60グラムの虚しさ
4月、42歳の誕生日から8日後、私は子宮と卵巣を摘出した。卵巣癌だった。
卵巣と子宮、合わせて60グラム程度の臓器が私の中から無くなった。
その役目を果たすことなく、静かに死んでいったその小さな臓器の行方はわからない。
時々、私は思う。癌に蝕まれた右の卵巣のことを。セットで取り除かれた片方の卵巣のことを。ゴルフボール大の筋腫たちを。一度も命を生み出さないまま消えていった子宮を。それはどこかの研究室の棚の奥で、ホルマリン漬けにされて、時々医学生の目に晒されたりしているのだろうか