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Game Over (2)

Game Over (1)は改題して、A piece of rum raisin 第 20 章 第三ユニバース:神岡鉱山(1)に。A piece of rum raisin 第 21 章 第三ユニバース:神岡鉱山(2)

・・・やがて、世界各地で、低緯度地方にまで空にオーロラがあらわれるようになった。この続きです。

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第 21 章 第三ユニバース:神岡鉱山(2)
2025年9月8日(月)

地下650メートルのハイパーカミオカンデのコントロールセンター。小平と加藤恵美は、東大院生の神谷と吉田とともに、地上の研究棟にいるスタッフ12、3名を待っていた。ZOOMで交信中のCERN(セルン)の島津洋子とアイーシャ、高エネルギー加速器研究機構の宮部明彦、森絵美、JAXAの湯澤研一は待機していた。

「フフフ、小平先生、みんな、私が若い頃に聴いたドアーズの『The End』が聞こえますわ。陰鬱なジム・モリソンが歌ってましたわね。でも、私、『もう、これで終わり』とは思えませんのよ。私たちの分身、第一、第二にいる類似体がおめおめとこの第三ユニバースが壊滅するのを黙ってみていられるもんですか。彼らがなにかしますわ。アッと驚くことを。私は、私自身を、私たち自身を信じます。最後まで諦めません・・・でもねえ、結婚してみたかったな。自分の子供を持ちたかったわね」とメグミは小平とタブに映っている五人に話しかけた。「まったく、かくも優秀な素粒子物理学者、天文物理学者が、小平先生を筆頭にみんな独身なんて、人類にとって損失だったわね」

「メグミくん、まあ、この期に及んで子孫の話かね。独身で良かったんだよ。子供や孫がいれば、その心配までせにゃあならんところだ」頭をかきかき小平が言った。

「あら、小平先生、今からでも私相手なら子作りできますことよ?」「何を言ってるんだね、メグミくん」「まあ、人生最後にすることはセックスじゃあありませんからね」

「あ!そうだ。島津くん、アイーシャくん、LHCのトンネルに逃げ込むなら、106メートルの地下だからガンマ線の電磁波と太陽からくる電磁波は防げるが、非常電源も何も切れるぞ。地上のヘリウムの冷凍機がはおしゃかだ。超電導が切れてクエンチが起こる。LHCは8セクターだったな。1セクターあたり保有するヘリウムは15トン。合計120トン。どれだけクエンチで流出するかわからんが、コライダーのトンネル内はヘリウムで充満するだろう。『ビッグバン・セオリー』のシェルドンがヘリウムガスを吸い込んでキンキン声になったレベルの量じゃない。あれば酸素マスクを装着、トンネル内では立ち上がっちゃいかん。腹ばいにならないと、トンネル上部に滞留するヘリウムを吸い込むぞ」

「酸素マスクは研究室からひっつかんできましたよ、先生」とアイーシャが言う。「いつまで保つかわかりませんけどね。カミオカンデは十数名ですが、セルンは何千人避難してくるのかわかりませんわ。食料もないし、どうしようもないでしょう。出来得る限り生き延びる努力はいたしますけど」

「ああ、頑張ってくれ。メグミくんが言ったが、われわれの分身、第一、第二にいるわれわれの類似体がおめおめとこの第三ユニバースが壊滅するのを黙ってみているわけがないじゃないか。そのことを信じて生き延びる努力をしよう」
「小平先生、私と宮部くんはKEK-Bのトンネル内に逃げました。LHCよりも浅いですが、構造体があります」と絵美が言った。
「私もJAXA宇宙科学研究所の研究棟の地下にいます。気休めですが、遮蔽物がなにもないよりマシでしょう」と湯澤が言った。

「みんなは生活物資がないなあ。困ったもんだ」と小平。

「メグミが言うように私たちの分身がなにかしてくれるでしょう」と宮部が言う。

「それを信じよう。おお、そうだ」と小平が院生の神谷に「地上部隊が来たら、地上との高圧線をいつでも切れるように遮断器に数名配置だ。それから斧を探して、遮断器を落としたら、遮断器の下流側の高圧電線をたたっ斬れるようにしよう。電線がつながっていると、電磁波が伝搬しないとも限らない。非常電源の発電機の燃料も確認してくれ。いつでも起動できるように。光電子増倍管は非常電源では15%程度しか稼働できまい。千鳥でブレーカーを落として、15%くらいが稼働できるように設定しよう。光電子増倍管がないよりもマシだろう。最後まで観測は続けたい」

十数時間、小平たちは生き延びようと無駄な努力を続けた。日本は地球という惑星の夜面に入っていた。ニュートリノの飛来に続いて、十数時間遅れでガンマ線バーストのショートバーストが地球を襲った。それはコンマ数秒という短い時間だったが、太陽が発する電磁波エネルギーの数年分が一時に地球のバンアレン帯を破壊し、オゾン層を剥ぎ取った。その時、地球の昼面にあった北米大陸では、バンアレン帯もオゾン層もなく、太陽からの電磁波を直接浴びた。空を飛ぶ鳥は舞い落ち、地表から十数メートルの地表の生物は大部分が死滅した。続いて、ロングバーストが襲来した。残ったオゾン層もほとんど消えた。

北米大陸だけではなく、夜面にあった欧州大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、日本、オセアニア各国の電力グリッドが消失した。電子・電気部品を載せた機器は使用不能となり、あるものは火を発した。

(上の動画はガンマ線バーストとは関係ありませんが一見の価値あり)

大気中のオーロラは、太陽風のプラズマが低緯度地域まで高速で降下し、酸素原子や窒素原子を励起させ、燃え盛った。北欧神話もラグナロクもこれほどではあるまい。

スイス、ジュネーブのセルンでは、クエンチ発生の超電導破れで60トンの液体ヘリウムが600倍に気化した。島津とアイーシャはそれを生き延びた。

北米から太平洋、オセアニアと地球は時点で昼面に移っていく。ハイパーカミオカンデが地下650メートルにあるとはいえ、日本列島が昼面になった時が、自分たちの最後と小平は思っていた。

「メグミくん、もうイカンようだな。今までどうもありがとう」と小平はメグミに言った。「小平先生、いままでご指導くださって、ありがとうございます。分身でもどうしようもなかったんですね。残念です」とメグミも小平に言った。

そして、二人はブラック・アウトした。

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第 22 章 第三ユニバース:高エネルギー加速器研究機構(6)
第三ユニバース:CERN(セルン)(2)
2010年5月11日(火)

記憶がドンと音を立てて脳内に堕ちるわけがない。そんなことはありえない。しかし、2010年からGRBの起こった2025年までの記憶、それに第一ユニバースからの記憶が、筑波の高エネルギー加速器研究機構に集まっていた小平、宮部、湯澤、森、加藤とセルンの島津とアイーシャに転移した。

そんなバカなことはありえない。記憶転移装置に入っているわけでもなく、生身の人間に直接記憶が転移されるわけがない。しかも、異なるユニバースではなく、一部の記憶は、同じ第三ユニバースのものなのだ。

記憶転移装置のある部屋に行くのだ

小平の頭に自分の声が響いた。「諸君、記憶転移装置のある部屋に行こう。こっちは通信回線を保つ。メグミくん、タブレットでいいから、こことセルンの回線を保持して、タブを持って装置部屋に行くんだ。島津とアイーシャはそのまま待機していてくれ。会話はタブからの通信で聞こえるだろう」
五人は記憶転移装置のある部屋に入った。装置は誰がオンしたのか稼働していた。そして、装置のスピーカーから小平の声がした。

「そちらの、第三のわし、聞こえるか?わしは第一ユニバースのおまえだ、小平だ。こっちは、宮部、湯澤、森、加藤、島津とアイーシャ、それに岬くん、南禅くん、羽生くんもおるぞ。間に合ったのかね?どうなのかね?応答してくれたまえ」と確かに小平だと思われる人間が話した。

「私は小平一平だ。キミも小平一平なのか?」
「こりゃあ、どうにも自分が自分に話しかけるなど驚天動地だ。今、そちらは西暦何年だ?」
「こっちは西暦2025年・・・じゃない、2010年だ」
「こちらも同じく2010年だ。そっちとこっちで生まれ年が違うからな。こっちは64才になっとる。そっちは・・・え~、52才だろう?わしのほうが年上じゃ」
「おいおい、これはどうなってるんだ?こっちはさっぱりわからんぞ」
「そりゃあ、そうじゃろう。2025年から全員引き戻したんだから。2025年じゃあGRBには間に合わんからな。だから、記憶を15年引き戻した。こちらは、80年代から準備を始めて、記憶転移装置も完成させた。そちらの湯澤くんとアイーシャくんの物より改良したんだ。だから、転移装置ー人間のこの苦痛を伴う転移もこれが最後だ。装置がなくても今回のように2025年から2010年に転移可能なのだ。それから、このおしゃべりしている通信もそうだが、転移装置ー転移装置間の記憶データや技術データの送信が可能だから、もう頭に無理やり類似体の記憶を突っ込まれることもなくなる」
「よく聴いてくれ。こちらは、ついに、新国連の組織化を達成した。水爆搭載のICBM6,000発が発射準備段階に入っている。水爆の弾幕でGRBが防げれば良いんじゃが。そちらも、こちらが送るデータで、そちらの機能しない国連を解体して、新国連の元、水爆の弾幕が張れれば、GRBも防げるじゃろう。なあに、2025年まで15年もあるのだ。まだ、間に合う」

第三の高エネルギー加速器研究機構にいる五人とセルンの二人は、互いに顔を見合わせた。

メグミが言った。「ほおら、御覧なさい。私たちの分身、第一、第二にいる類似体がおめおめとこの第三ユニバースが壊滅するのを黙ってみていられるもんですかって、言ったでしょう?その通りになったわ」
するとスピーカーから同じメグミの声で、「あら、そちらの私も元気みたいね。結婚できたの?」と言った。
「残念でした。こちら第三はみんな独身よ」
「どうしようもないわね。みんな結婚に縁がないのかしら。まあ、こっちもみんな結婚はしてないけどね。できちゃった、はあるけど」

「ちょっと、メグミくん、そういう話は後にして」と宮部が割って入った。「そちらの小平先生、第二はどうなったんですか?」
「ああ、第二はな、こっちの観測だと、大丈夫なんだ。すべてのユニバースで、同じGRB現象が起きるとは限らん。不幸にして、第一と第三は、ペガスス座IK星A のGRBの直撃方向にあったんだが、第二は太陽系の位置が多少違っていて、ペガスス座IK星A のGRBは起こるんだが、直撃コースからはずれているんだよ」
「ほ、本当ですか?」
「たぶん、この観測結果は正しい。だから、第一も第三も第二も助かる公算が高いのだ。まだ、水爆の弾幕が有効かどうか、余談を許さないがな。まあ、苦労したよ。話すと長くなるが、こっちの第一では・・・」 

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おまけ

メグミがKEKの記憶転移装置のある部屋にソォーッと忍び込んだ。明彦に邪魔されて、あっちの私とお話できなかったのだ。無念である。それで、むこうの小平先生のなが~あい話が終わった後、むこうのメグミにテキストメッセージを流したのだ。3時間後にお話できない?って。

むこうのメグミも「大丈夫だよ!」と返信してきた。39才であろうと、21才であろうと、むこうのメグミは52才だっけ?三つ子の魂百まで、なんだわよ。

記憶転移装置は電源を落とさないように取り決めた。いつ緊急の連絡があるかわからないからだ。メグミは、テキストメッセージで、むこうのメグミに「メグミ、いる?」と送信した。「いるわよ。大丈夫、だれもこっちにいないわよ」とレスが返ってくる。「わかった。スピーカーとマイクをオンするね。ボリューム落として」「ラジャー!」

「もしもし?そっちのメグミ?」と第三の39才のメグミがマイクに話す。
「あ!私の別のメグミ、こんばんは」と第一の52才のメグミ。
「さすが、分身、気が合うわね?」と第三のメグミ。
「ベースが一緒だからね。いくつになっても」と第一のメグミ。
「あのね、さっき気になること言っていたじゃない?」と第三のメグミ。
「なになに?」と第一のメグミ。
「あなた、言ったじゃない?『こっちもみんな結婚はしてないけどね。できちゃった、はあるけど』って。誰が誰の子供をできちゃったの?気になって、気になって」と第三のメグミ。
「うふふふ、知りたい?」と第一のメグミ。
「もちろんよ、知りたい!」と第三のメグミ。
「あのね、それはね、私。私よ」と第一のメグミ。
「え?私?」と第三のメグミ。
「いや、だから、私!あなたじゃないでしょ?」と第一のメグミ。
「わかったから、焦らさないで、教えてちょうだい!誰の子供なの?」と第三のメグミ。
「へへぇ~、あのね、父親は明彦。洋子から分捕ってやったわ!安全日だって騙して、妊娠したのよ。もちろん、結婚なんて迫らなかったけどね」と第一のメグミ。
「さすがねえ、さすが私だわ。私もまだ39才だから高齢だけど妊娠可能ね?私もやっちゃおうかしら?」と第三のメグミ。
「あのね、第三の男女関係は知らないけど、私と明彦は記憶転移がある前から肉体関係にあったんですからね」と第一のメグミ。
「そうかあ、それじゃあ、状況はこっちと違うわね。悔しい!」と第三のメグミ。

「それよりさ、そっちのメグミ、こちらは、ブッシュ家なんかのNWO(新世界秩序)を壊滅させたけど、そちらは手つかずでしょう?その問題をそちらの小平先生も明彦も気にしてなかったのが気になるのよ」と第一のメグミ。
「あ!そうか!そちらは1979年以来動いていたけど、こちらは放置したままだったのを忘れていたわ」と第三のメグミ。
「そうよ。早く手をうたないと。NWOが邪魔するわよ」と第一のメグミ。
「ラジャー!これは至急手を打たないと。こちらでも相談する」と第三のメグミ。「ところで、子供って女の子?男の子?」
「フフフフ、娘よ」と第一のメグミ。
「可愛いだろうなあ。今度写真送ってね」と第三のメグミ。
「送るわよ。私自身と話すって楽しい!」と第一のメグミ。
「うん、同感。じゃあ、交信終了!ありがとう!」と第三のメグミ。
「こちらこそ。お話できてありがとう。交信終了!」と第一のメグミ。

う~ん、さあて、こっちの新世界秩序をどうやって、ぶっ潰そうかしら?

The Doors - "The End", Live At Hollywood Bowl 1968

「ジ・エンド」は、ドアーズのコンサートの多くのフィナーレで演奏されました。歌詞は、1966年にロサンゼルスのウイスキーAゴーゴーナイトクラブで数ヶ月にわたってジャムスタイルのパフォーマンス中に歌われた違ったバリエーションの組み合わせです。この曲は、フランシス・コッポラの1979年の映画『地獄の黙示録』の象徴的なオープニングシーンで有名。

This is the end

Beautiful friend
This is the end
My only friend, the end

Of our elaborate plans, the end
Of everything that stands, the end
No safety or surprise, the end
I'll never look into your eyes again

Can you picture what will be?
So limitless and free
Desperately in need
Of some stranger's hand
In a desperate land

Lost in a Roman wilderness of pain
And all the children are insane
All the children are insane
Waiting for the summer rain, yeah

There's danger on the edge of town
Ride the King's Highway, baby
Weird scenes inside the gold mine
Ride the highway west, baby
Ride the snake, ride the snake
To the lake, the ancient lake, baby
The snake, he's long, seven miles
Ride the snake
He's old and his skin is cold
The west is the best
The west is the best
Get here and we'll do the rest
The blue bus is calling us
The blue bus is calling us
Driver, where you taking us?

The killer awoke before dawn
He put his boots on
He took a face from the ancient gallery
And he walked on down the hall
He went into the room where his sister lived, and then he
Paid a visit to his brother, and then he
He walked on down the hall, and
And he came to a door
And he looked inside
"Father?" "Yes, son?" "I want to kill you"
"Mother? I want to..."

Come on baby, take a chance with us
Come on baby, take a chance with us
Come on baby, take a chance with us
And meet me at the back of the blue bus
Of the blue bus, on the blue bus, on the blue bus
Come on yeah
Fuck, fuck-ah, yeah
Fuck, fuck
Fuck, fuck
Fuck, fuck, fuck yeah!
Come on baby, come on baby
Fuck me baby, fuck yeah
Woah
Fuck, fuck, fuck, yes!
Fuck, yeah, come on baby
Fuck me baby, fuck fuck
Woah, woah, woah, yeah
Fuck yeah, do it, yeah
Come on!
Huh, huh, huh, huh, yeah
Alright
Kill, kill, kill, kill, kill, kill

This is the end
Beautiful friend
This is the end
My only friend, the end

It hurts to set you free
But you'll never follow me
The end of laughter and soft lies
The end of nights we tried to die
This is the end

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