カイゴはツライ?第12話~勉強ってやっぱり大事!
採用から1年が経ち、仕事に慣れたせいか、日々の業務がラクに感じられるようになってきた。ユリは自分なりのペースで仕事ができるのでやりやすいと思う一方で、これで本当にいいのだろうかという不安が常にあった。自己流ではなく、ちゃんとした介護の知識と技術が必要なのだということはわかっていた。国家資格である介護福祉士の資格取得のため、介護について体系的に勉強をしてみようかとも思ったが、受験するには3年の実務経験が必要なのだ。気持ちは焦るがこればかりはしょうがない。勉強には目標がないと継続は難しい。ユリは職安の訓練仲間が言っていた、福祉住環境コーディネーターという資格を思い出した。調べてみると受験資格というものがなく、どんな人でも受けられることがわかった。受験日まであまり時間はなかったが、3級2級の同時受験に挑戦してみることにした。さっそく商工会議所からでている公式テキストを購入して読み始めた。だが、保育士養成校を卒業して以来、勉強などすっかりご無沙汰のユリにとって、文字の羅列ばかりの堅苦しいテキストは全く頭に入らず、数行読むと眠気が襲ってきた。高い値段のテキストだったが、出版社からでている「マンガでわかる~」シリーズに切り替えた。テーマは同じであるにもかかわらず、公式テキストに比べ格段にわかりやすかった。3~4ヶ月間毎日30分から1時間程度勉強することが日課となった。ユリが不得意とする医療も最低限の知識を得ることができた。建築や設計など、まったく始めての分野もあり、とても興味深い内容だった。フロアの面積や車椅子、テーブルのサイズなど、それまで気にもかけていなかったのだが、あらためて、利用する人にとってどうかといった視点で見るようになった。勉強のかいあって、3級2級ともに合格することができた。受験会場では、制服を着た高校生や、かなりの年配者も見られた。この資格を取得するのは、介護従事者よりも、住宅改修業務に従事する人が多いようで、そのせいかもしれない。なにはともあれ、ユリにとって介護関連の知識を得たことはよい励みになった。惰性に流されていたような日々の業務にも張り合いが出てきた。
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