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原詞と訳詞、結構違うぞシリーズ:恋のサバイバル

あけましておめでとうございます。本年も布施明色全開でいきますので、よろしくお願いいたします。

今回は、私が大好き「恋のサバイバル」のお話。まずはこちらをご覧ください。

↑の動画は「8時だよ全員集合!」で歌われた時のものです。私の好きな動画ベスト3に入ります。(2022年1月1日現在)もうとにかくかっこいい。

こちらの曲のオリジナルはグロリア・ゲイナー(Gloria Gaynor)の“I Will Survive”という曲。1978年にリリースされています。

そして日本語版は1979年にリリースされました。これは布施さんご自身が日本語訳詞をつけていらっしゃいます。リリース直後の直後の映像・歌唱が一番好きですが、割と最近でもライブで歌われているので(メドレーの中でが多いですが。フルで聴きたいファン心)布施明ご本人もきっとお好きな一曲。

これを最初に聴いて元が洋楽と聴いた時、驚いたのを覚えています。なぜなら歌詞がすごく日本人に響く歌詞だと感じ、日本語がオリジナルと思っていたからです。

それで原曲の英語を見てみたら、意味だったり構成が日本語と結構違うんです。なかなか思い切った訳詞をするなー!と感心してしまったので、今日はそのあたりをみなさんにもぜひ感じていただきたいと思います。

まずは、英語と、英語の歌詞をそのまま訳したバージョンを見てください。

オリジナル(英語・意味訳(直訳))

こちら、ブログで英語と対訳を書いてくださっている方がいらっしゃいましたので引用させていただきます。オリジナル曲を聴きながらぜひ見てみてください。(ちょっと長いです。)

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At first I was afraid, I was petrified
最初は恐怖のあまり 凍りついた

Kept thinkin' I could never live without you by my side
あなたが傍にいないと 生きていけないと思ってた

But then I spent so many nights thinkin' how you did me wrong
でも あなたに受けたひどい仕打ちを思い返しながら 夜を重ねるうちに

And I grew strong, and I learned how to get along
私は強くなった 乗り越えるすべを身につけたの


And so you're back, from outer space
あら 宇宙からのご帰還ってわけね

I just walked in to find you here with that sad look upon your face
家に帰ると 悲しい顔をしたあなたが待ってた

I should have changed that stupid lock
鍵を変えとくべきだったわ

I should have made you leave your key
もしくは あなたの鍵を取り上げればよかった

If I'd have known for just one second you'd be back to bother me
そしたら あなたが戻ってきて 私を煩わすこともなかったでしょうに


Go on now, go, walk out the door
さあ 行って ドアを開けて出てって

Just turn around now, 'cause you're not welcome anymore
引き返して あなたはお呼びじゃないのよ

Weren't you the one who tried to hurt me with goodbye?
別れを切り出して 私を傷つけようとしたのは そっちじゃなかった?

Did you think I'd crumble? Did you think I'd lay down and die?
私がボロボロになって 倒れて死ぬとでも思った?

Oh no, not I, I will survive
いいえ 大間違いよ 私は生き抜く

Oh, as long as I know how to love, I know I'm still alive
人を愛することができるかぎり 私は生きていける

I've got all my life to live, and I've got all my love to give
人生はこれからだし この心は愛に満ち溢れている

And I'll survive, I will survive
私は生き抜く 生き抜いてみせるわ


It took all the strength I had, not to fall apart
壊れてしまわないよう 全力を尽くした

Just tryin' hard to mend the pieces of my broken heart
粉々になったハートのかけらを かき集めて直そうとした

And I spent oh so many nights just feeling sorry for myself
みじめな夜を 幾度となく明かしてきたわ

I used to cry, but now I hold my head up high
たくさん泣いたけど 今はしっかりと顔を上げる

And you see me, somebody new
あなたの目の前にいるのは 新しい私

I'm not that chained up little person still in love with you
束縛されても あなたが好きだった 哀れな女じゃないのよ

And so you felt like droppin' in and just expect me to be free
私が暇してると思って 立ち寄ってみたんでしょうけど

Well now I'm saving all my lovin' for someone who's lovin' me
私の心は 私を愛してくれる他の誰かに捧げると決めたから


*Go on now, go, walk out the door
*さあ 行って ドアを開けて出てって

Just turn around now, 'cause you're not welcome anymore
引き返して あなたはお呼びじゃないのよ

Weren't you the one who tried to break me with goodbye?
別れを切り出して 私を痛めつけようとしたのは そっちじゃなかった?

Did you think I'd crumble? Did you think I'd lay down and die?
私がボロボロになって 倒れて死ぬとでも思った?

Oh no, not I, I will survive
いいえ 大間違いよ 私は生き抜く

Oh, as long as I know how to love, I know I'm still alive
人を愛することができるかぎり 私は生きていける

I've got all my life to live, and I've got all my love to give
人生はこれからだし この心は愛に満ち溢れている

And I'll survive, I will survive**
私は生き抜く 生き抜いてみせるわ**

*〜** 繰り返し

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※英詞、訳とも、以下より引用させていただきました。


では布施さんの訳詞はどうでしょうか。

布施さんの訳詞

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待ち続けていることに 疲れ果てたわけじゃないのよ

ただ楽しそうな愛のたわむれに 心が少し揺れるだけ

翔びかう心は 貴方の愛も忘れて踊るだけ

いつか冷めてたの 貴方も私も 

そうよ振り向いてなんて言わないわ


*Go on now go, walk out the door

どこへでも心の向くまま

別れの言葉探してた そう 貴方らしくもないわ

サヨナラ 平気だわ 涙なんて流したりしないから

女はいつも 明日という日が あるから あるから** Hey Hey


強がりだけで言ってると 思ったりしないで欲しいの

これは貴方へ ほんの贈り物

貴方の望みの暮し

本当の私は 浮かれた女 ひとつのところには

とてもいられる 訳などないわ

だから振り向いてなんて言わないわ

*〜**繰り返し

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歌詞は以下より引用し、繰り返し箇所は私の方で少し編集しました。

訳詞についての見解

まずオリジナルですが、主人公の女性は、ある男性が一緒にいないと生きていけないと思っていたが、過去に受けた仕打ちを想いそれは違うと気づき、訪ねてきた男を追い返しています。歌詞を読んだ印象だと、もうその男性には執着せずに、「次の人を探していくんだ、自分はこれから別の愛せる人を探すんだ」という決心の強さを感じます。ここに男性への未練はあまり感じません。あと、結構強い言葉を使っている印象です。"you're not welcome anymore(あなたはお呼びじゃないのよ)"など。まあここは、英語と日本語の表現の仕方のそもそもの違いの部分かも知れません。

一方で訳詞。女性が男性を振っているような形であることは同じですが、「愛のたわむれに 心が少し揺れるだけ」「振り向いてなんて言わないわ」「強がりだけで言ってると 思ったりしないで欲しいの」の部分に、男への未練がまだあるような歌詞にしています。「サヨナラ 平気だわ 涙なんて流したりしないから」にも、女性の強がりを感じます。

なぜ男性への未練を歌詞に残したのか。ここからは筆者の憶測ですが、日本で女性が男性を追い返すとか、男性に対して強い態度を取るような歌詞を入れることが、日本の社会ではそこまで受けないと布施さんが感じたからではないか、と考えています。なので、日本語版はある意味上品さがあるように思います。(オリジナルが下品という意味ではないです、念のため。)

1970年代、女性の社会進出も進んできていたとは思いますが、まだまだ結婚したら家庭に入るとか、女性は男性に従うものだ、という考えも強かった時代ではないでしょうか。そういう時代の中で、この曲のリズムに合わせて最大限イメージを伝えるためには、と考えてこのような歌詞になったのでしょう。

あとは、オリジナルより繰り返している歌詞が多いです。これも、日本での受けを考慮してのことと思われます。

普通訳をつけるとなると、原曲の詞を理解して、それをそのまま訳詞に反映しようとしがちな気がしますが、そこを日本という市場を考慮して、雰囲気は最大限生かしたままにガラッと変えられるところに、布施さんの才能を感じます。

余談

なお日本語版は、別に麻生よう子さんが歌う「恋のサバイバル 2」が存在します。詳細は省きますが、↓を見ると、女性が「自分が悪かった」と言わんばかりの歌詞で、原曲からかなり離れているのが見て取れます。

http://www.kget.jp/lyric/65398/%E6%81%8B%E3%81%AE%E3%82%B5%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%AB2_%E9%BA%BB%E7%94%9F%E3%82%88%E3%81%86%E5%AD%90

まとめ

いかがでしたでしょうか。私は「原曲と日本語版の訳の意味が一対である」と思っていたところがあるので、目から鱗でした。

デビュー以来、カンツォーネなどを日本語で歌ってきた布施さんだからこそできる訳詞だと思っています。

他にも布施さん訳詞の曲はたくさんあるので、取り上げていきたいと思います。それではまた。

もしご意見、ご感想、ご指摘があればぜひコメントいただければ幸いです!



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