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1分未満でわかる提案品質

20年以上IT業界で提案活動をしてきている中で、
自分の提案書の構成や書き方がしっかり
型作られてからは特に、他者の資料を
数多く見る中で、ぱっと見ただけで
その提案の質が大体わかるようになった。
(早い時は1分もかからない)

現在、IT営業/プリセールスの育成を
担当している中でも感じるのは、
顧客志向の大幅な欠如。 

ビジネスである以上、顧客がいるわけで、
顧客志向でない限りは売れない。
これは自身の経験からも言い切れる。

ましてITの領域は幅広く、日々複雑になっていて、
システムに詳しくない人にもキチンと価値訴求を
する必要があるのに、相手の立場に立った
説明や活動ができなければ評価されない。

それでも、

・価格
・製品自体の他社優位性
・これまでの会社通しの関係性、なれ合い

などで何となく受注できているケースや、
またそうやっている人が、若手にきちんと
教育ができていないが故に、どんどんと
顧客志向 ⇒ 自分志向 になり、
仕事が流れ作業のようになって、
「製品ありきの御用聞き営業」などが
増えていく。

■IT提案の場合

◆顧客が求めていること、困っていること
 などの課題が記載されていない。
 もしくは、課題の羅列をしているだけか、
 正確に理解されていない。
 <顧客側の感覚>
 ちゃんと課題を理解してくれているのか、
 それに向けた提案になっているのか、
 顧客側はわからない。
 同じ土俵に立ってくれているのか?

◆製品の細かい機能などの紹介部分を
 べたべた貼り付けた部分がほとんどで、
 それがどう役に立つのか、他との違いなど、
 訴求部分がない。もしくは使いまわし。
 <顧客側の感覚>
 なぜこの提案なのか、投資対効果もわからず
 上層部に説明できない。
 製品のアピールだけなら、他社から買う。
 
◆読みやすい書き方がされていない。
 特に多いのが文節の途中での改行。
 <顧客側の感覚>
 読みにくい。
 次の行に行くまで内容がわからない。
 (メールも同様)
 
 <例文>
 セキュリティレベル底上げのため、セキュリ
 ティインシデントの管理とそのワークフローの
 簡素化・自動化に取り組んでいます。その一
 環としてシステムを導入して必要な情報を集
 約。セキュリティ対策室の業務効率は大幅に改
 善され、インシデントの状況やステータスがよ
 り明確に把握できるようになった。

 これについては、以前提案書について
 まとめた記事にも記載したけれども、
 本当に多い。 

  たかが改行と考える人が多いのかも
 しれないけれど、そこに気が遣えない
 のにもっと細かい提案内容や契約などを
 顧客向けに詰められるとは思えない。

つまり、まとめると、
製品カタログを持って走っているだけで、
”提案”になっていないものが多い。

■別業界(保険)の場合

もちろんITに限らず、他の業界も例外ではない。

先日、実家の火災保険の更新のタイミングで、
以下の見積りと資料だけが送られてきた。
既存契約先は誰もが知る大手損保会社。

見積り

見積りには、プランの欄に
CやAというアルファベットが書いてある。

カタログ

カタログを見ると、プランは
ベーシックⅠやらⅡという記載がある。

もうこの時点で、この見積りとカタログの
対比がわからない。
見積りのCやらAは、ベーシックⅠかⅡ?
青色のマーカーは?でも内容が一致するか
読んでもよくわからない。

おまけにそのままの条件で更新しても、
現在の2倍以上の金額になっている。

担当営業に電話したところ、親会社の
システム上の都合で、プラン表記がそのように
なっていて、わかりづらいと言われても
どうしようもないの一点張り。

加えて、金額の倍増について何の説明もないと
いうと、何度か電話をしたというが、着信履歴も
なく、具体的な日時も提示されなかった。

必要な説明はされないのに、資料には
担当営業のプロフィール紹介が含まれている。
趣味だとか家族構成だとか。
要らない。

まずはきっちりと契約について説明するのが仕事。
それもせずに、倍以上の金額でさらっと
契約更新すると思ったのだろうか。

肩書は営業部長。
もちろん他社に切り替えたけれど、
こういうことがいろんなところで
行われている。

保険もITと似て、ややこしくなりがちな
内容であるが故に、わかりやすく明確に
説明する、提示する、その志向すらないと
営業も何も成り立たない。

■自分志向による結果

こういうことに何の疑問もないまま
流れ作業のように、モノを顧客の前に
差し出すことが中心になってくると、
遅かれ早かれ業績に影響が出てくる。

自分志向な流れ作業⇒売れない
⇒成長がない⇒やる気低下
⇒さらなる自分志向


というスパイラルが発生し、これが
全体の生産性も個人の将来性も低下
させていく。

逆に、

顧客の状況を考慮した提案をする、
そのような資料を作る、プレゼンをする
⇒結果が出る⇒やる気アップ
⇒さらに良い提案を行う⇒信頼される
⇒もっと相手に合う提案を行う

という良いスパイラルに入り、そのために
必要なスキルや知識を習得しようという
気にもなってくる。

リスキリングとかいう前に、まずは
「顧客志向」を徹底的に追及が
生産性もスキルもやる気も上げてくれる、
仕事は人のためにするものだから、
と考えています。


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