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#121_【読書】プロダイバーのウニ駆除クエスト/中村拓朗(スイチャンネル)(KADOKAWA)

先日、丸徳水産さんが磯焼け対策の活動をしている現場を見学させていただきました。

「そう介のメンチカツ」が出る前の頃だったでしょうか、肴やえんを切り盛りしている犬束ゆかり専務からメニュー開発をしているところに呼ばれたのが、磯焼け対策の活動を追うきっかけとなったのですが、その当時は20種類以上のレシピを考案されたり、漁協の組合長会が始まる前に持参して全組合長に試食してもらうなど、あまりにもパワフルな行動力に、最初はただただ圧倒されてしまった感じでした。

【ゆかり専務とそう介のメンチカツ定食です。】

ある時加勢(お手伝い)しようとしたところ、「まずアナタは、記事を書いて多くの人に発信しなさい」を言われ、いつも家族ぐるみで取材へのご協力をいただいております。
とくに、漁師さんが日々感じていることは、海に出ない者にとって新鮮に感じることが多く、ただ彼らにしてみたら日々当たり前に感じていることだけに、なかなか言葉で表現してもらおうとしても難しいということで、勉強しなければと感じているところであります。
そのような中、ある日ガンガゼの駆除をしている動画が目に留まりました。

ガンガゼがたむろしているところには海藻が生えていないこと、針が危険であること、イシダイのエサになることくらいは知っていましたが、そんな程度の知識ではろくな記事が書けないと思っていたところ、先の動画をアップしているYouTuberのスイチャンネルさんが本を出したというので、手に取ってみました。

磯焼けの原因や影響について調べたり専門家に質問したりしますと、奥歯にものが挟まったようなものの言い方の記述や回答をよく目にしますが、実際のところ端的に説明するのがいかに難しいかが、この本を読んだら分かると思います。
最近、ガンガゼやイスズミなど、食害生物の存在が注目され始めてきましたが、例えばムラサキウニが激減した場所だからといって海藻は増えていないなど、分かりやすくウニが悪い、イスズミが悪いといった単純な話ではなかったり、それぞれの生き物は環境に合わせて生育域を変えますが、みな同じレベルの回遊性を持っているわけではないので、変化への適応できず数を減らす種も出てくるなど、現れてくる影響も一筋縄では掴みきれない状況になっています。

著者は海の生き物の研究に携わっている方ですので、原因を理解するために、観察するときの条件を揃えるなど、どのようにして状況を見極めるのかといった、研究、観察の心構えのようなことが書かれています。
また、研究への向き合い方だけではなく、ウニがいかに悪食であるかや、駆除したガンガゼを食べに他の魚が寄ってくる話など、海中生物の生態についてもふんだんに書かれています。

【エサがなくなると、かごも食べるらしいです。】

素人が気軽に立ち入ることのできない世界ですので、普段なかなか窺い知れないことで面白いと思える内容もあれば、陸上の有害鳥獣駆除で言われていることが海でも同じように起きていて興味深く感じることもあり、生き物が好きな方にはもちろんですが、私のように生き物の知識がない人が取っかかりとして読むのにもよい内容だと思います。

いまでも分かっていないことが多く、あちこちで試行錯誤がなされている状況ですが、目の前の事態をしっかり観察することにより、結論を短絡的に導き出さないようにするとともに、多くの人からの関心が集められるよう海や生き物の魅力が伝わる発信を心掛けていきたいと思います。

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