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#151_【読書】塞王の楯/今村翔吾(集英社)

城の勉強もしなきゃと思っていた矢先、好書好日というwebサイトの記事で城郭考古学者の千田嘉博先生と直木賞作家の今村翔吾先生の対談記事を目にしました。

webの記事だけでもかなり読み応えがあり、それだけで読書した気分になりますがf^_^;)、お城博士の千田先生を唸らせる今村さんって何者?というのが、とにかく気になりました。

石工集団「穴太衆」(あのうしゅう)の末裔にあたる(末裔いるんか!)、粟田純徳社長(粟田建設)に取材をされた話など、その記事だけで十分面白すぎる内容だったのですが、ここ数年小説を読む機会なんてほとんどなく、たまには生活の中に変化をと思い、あまり考えることなく注文してしまいました。
辞書みたいな厚さの本が家に届き、正直目眩がしましたが、一念発起して読みました。
ちなみに、私の読むスピードが遅すぎて、もう文庫版が出ています…f^_^;)。


城を守る

物語は、朝倉家の城がある一乗谷に織田信長の軍勢が攻め込み、城の守りを固めるべく招かれた塞王こと飛田源斎と主人公である幼き頃の匡介が、戦の混乱の中で出会うところから始まります。

その後、塞王のもとで匡介が修行を積みながら腕を磨く過程で、石積みの技法や石の供給、職人が現場で石を積んでいる時の空気感などがたっぷり描かれており、石垣マニアからしますと、それだけでもたまらないストーリーが展開されております。

【織豊系城郭の石垣が現存するのは珍しいそうです。(@清水山城二の丸)】

城に攻める

一方で、攻め込む者がいるから石垣を築くわけですから、それを打ち破らんとする国友衆の鉄砲や大筒といった技術の研鑽進歩も描かれています。
私が日本史を習っていた頃、こんなことを指摘する先生がいた記憶はありませんが、1543年に2挺の鉄砲が種子島に伝来後、10年経たずして数十万挺の鉄砲が日本にあったそうですから、鉄砲や砲術の技術が進化したスピードたるや驚異的どころか狂気の沙汰という感じですし、戦争が人を突き動かす力の恐ろしさを感じます(゜o゜;;。

職人同士による誇りのぶつかり合い

物語のラストは、大津城をめぐり国友衆の大筒と穴太衆の石垣、まさに攻めと守り、矛と楯がぶつかり合う戦いです。
国友衆が絶え間なく発射する大筒の火力と、それに対していち早く石を組み直して立て直しを図る穴太衆、どちらもあまりに迫力のある描写と場面展開で、この戦いは最後どのような形で決着をみるのだろうかと、余計な心配をしながら読み進めていきました。
それは読後のお楽しみ、乞うご期待!としておきますが、
その結末ゆえに、

泰平の形、泰平の質は矛が決める訳でも、楯が決める訳でもない。決めるのは人の心である

塞王の楯/今村翔吾 P549

という言葉が、読後重くのしかかってきました。
人間自身、矛盾のようなものを抱えているけれども、それを全て包含しているからこそ人間なのでしょう。

今村翔吾先生について

著者の今村翔吾先生は、本屋の経営もされている作家という顔もあります。

また、Xのスペースにもゲリラで出没し、書店のこと、出版界のことなど、作家の目線でしか知り得ないことも含めてたっぷり発信されていますので、ご興味のある方はぜひフォローしてみてくださいo(^-^)。べつに、先生の回し者ではありませんけどf^_^;)。

関連本?

本を読み始めると、ほかの本も読みたくなってきますよね。

歴史系で言いますと、今年は文永の役750周年だなぁと思っていたところで!今村先生の最新刊「海を破る者」が発売されました(o゚▽゚)o。
中世の元寇と伊予の河野家がモチーフのようです。

歴史小説以外で気になる本と言えばこちらでしょうか。
塞王の楯で、城主京極高次は大津城に籠城しましたが、時を経て21世紀の大津から、成瀬は天下を取りにいく…。


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