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延期につぐ延期の中でも、学校の肝試し大会を実現した10人の母ちゃん達の話<前編>

こんにちは。ビートオブサクセス スタッフのバービーです。
コロナが感染症5類に移行して、すっかり以前の生活に戻りつつあるような毎日ですが、意外とまだ・・・流行っていますよね。お気をつけください。

私の息子はコロナ禍真っ只の中、小学校生活最後の1年を過ごすことになりました。長い休校期間に加え、運動会、学芸会などありとあらゆる行事は中止、縮小。楽しみにしていた、宿泊研修も当然中止。さらには加入していた少年野球チームでも大会はすべて中止。夏の合宿も中止。無い無い尽くしの1年間を過ごしたのでした。
大人数が集まるイベントなんてもっての他。
「コロナだから」という一言が、すべての思考と行動を停止させる1年でした。

これは、そんなコロナ禍でも、なんとか子ども達に楽しい思い出を・・・と奮闘した10人の母ちゃんたちの話です。

1.コロナ禍でもPTA活動は継続された


息子の小学校はコロナ禍の真っ只中でもPTA活動は細々と継続していました。PTA役員以外にも「学級委員会」「広報委員会」「校外活動委員会」「地区委員会」などのいくつかの委員会が結成され、それぞれのクラスから1名ないしは2名の委員を選出する・・・という、極めてオーソドックスなタイプの組織活動です。
6月までは休校だったので、委員選出はメールでアンケートを取り、前年度の委員が取りまとめて、やってもよいと言った人の中からピックアップして依頼をする・・・という極めて大雑把な方法で決まりました。

私はその中で、「学級委員」に任命されました。学級委員の主な使命は、クラスの保護者や子どもたちの懇親を深める・・・というものでした。例年、親子向けのイベントを企画したり、保護者向けの懇談会を企画したりするのが常でした。
そして、コロナ禍とはいっても、例年通り予算が割り当てられ、学年・学級内の懇親を深めよという命題が与えられたわけです。

6年生の4クラス、それぞれから2名ずつ選出された学級委員8名が集まり、頭を抱えました。理由は以下の通りです。

・ソーシャルディスタンスが厳しく叫ばれていた。
・大人数で飲食などもっての他だった。
・予算は3万円。(6年生の人数は約100人。保護者も含めたらそれ以上)

予算の3万円は決して安い額ではないでしょう。しかし百人規模で何かしようという時には、非常に安い金額です。
コロナ禍という状況を考えて、無理をして予算を消化しなくてもいい、開催しなくてもいい。とは言われました。
しかしながら、子どもたちは6年生。小学校最後の年です。
ただでさえ、あれも中止これも中止を強いられているのです。
せめて保護者たちから何か楽しい経験をプレゼントできないか?という意見もあったのです。
そして、それは私も同感でした。

2.ちょっとした思い付きにみんなが食いつく

・ソーシャルディスタンス
・大人数での飲食、おしゃべり禁止
・子どもも大人も楽しめる
ということで、体育館で映画鑑賞会はどうか?という意見が出ました。
しかし、出張映画鑑賞については、最低料金が35,000円からとなっており、惜しくも予算を超えてしまいます。もちろん、5,000円くらいなら、交渉して金額を増やしてもらうこともできたと思います。
ただ、映画鑑賞会。
・・・平凡・・・

「いっそ学校を貸してもらってさー。肝試しでもできないもんかね。・・・なんちゃって」
深く考えずに発した私の言葉に、その場にいたメンバー全員の目が輝き始めました。6年生の宿泊研修では、夜の肝試しが恒例となっていました。子ども達はそれも含めて、宿泊研修をとても楽しみにしていました。それが、コロナで消えてしまった。せめて肝試しだけでも・・・と思ったのです。

「それ、面白い!!」
「学校を貸してもらえたら、予算3万円でも全然やれるよね」
「学校で肝試しなんて、思い出に残るよー」

いや、ちょっと待って。準備とか結構必要だけど、あなたたち、大丈夫なの?(苦笑)
メンバーの半分はフルタイム勤務の母たちでした。負担が増えるから嫌がりそうなのに、肝試しには全員ノリノリ。
しかも、早くも、会場の装飾や仮装についての案が出始めています。
みんながノリノリとはいえ、やるとなったら、誰かがとりまとめて学校側とも交渉し調整しなければなりません。
誰がやるのか、と言えば・・・そりゃ、言い出しっぺの私がやるしかありません・・・

「本当にみんな協力してくれるんでしょうね?」

やるとするならば、運営の中心メンバーはここにいる8名しかいません。
ここから運営メンバーの増員を呼び掛けても、絶対増えたりはしないでしょう。そして、8名しかいないからこそ、あれもこれもは無理、それでもやりますか?と確認したところ「やる」というので・・・このプロジェクトを進めることになりました。

3.最小限のエネルギーで最大限の面白さを引き出すために

肝試しのアイディア出しの打ち合わせをスタートしたら、いろんなアイディアが次々でてきます。
PTA活動の負担が叫ばれている昨今、イヤイヤ引き受けた人もいるはずなのに、楽しそうにあーだこーだと意見を言い合うメンバーを、私は意外な気持ちで見ていました。
そして思いました。

人は楽しいことなら、多少忙しくても率先してやれるもんなんだな、と。

コロナ禍で、子ども達が不憫だ・・・という親の思いもあったのかもしれません。親は子どものためには一生懸命になれるものです。
ただ・・・半分以上は子どものためというより、自分たちが楽しかったに違いありません。
その姿はまさに「文化祭の準備をキャーキャーいいながら楽しんでいる女子高生」のようでしたから。

もちろん、私もそのひとりでした。

企画を取りまとめて、書面に落とし込み、学校管理職(校長、副校長)の許可を取る・・・これは、結構面倒な作業でしたが、みんなが楽しみにしていると思えば、やりがいもありました。
それよりも大変だったのは・・・盛り上げるアイディアを取捨選択すること!
母たちは、話が盛り上がりすぎて「あれもしたい」「これはどう」と、キャパオーバーになりそうなアイディアをあれもこれもと出してきます。
もちろん「やれる算段も含めて」提案してくれればいいのですが、中には「それ、誰が作るの?」「それ、誰がやるの?」ということも(笑)

言下に却下すれば雰囲気が悪くなるし、アイディアが盛り上がるたびに
「8人の運営で出来るかどうか、考えて―!!リソースが限られてるから、最小限のエネルギーで最大限の効果があがるように知恵を絞ってー」
と言い続けました。

大掛かりな仕掛けは出来ないけど、本当の夜の学校を会場として使えるという強みを、最大限に生かすために、私たちは知恵を絞り続けました。

自分たちの仕掛けが子どもたちを怖がらせる、驚かせる、そう考えたらワクワクしたのです。
反抗期、思春期の生意気になってきた子どもたちに「一泡吹かせてやろう」
そんな母たちの思いが、さらに一致団結を深めました。

「肝試しの準備をしている時は青春時代に戻った気がした」
そんなことを言ってくれた人もいました。

4.準備は順調、感染者数は一進一退

学校側との交渉は、思いの他スムーズに進みました。やはり、6年生最後にして最大のイベント宿泊研修がなくなったことは、先生たちも可哀そうに思っていたのでしょう。
安全管理には十分留意をした上で、ソーシャルディスタンスを考え、密にならない運営を検討することで、『今年限りの特別な許可』が出ました。

6年生の担任の先生方からも、快諾を得て準備はとてもスムーズに進みました。このイベントはあくまでPTAの学級委員会が主催で実施するということもあり、先生方には当日時間があれば顔出しだけをお願いして、準備段階では一切、先生たちの手を借りないように進めたことも、開催に難色を示されずに済んだ一因だと思います。

学級委員会が主催で、6年生向けに肝試しをやるという話を耳にして、自ら運営に入ってくれると手をあげてくれた人が2名加わり、プロジェクト運営メンバーは総勢10名となりました。
8名で100人単位の肝試しを仕切るのは、当日の誘導なども考えると運用がちょっと厳しいなと思っていたところだったので、その申し出は頼もしくありがたかったです。

準備はスムーズだったものの、実施日を決めるのが非常に難しい問題でした。緊急事態宣言が出たり、解除されたり、を繰り返しており、感染者数も落ち着いたと思えば、また増えて・・・という状況でした。そんな中をかいくぐって実施できるのはいつか?
しかも6年生は、学年の半分くらいが中学受験をするという特殊な事情もありました。それらの事情を考え合わせると、中学受験が終わって卒業式が行われる前の「2月」に設定せざるを得ませんでした。

2月なんて・・・ただでさえ、通常でもインフルエンザが流行し感染症が猛威を奮う時期です・・・でも、卒業前に実施するとするならば、そこしかなかったのです。

果たして無事に実施できるのでしょうか。

(後編に続く)