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いちごいちえ

 人が親しく会話を持つ人と出会う確率は2千400万分の1と言われている。これはもう天文学的な数字である。クラクラする数字である。つまり、人と人が出会うことは紛れもない奇跡なのだ。そして今目の前に座っている人との出会いも、きっとそういう類のものなのだろう。偶然、必然、運命、この際どうでもいい。とにかく、今、私は2千400万分の1の奇跡の中にいるんだ。向かい合わせで他愛もない会話を交わし、同じ珈琲を飲み、同じ奇跡の中でありふれた日曜日の午後を共有している。そこに意味など見出す必要もない。

 人は生きている間にたくさんの人と出会う。全ての出会いにはそれぞれ意味があり、人は出会うべくして出会い、別れるべくして別れる。この世は会者定離、出会った以上別れは必ずやってくる。私達はいつも始まりと終わりの間にいる。全ての物事には、ちゃんとはじまりと終わりがある。生まれた以上、いつかは死ぬ。それと同じように、出会った以上、どんな形であれ別れはやってくる。今目の前にいる人とだって二度と会えないかもしれない。それもまた会者定離。

 ところが、奇跡と言ったって、ずっと続く縁というものにはなかなか出会えないものだ。袖振り合うも他生の縁 とはいっても、人生においては、その場かぎりの、一期一会のような出会いの方が圧倒的に多い。それでも縁は縁。だから一度会っただけだとしても、私は全力でその人と向き合い、その後もその人にとって、人生が歓びに満ちたものになるよう祈り続ける。もちろん出会わなければ人もいるが、どんな形で別れたにせよ、少なくともその人の不幸を祈るような人間にはなるまいと常に心に誓っている。

 一期一会、また会えても、会えなくても、あなたが幸せでありますように。


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