↓
④赤は最優先で介入し、青は代償手段で補うか介入していく中で解決できそうかの判断した上で介入。緑は他職種や本人と家族に相談して解決していく
といった形になります。
これができれば、その人の生活に必要な情報の収集モレ防止と目標設定の意味付けができます。加えて、サブ目標が立てやすくなるメリットもあります。
手間と時間はかかりますが、やっていくと確実に力は着くのでオススメです。
※あくまで個人的に行いやすい方法であることをご了承ください。
■②目標を分解する■
生活を分解して、設定した目標が意味のあるもの&サブゴールの設定ができたら、次は目標の構成要素を分解していきます。
この目的としては①目標達成のための阻害因子の把握、②補助因子の把握、③目標達成のための介入計画を立てる際にモレを防ぐためです。
■③目標と問題点をまとめる■
目標を5W1Hに分解して、一つ一つの要素の問題点を洗い出したら本人がそれらに対してどのように思っているのかとそれに対する改善見込みを考えていきます。
この形はケアプランと少し似ています。目標に対して「本人がどのように思っているのか」と「本人の現状と目標に相違が無いか」を確認するためのシートです。また、セラピスト側も本人の能力・セラピストの経験・エビデンス・環境に基づいて改善見込みを考えていきます。
このシートを埋めて患者に見せることでお互いの考えは共有しやすく、目標達成までのプロセスが見やすくなります。
また、目標に対して乖離的な思考をしている人に対しては現状と理想のギャップをすり合わせるためのツールとしても活用できます。
以上が3つのポイントでした。手間な作業が多いものですが、やってみるとめちゃくちゃ便利だと思います。ファイルのリンクを貼っておくので物好きな方は是非、活用してみてください。
最後に個人的に思うことですが、入院中に立てる目標と地域でリハビリを行う際の目標は大きく異なるということです。目標設定を行う際には注意してみてください。
入院時と地域での目標設定の違い
よく「歩くのが目標なんじゃなくて、歩いてその先に何をやりたいかを目標にしなさい!」と言われるかと思います。
言っていることはごもっともなのですが、よく考えなければならないことがあります。
①そもそも歩けてないからその先の目標を考えられないのでは?
②歩けないと色々なことができないのでは?
目標を立てるってめちゃくちゃ難しいです。そして、立てた目標が意味を成す様にするのもめちゃくちゃ難しいです。
ただし、患者や利用者のモチベーション向上や信頼関係の構築など色々な要素に良い流れをもたらします。
大変な時期ではありますが、是非、みなさんも頑張って良い目標を立ててみてください!
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