プロレベルのリズム感を身につける方法 : 0.リズムの重要性・考え方

まずは、音楽を成立させる上で最も重要な要素であると僕が考える「リズム」について、その重要性、訓練の方法を考えていきたいと思います。

リズムは音楽の中でもっともプリミティブな(原始的な)要素であり、プロとアマチュアで明確な差が出る部分でもあると考えています。
もしあなたがアマチュアで、演奏のクオリティを上げたいと考えているなら、まず取り組むべきはリズムです。

(1)リズムの重要性ー音楽の三要素から

音楽は「メロディー」「ハーモニー」「リズム」の三要素からなると言われます。
それぞれの要素について、演奏者に必要な能力を考えると、それぞれ以下のようになると思います。

・メロディー : 間奏やアドリブソロ、オブリガート(歌などの合いの手となる旋律)のフレーズや歌い方のセンス

・ハーモニー : コードを演奏する際の音の選び方、積み方のセンス

・リズム : 走ったりもたったりすることなく、一定の周期に基づいて演奏する能力、聴衆の身体を動かすようなノリを提供する能力

演奏力を向上させるにあたって、最も優先すべき事項はリズムです。なぜなら、メロディーやハーモニーが少々稚拙であったとしても、音楽として聴くことはできますが、リズムがよれていると音楽は成立しないからです。人の耳は、音のタイミングには非常に敏感にできています。

プロミュージシャンにもそれぞれ得手不得手がありますが、全員に共通しているのは一定のレベル以上に正確なリズム感を持っていることです。

(2)リズムに対する考え方

僕がアマチュア時代にしていた最も大きな勘違いが、
「周りの音をよく聞いて、それに合わせるように演奏すればうまくいく」
「個人練習ではメトロノームにしっかり合わせることを意識して練習する」
というものでした。
また、よくある「メトロノームを4分音符の2・4拍目や、4分音符の各拍の裏拍に感じる」練習もたくさんやりましたが、残念ながらリズム感の向上には役立ちませんでした。

リズムに関して最も重要なのは「自分でビートを出す」ことです。
もう一度言います。

自分でビートを出す

これがめちゃくちゃ重要です。他のメンバーやメトロノームに頼ってはいけないのです。
僕はこれを理解するまで、8年間リズムに悩み続けました。日本を代表するミュージシャンに師事し、初めてこのことを知ったのです。
これを理解できていないと、どのような練習をどれだけやっても徒労に終わってしまいます。
そして、僕はこのことを丁寧に解説している本や記事などを見たことがありません。ここでは、それを一から解説していきます。

その前に、このことの重要性についてもう少し見ていきましょう。

日本を代表するベーシスト・プロデューサーの亀田誠治さんもこのようにおっしゃっています。自分でビートを出すことを正しく理解できていれば、メトロノームを裏で感じる練習も有用になりうると思います。

また、ジャズピアニストの佐山雅弘さんは、ご自身のブログのリズムに関する投稿(様々なミュージシャンから学んだことをシリーズ化して書かれています)の中で、以下のように書かれています。

塩谷哲のエンジン

教え:バンドメンバー全員がエンジンなのだ。
(中略)
しっかりしたリズムセクションに乗っかって歌ったり、弾いたりするのではないのだ。演奏者全員がリズムエンジンを持っていてグルグルと発動している。それが合わさった時にとてつもないパワーが生まれ、そうなったらもはやいつまでもそのグルーブが続く。
というのが、あちらのサルサバンドを目の当たりにしての“カルチャーショックを伴った”感想と感動だったらしい。
5人いたら5気筒の、7人いたら7気筒のエンジンでブンブンと車を走らせるわけだ。大変納得する話。

出典 : http://sayamamasahiro.com/408/

塩谷哲さんはジャンルを超えて活躍されている、僕が日本で最も好きなピアニストです。
誰かに乗っかって演奏するのではなく、一人ひとりが自分でビートを出す(リズムエンジンを持つ)ことの重要性を説かれています。

さて、それでは「自分でビートを出す」とはどういうことなのでしょうか?
次回はこのことを詳しく解説したいと思います。

僕はこれを理解してから格段にリズムがよくなり、プロとして仕事ができるようになりました。
リズムに全く自信がなかった僕ですが、今ではプロドラマーから「リズムが良い」と言われることもあります。
次回の内容はリズムに悩むすべての方にとって、何よりも価値のあるものになると思います。ご期待ください。

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