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原詞と訳詞、結構違うぞシリーズ2: MacArthur Park(マッカーサーパーク)

初めて1987年のドラマティックコンサートを聴いて度肝を抜かれた曲。サウンド、布施さんの声がとにかくカッコ良すぎる。

そしてそのあと色々調べて、原曲は洋楽であること、訳詞は布施さんであることを知りました。

今回はオリジナルの歌詞と訳詞を比べつつ、布施さん版の訳について検証します。結構、違います。笑

英語版について

オリジナルはJimmy Layne Webbという方が作詞作曲され、Richard Harrisが歌ったバージョンが1968年にリリースされました。Billboard Hot 100では最高2位を記録。

その後様々なアーティストにカバーされています。1969年には Waylon Jenningsという方がカバーしたものがグラミー賞を受賞、そして1978年にDonna Summerが歌ったものがBillboard Hot 100 disco arrangementで1位になったそうです。(以上、Wikipedia調べ)

なおこの曲は、音域的に歌うのが難しいこと、そして歌詞が難解であることで知られているようです。

というわけで、まずは英語版の歌詞と意味を見てみましょう。

英語版の歌詞と意味

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Spring was never waiting for us dear
It ran one step ahead
As we followed in the dance

春は私たちを待ってはくれず
私たちの一歩前を走ってた
ダンスしながら私たちは追いかけてたの...

Between the parted pages and were pressed
In love's hot, fevered iron
Like a striped pair of pants

分かれたページの間に私たちは押し付けられた
愛の 熱く熱されたアイロンで
まるでストライプのズボンのように...

MacArthur's Park is melting in the dark
All the sweet, green icing flowing down
Someone left the cake out in the rain
I don't think that I can take it
'cause it took so long to bake it
And I'll never have that recipe again
Oh, nooooo

マッカーサー・パークは闇に溶け込んでいた
優しい緑色の氷のような風が吹き降ろす
雨のなか誰かが忘れたケーキが置かれてる
そのケーキ 私は食べたくはないわ
だって焼くのにはとても時間がかかるから
作り方のレシピは二度と手に入ることもない
ああ なんてこと...

I recall the yellow cotton dress
Foaming like a wave
On the ground beneath your knees
The birds like tender babies in your hands
And the old men playing
chinese checkers by the trees

想い出す 黄色の綿のドレスを
すそが波のようになっていた
地面のうえ あなたのヒザの下あたり
あなたの手のなかには
可愛い赤ちゃんのような鳥たちがいて
お年寄りたちは木のそばで
ダイヤモンドゲームをやっていた

MacArthur's Park is melting in the dark
All the sweet green icing flowing down
Someone left the cake out in the rain
I don't think that I can take it
'Cause it took so long to bake it
And I'll never have that recipe again
Oh, nooooo

マッカーサー・パークは闇に溶け込み
すっかりと優しい緑色の氷のような風が吹き
雨のなか誰かが忘れたケーキが置かれてる
でも私はそのケーキを食べたくはない
焼くのにはとても時間がかかるし
作り方のレシピは二度と手に入らないの
ああ なんてこと...

There will be another song for me
For I will sing it
There will be another dream for me
Someone will bring it

私には他の歌があるのよ
だから私は歌を歌う
私には他の夢があるのよ
誰かが持ってきてくれるのよ

I will drink the wine while it is warm
And never let you catch me looking at the sun
And after all the loves of my life
After all the loves of my life
You'll still be the one.

ワインを飲むの まだ温かいうちに
あなたには私をつかまえさせない
私が太陽を見ているときに
私の人生をかけた愛
私の人生をかけた愛を通じて
あなたはずっと特別なひと

I will take my life into my hands
and I will use it
I will win the worship in their eyes
and I will lose it

私はこの両手に人生をつかむのよ
そして自分の人生を歩んでいくの
私はみんなの瞳のなかに敬愛を勝ち取るわ
そしてそれは失うことになる...

I will have the things that I desire
And my passion flow like rivers through the sky.
And after all the loves of my life
After all the loves of my life
You'll still be the one.
And I left myself why.

私は自分が欲しいものを手にするの
そして私の情熱は流れ出す
空へと続く川のように
私の人生をかけた愛
私の人生をかけた愛を通じて
あなたはただ一人の大切なひと
なぜだかわからないまま…

MacArthur's Park is melting in the dark
All the sweet green icing flowing down
Someone left the cake out in the rain
I don't think that I can take it
'Cause it took so long to make it
And I'll never have that recipe again
Oh, nooooo

マッカーサー・パークは闇に溶け込み
すっかりと優しい緑色の氷のような風が吹き
雨のなか誰かが忘れたケーキが置かれてる
でも そのケーキを私は食べたくない
ケーキを焼くのにはとても時間がかかるのよ
そして作り方のレシピは二度と手に入らない
ああ なんてこと...

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※上記の歌詞・和訳は以下より引用させていただきました。

抽象的な表現が多い印象ですが、歌い手(主人公)が恋人と別れ、自分の求めるものへ向かっていくことへの決意を歌っているように感じます。

また、上に引用した訳詞ではドナ・サマー版に合わせてか、日本語訳は女性目線ですが、英語的に見ると男性女性どちらが主人公でもいける感じがします。(he、sheといった性別の明記がないため)なので歌い手によって印象が変わる面もあるかと思われます。

よろしければ曲も下記から聴いてみてください。(2022年1月10日時点。リンクが無効などあればコメントからお知らせください。)

では次に布施さんの訳詞を見てみます。

布施さん訳詞

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白い壁を眺め 消えた君の写真
想いうかべても 埋める事など出来はしない
広いスペースに 悲しみがうかぶ

※確かな愛を求めて 女は旅をするのか
男はそれをながめ 溜息をついて
自分をせめて 背中で告げるのか
Good-bye, oh no

幾つ愛に悩み 幾つ孤独に耐えて
終幕(おわり)が来るのか
人間(ひと)は傷つけ合う数だけ 想い出をつくり
涙 ながすのか

※繰り返し

優しさだけでは 愛せない
飾りだけでは ひからない 
愛に道標(みちしるべ)がないのは知っていたけれど
ただ大人らしく別れの言葉を言いたかった

話しだけでは 信じない 
抱いただけでも 咲きはしない 
愛に道標(みちしるべ)がないのは知っていたけれど
ただ大人らしく別れの言葉を言いたかった
せめて君だけには

※繰り返し

いつか (いつか)
君の香りも (あなたの癖も)  
の部屋から消え (消えて) 
さる夜に (あー) 
一人 (ひとり) 
街をぶらつき (自分にかえる) 
つかの間の愛を (辛さが) 
探すだけ (あなたを呼ぶ)

※※君の白い肌に落ちたあの涙は 
今は乾いても
おれは背中にだけ残る爪あとから
君の事を想う

いくら (今も) 
時間が過ぎても (忘れられない) 
心の中で (あなた)
君 求め (あなた あなた) 
どんなに (そうね) 
離れていても (できる事なら) 
君の幻 (すぐに)  
追いかける (もどりたいけど)

※※繰り返し
※繰り返し

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こちらはCD「AKIRA FUSE  ドラマティックコンサート "秋を着飾る以前(まえ)に…詩"」の歌詞リーフレットより引用しました。

かなりガラッと変えられているのがわかりますでしょうか。マッカーサーパークの記述もないし、ケーキもない。

歌唱画像は下記リンクから見ることができます。(2022年1月10日時点。)

訳詞への印象

英語バージョンは、別れを経てのその先の人生への決意を示すような歌詞だと思います。布施さんバージョンは、その英語バージョンで言わんとされていることをベースにしつつ、日本語だと伝わりづらくなりそうな比喩的表現はバッサリとカットし、相手の女性への想いを表現する歌詞を入れられたのだなと感じました。

恋のサバイバルと同様に、具体的な情景の描写はそれほど入れずに、心情を表す言葉を入れていっていますが、メロディーとの合わせ方、言葉の選び方が天才的にうまいと思います。元々日本語の曲ですか?といつも思わされます。

布施さんがこの曲を歌った頃の背景と解釈

ここからはかなり憶測を含みます。

布施さんがこの曲を歌ったのは1987年のドラマティックコンサート。CD音源になっているのは、その年の9月21日、24日の青山劇場での公演。(MaC Arthur Parkはどちらの日のものなのか、ちょっと分からないので情報求む。)

以前下記でオリビアさんとのことを検証しましたが、そこでも書いた通り、1987年10月までにはお二人は離婚される方向に話を進めていたと思われます。

なのでおそらく、87年あたりの時期は布施さんご自身もオリビアさんと別れることになるかも、という思いがあったのではないかと推察します。

それを踏まえると、私にはこの曲の布施さんの訳が、オリビアさんとの別れを予期して、オリビアさんへの想いを書かれたものに思えてならないのです。

途中に、オリジナルにはないコーラスで女性側のセリフを歌詞で入れているのも、オリビアさんとの話し合いからアイデアを得たのではないか、そしてその話し合いの末に、二人は別れを決意したのではないか…と聞くたびに考えてしまいます。

(ただ、もしこの曲をこの歌詞で1987年より前に歌われていた場合は、また違う解釈が必要になってくると思われますので、もしそのような情報があればご一報ください。)

そう考えて読むと、この歌詞は布施さんのオリビアさんへの想い、そしてご自身が極めたかった音楽の道への想いとの葛藤が感じられる作品ではないでしょうか。

あとこれは余談ですが、マッカーサーパークは布施さん・オリビアさんが住まわれていたロサンゼルスにある公園なので、もしかしたらお二人で行ったこともある思い出の地なのでは…などと思ったりします。こればっかりは妄想の域を出ませんが。

まとめ

布施さん版 MacArthur Parkは、布施さんのオリビアさんへの想いを表現したものだという仮説をお話ししました。

あくまで一つの説ですので、もしもいやこういう解釈もある、ですとか、ここは事実と違くないか、ということがありましたら、ぜひコメントにてご教示いただければ幸いです。


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