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ゲームの日中韓翻訳対応・こぼれ話

前口上:愛のないローカライゼーション

前回はB2Cの展示について書きました。

今回はB2Bの展示の話のつもりでしたが、チームにとってのホットトピックということで、台北ゲームショウの準備から少し脱線して、ゲーム開発寄りの話です。


英語フォント→日本語フォントの落差

日頃様々なゲームをプレイする中で、職業柄(デザインもやっています)、ゲーム内で使用されているフォントについ目が行ってしまいます。
大抵はゲーム開発者の母語で使用されているフォントが一番いい感じなので、英語で開発されたゲームであれば、英語で遊ぶことも多いです。
しかしストーリー要素やセッティングが多くなると自然と読まされる文字量も増えるため、仕方なく日本語に切り替えることもあります。

最初から日本語でプレイしていたら気にならないのかもしれませんが、英語でプレイしていた時には丸みを帯びた可愛らしいフォントや、太めのバキバキのゴシックフォント、あるいはドットフォントが、日本語に変更した瞬間に無機質な角ゴシックになってしまうと、どうしても興醒めしてしまいます(もちろん角ゴシック自体が悪いわけではありません)。

海外の視点に立つと、英語フォントの方が用意する字体の種類が少ない分フリーフォントも圧倒的に多く、逆に日本語フォントは種類が少ない上に情報にもアクセスしづらく、対応がうまくいかないのは分かります。
とはいえ、せめて丸ゴシックに…!ボールドに…!ドットフォントは割とオープンソースのいいのあるし…!と毎回身悶えしてしまいます。
(逆に感動することもある、Undertaleとか)

よく見ると字体が変…?

また中国語フォントが使われているのか、微妙に字体が異なっているケースも定期的に見ますが、これもある程度体力があるスタジオが作っているゲームだと(誰もネイティブチェックを入れなかったのか…)とガッカリしてしまいます。

機械翻訳で言葉が変+文字列が長すぎてボタンからはみ出している+フォントがダサい字体が変、が揃うと本当に辛いです。

本題:でも愛には労力がかかる

というわけで、散々文句を並べた以上、自分達のゲームでは可能な限り避けられればと思い、翻訳フォントの二つの方面で対応を試みました。

翻訳

今回、翻訳はアクティブゲーミングメディアさんに依頼しました。(PR記事ではありません!)

インディーゲームも含めた多くのゲームを翻訳されている大手であり、良心的な金額で翻訳+内容チェックまで行なっていただける、とのことで託しました。
リズムゲームなので、翻訳が必要な文字数が比較的少ない(ゲーム内・実績合わせて800文字いかない)ことも外注した理由の一つです。
今回は、ゲーム内の文言(日本語)を別途スプレッドシートに手動抽出し、該当するページのスクリーンショットと合わせて提出しました。

これにより翻訳自体の質を高めつつ、画面内の領域なども意識した内容となるのではないか、と期待しての行動です。
まだ翻訳結果の反映が途中のため、結果については別途振り返りで書けたらと思いますが、DeepLを使って確認した範囲では、元のニュアンスをそれなりに汲み取っていただけているのではないかと感じました。

ちなみにBEAT AIMER!は2月の正式リリースの時点で日本語・英語の2言語対応でしたが、こちらはチームメンバーが英語に堪能だったため、自力で翻訳しています。(より正確には、英語→日本語の順で翻訳しました)

フォント選び

前口上で散々管を巻きましたが、実際のところフォントを用意する側となると、様々な困難があるものです。

BEAT AIMER!のこれまでのフォント事情を公開すると、

  • タイトルロゴ Phosphateを使用

  • ゲーム内など

    • 英語 Kumbh Sansを使用

      • AvenirやFuturaのような雰囲気のフォント。

      • Google Fontsで入手可能。

      • オープンソースなのでもちろん商用可能。

    • 日本語 Noto Sans JPを使用

      • 言わずと知れたフォント(細かい話は後ほど)。

      • Google Fontsで入手可能。

  • 印刷物など

    • 英語 Kumbh Sansを使用

    • 日本語 ヒラギノ角ゴシックを使用

      • Macに付属。こちらも有名フォントなので詳細略。

      • フォントの太さのバリエーションが豊富・Phosphateと合わせた時の印象で選択。

Phosphate
Kumbh Sans

と、Phosphateの雰囲気を意識しつつ、なるべくフォント数は増やさず、確実に商用利用が可能で、可読性も担保され、デザイン性も高いものを選んでいました。

なので、逆に言えば冒頭に挙げたような超個性的なフォントは無く、翻訳対応も(Noto Sansで探せば楽勝!)と思っていました。

サブフォントファミリーでうまくいく…と思うじゃん?

これは、ゲーム内の日本語対応を担当してくれたメンバーから教わった話ですが、Unreal Engineには「サブフォントファミリー」という機能があり、カルチャー(言語)ごとに適切なフォントを指定することが可能になっています。詳しい方法はこちらをおすすめします。

こちらと同様に日本語はすでにサブフォントファミリーを使用してフォント対応してあり、今回追加で翻訳した中国語(簡体字・繁体字)・韓国語も同様の設定をするため、以下を追加しました。

  • 中国語(簡体字) Noto Sans SC

  • 中国語(繁体字) Noto Sans TC

  • 韓国語 Noto Sans KR

これでめでたしめでたし…!と思いきや、問題が。

ゲームの設定画面で、言語選択を切り替えるドロップダウンがあるのですが、そのドロップダウン内に表示されるテキストの一部が文字化けする事態が発生しました。

中国語(簡体字)を選択している時に、韓国語は文字化けしてしまうし、日本語も字体が異なる

ドロップダウンに適用できるフォントはその時選択されている言語に対応したサブフォントファミリーに準じたものとなるため、たとえば日本語を選択している際にドロップダウン内の別言語表記が文字化けしてしまうのです…(中国語(簡体字)を選択している時に、韓国語は文字化けしてしまいますし、日本語も字体が異なります)。

Noto Sans = Source Han Sans = 源ノ角ゴシック = 思源黑体 !?

翻訳内容の反映を担当してくれたメンバーから文字化けの報告を受けつつ、私は展示用の印刷物で使用する中国語(繁体字)フォントをAdobe Fontsで検索していました。
とりあえず、角ゴシック体で良さそうなものを片っ端からダウンロードし、試す中で、自分がダウンロードしたはずの「Source Han Sans」が見つからない代わりに見覚えのない「思源黑体」があることに気づきました。
おや?と思ったままGoogle検索をかけた結果、
Noto Sans = 源ノ角ゴシック = Source Han Sans = 思源黑体 !?
最初3つはうっすら知っていたけど、マジですか…。
とりあえず、Wikipediaを読みます。

オープンソースのPan-CJK(汎-中日韓)フォントファミリー

源ノ角ゴシック - Wikipedia

「Pan-CJK(汎-中日韓)フォントファミリー」?

つまり日本語中国語韓国語を網羅したフォントがこの世界のどこかにある?というかAdobeかGoogleにある?

先ほどサブフォントファミリーで文字化けしたのは、そのフォントに対応しない字体が含まれているからです。なので、対応する字体が諸々含まれているフォントさえあれば、当座は解決する!と考えました。

Noto Sans CJKを探す旅

というわけで、早速Noto Sans CJK、もしくはSource Han Sans CJKがこの世にあると考え、探し始めます。
しかし…見つかりません
どちらもCJK-JPなど、CJKから各言語だけピックしたフォントしか配布していない様子です。なんで?
公式のGitHubも見ましたが、欲しいものがOTF形式では上がっていない様子でした。

諦めきれないで探し続けた結果、

ついに見つけました…!
ありがとうchinesefonts.org …!

普通にダウンロードしたらNoto Sans CJK Medium.otfが手に入り、無事文字化けを解消できました(他のウェイトも別ページにあります)。

すべての言語が表示できるように!

1/9 追記:Adobeにはあったけど…

Noto Sans = 源ノ角ゴシック = Source Han Sans = 思源黑体 ということは、まだ検索してない項目がありました…。
「源ノ角ゴシック CJK」と「思源黑体 CJK」です。
というわけで改めて検索したところ、Adobeにはこちらが…。

(おそらく)ブラウザ設定が日本語の方は、こちらのリンクを踏むと『源ノ角ゴシック CJK』というタイトルで表示されるはずです。実際、中韓日のすべてが入力するとプレビューできます。

紛らわしいのが、どうやら『源ノ角ゴシック CJK』のページは、URL末尾の"japanese"を”korean”にすると『Source Han Sans CJK Korean』になり、実態としては同じ内容のフォント(名称はそれぞれ異なる)がダウンロードされるのですが、ページは各言語に対応したものに変わるようです。
同様に、Source Han Sans CJK Simplified ChineseSource Han Sans CJK Traditional ChineseSource Han Sans CJK Hong Kongもありました。
紛らわしい…!

しかも、Adobe FontsにはGoogleから提供されている「Noto Sans CJK JP」もあり…。こちらもどうやら、日中韓に対応している…?

しかしGoogle FontsにあるNoto Sans Japaneseは日本語にしか対応していないようです。

つまり、AdobeからであればCJKフォントが入手可能(Adobe Fonts内で"CJK"で検索すると見つけられます)ですが、GoogleからはCJKフォントは入手できない様子です。
お願いだから名前を統一してくれ…!せっかく便利なんだから!

結論

今回はゲームでたまに見かける「愛のないフォント選定」に対する無念さに始まり、どうやったら自分たちのゲームで愛のある状態を達成できるか?の話でした。
オーソドックスなフォントをゲームに使う場合に限りますが、日中韓英に対応する時にはNoto Sans CJKをおすすめします!
オープンソースなのでライセンスも安心ですし、これ一つ入れるだけで日中韓英の対応が可能です。
愛を込めて制作しているBEAT AIMER!もいよいよ今月末アップデート。今後の記事にもご期待ください!

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