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枠に囚われていた事に気づいたら写真のレベルが上がった話

20年以上も写真を撮る仕事をしてきておきながら、先日建築写真を撮っていてふと頭に降りて来たことが我ながら馬鹿らしくなるほど目から鱗でした。

倉敷のアトリエクオーレさんの設計デザインで、とてもクールでかっこいいお宅でした。
ダイニングキッチンにはカウンターバーと1枚板のテーブルがあり、一段下がって繋がったリビングにはチェスターフィールド風のソファーと天井にはアンティーク調のシーリングファン付きライト。

部屋の一番隅に三脚を立てて、TS17mmのシフトレンズを装着して構えたのですが画角に入りきりません。
ファンを中途半端に切りたくないが、そうしてソファや床が少なくなると狭く見えてしまう。

ということは、シフトレンズで画面を垂直移動させて撮影して、あとで上下合成してしまえばいい。
画像合成は建築写真ではいまや必須作業です。
特にHDR合成は積極的に使うし、それにパノラマ合成も組み合わせてソフトで手軽にできる時代。
はい、ここまではいつも通りの発想。

ただ私、ここでいつも2:3の写真比率に整えてる事にふと気づいたのです。
そうしようとすると横も広く素材撮影しておかないといけません。
でも横の壁ばかりをそんなに入れる必要はないし、奥のカウンターが画面内でどんどん小さくなるのも避けたい・・・

ん?待てよ?その必要なところまでだけ入ってる比率で何が悪い???

自問自答してハッとしました。
こんなの建築写真の世界では当たり前の事なのですが、広告写真においても2対3のまま使われることの方が少ないほど。
ましてやインスタ映えとか言われて、正方形比率が全盛なくらいです。

でも実際のところ、カメラを覗いてその枠に合わせて世界を押し込んでませんか?
切っても広げてもいいんです。
何をどう撮ってどう伝えたいかの方が何万倍も大事。

今まで他人には、枠にとらわれずに発想しなさいって散々言って来たのに、当の本人が根本的なところで枠にはまっていたとはお恥ずかしい。
フィルム時代のノートリミングプリントへの拘りに囚われていたのかもしれません。

結果、今までで一番かもしれないくらい納得のいく建築写真になりました。

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私は写真って「窓」であって欲しいと思って撮って来ました。
「綺麗な写真」のための写真であるよりも、その向こうに世界が広がっていて欲しいのです。
世界を切り取って留めてしまうよりも、そこから何かが始まって欲しいのです。

そう願うのに、窓枠の形を決めてしまうのはナンセンスですよね。
実際、納品したクライアント様と後で話したら、大変ご満足をいただきましたが、何と写真ごとに比率がバラバラであることに全然気づかれていませんでした。

窓の外の世界を邪魔しないでちゃんと伝われば、窓枠は目に入らないのだなと実感しました。
もちろんこれからもバランスが良くて落ち着く2:3比率は基本にして撮りますけど、何だか狭い場所から出て来たような感覚でスッキリしました。

当たり前の何でもないような事ですが、私にとっては20年以上無意識に囚われていた呪縛で、何よりそれに気づいた事自体がとても衝撃だったのです。
伝わらないだろうなぁ・・・この衝撃(苦笑

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