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交響曲第4番「不滅」【C. Nielsen】《私的北欧音楽館》

ニールセン (C.Nielsen) 作曲
Symfoni nr. 4 “Det uudslukkelige”
(CNW28 /1914〜16年) 
 
交響曲 第4番「不滅」op.29

 9月19日のEテレ「クラシック音楽館」で、ニールセンの交響曲第4番「不滅」が放送されるのにあわせて、なにか役に立つ記事を書こうとしているのですが、なんかもうファンとしては感無量すぎて、それから、語りたいことが一気におしよせすぎて、なにからどう順序立てて話せばいいのかさっぱりわからない状態になってます。

 

 なので、思いついたこと、とりあえず書いていきたいと思います。
 いま、デンマーク語の勉強してるので、自分の勉強もかねて、デンマーク語のタイトル、Det uudslukkelige について。ねほりはほりしてみました。

 んでもって。

 ねほりはほりしすぎた結果、記事のさいごまでデンマーク語のお勉強が続きます……なのでせめてBGM用として、ニールセンが「不滅」を作曲していた1914〜16年の間に作曲した歌の動画をあいまあいまに貼っておきます。
 一般的には交響曲の作曲家として知られているニールセンですが、実際は、数多くの歌を作曲して残しています。芸術的でありながらお高くとまらず、平易でありながら大衆におもねらない歌の数々は、まさに、心の栄養、とでもいうべきものです。

 Når jeg betænker tid og stund
(私が時と一瞬について考えていたときに)
 以下数曲は、古い賛美歌にニールセンが新しいメロディをつけた歌集 Salmer og Aandelige Sange より。

 

・◇・◇・◇・

 

① ユニーク過ぎてカルチャーショックな綴りのタイトル

 曲のタイトルは、日本語では「不滅」、英語では The Inexstinguishable と翻訳されています。

 では、そもそものデンマーク語ではどうかというと、

 Det uudslukkelige

 という、なんて読めばいいのか、ていうか、どこで切ればいいのかさっぱりわかんねー(@_@;)、キャント・アンダースタンドな言葉になってます。

 とりわけなにがしょーげきって、単語のアタマの、

 uud

 の3文字。

 なにこれ、「ううど」って読んだらいいの?もしかして、「und」のまちがいじゃないの?……「u」が2つ並んで「uu」なんて、見慣れなさすぎて、カルチャーショック以外のなにものでもありません。
 わたしにはもう、

 uud = キャイ~ンのウド鈴木は、じつは双子だった!

 という意味にしか見えません。
 しかのみならず、ほんとに「und」だとまちがえて、

 Det undslukkelige

 と表記している本もあったりしましたから、気をつけてくださいね……まぁ、ほかならぬ、我が家にある音楽の友社の本なんですけどね。
 おかげで20ウン年、勘違いしたままで綴りを記憶しておりました。さすがに現行版は修正がされていると信じたい。

 とにかく、正しくは、

 Det uudslukkelige

 です。
 おもわず最初はウソっぽすぎると思いましたが、これが正解です。公式のサイトでもそう表記されています。

 しかしですね。
 公式にそうだしてもですね。
 uudslukkelige の綴りがあまりにも複雑珍妙すぎて、「これはきっとニールセンの造語にちがいない!」としか思えないです。はい。

 

 さて。

 det が定冠詞であることは、デンマーク語を知らなくても、ドイツ語の定冠詞 derdendes を知っていたら類推はつきます。
 また、多少デンマーク語をかじったら、「〜lig」というのは英語の「〜ly」にあたる、名詞や動詞を形容詞化する語尾だな、というのが見えてきます(デンマーク語は形容詞の語尾変化があるので、「〜lige」となるときもあります)。

 たとえばですね……
 英語では、
    day → daily というふうに形容詞化しますよね。
 デンマーク語でも、英語の day にあたる dag が、
    dag → daglig と形容詞化します。

 だからとりあえず、Det uudslukkelige という題名は、

 det (中性の定冠詞) + ???? + lige (何かを形容詞化)

 なのだ、というところまでは、デンマーク語初心者の私でも理解できます。

 だけどやっぱり、理解不能なのは、単語のアタマにくっついてる、

 uud

 です。
 uud でなにか打ち消しの意味をもつ接頭辞なのか。
 それとも u + ud なのか。

 デンマーク語で、ud は英語の out にあたる言葉になります。
 また、uden で英語の without にあたる言葉になります。

 ……ということをふまえると、ud とつくからにはなにかを否定している、って推測できそうです
 だけど、もういっこの単独の u はなんだろう?という疑問はぬぐえません。英語では、単語のアタマに「un」とつくと否定の意味になりますよね。だとしたら単独の u のほうが否定の意味かもしれない……?

Nu sol i øst oprinder mild
(いま、東の空の太陽は、おだやかに昇る)

 

② 辞書をひくと単語の構造がわかった(当然)

 ということで、疑問ははてないので。
 オンライン辞書をひきました。
 いつもお世話になる、Den danske ordbog です。

 するとなんとですね、uudslukkelig という単語が掲載されていました!コレ、ニールセンの造語じゃなかった!

 おかげで、以下のことがわかりました。

 ① uudslukkelig は形容詞
 ② 交響曲のタイトルの det uudslukkelige の最後の e は、なにか活用したか、形容詞が名詞化するときのお約束なのか、とにかく、語尾変化!

 そして、ページ全体をGoogle翻訳にかけるとこうなりました(Google翻訳そのままだと意味不明なので、いささか手直ししてはいます)。

uudslukkelig クエンチ不能 (形容詞)
 語尾変化  -t、-e
 発音  [ uuðˈslɔgəli ] ……ううズすろーげり、みたいな?
 
○ 意味
  湿らせたり消えさせたりすることではありません

○ 同義語   永続的に、一定
○ 近くの言葉  持続する、持続する、進行中、攻撃的、場所-不動、粘り強い、 不動、永続的、永続的、永続的、永遠に、無限、不滅、破壊不可能、消火不能

○ 例文
 Hans fascination af den lyse sommernat, Sankt Hansbål, ildebrande og solnedgange var uudslukkelig. 
 (明るい夏の夜、夏至の日のたき火 [Sankt Hansbål]、火と日没への彼の魅力 [hans fascination] は、消すことのできないでした。)
  ※ og = 英語の and
  ※ var は、英語の be動詞にあたる er の過去形。

 うん。
 いけるときはGoogle翻訳ですんなり理解できるのですが、今回はまったくダメでした。
 そこで、語源から理解していくために、ちょっと「uud」がアタマに付く言葉をひいてみました。

 すると、

uuddannet  adj.
uudfoldet  adj.
uudforsket  adj.
uudgrundelig  adj.
uudgrundelighed  sb.
uudholdelig  adj.
uudnyttet  adj.
uudryddelig  adj.
uudsagt  adj.
uudsigelig  adj.
uudslettelig  adj.
uudslukkelig  adj.
uudtalelig  adj.
uudtalt  adj.
uudtømmelig  adj.
uudtømmelighed  sb.
uudviklet  adj.

  ※ adj. = 形容詞   sb. = 名詞

 意外といっぱいあった!……Σ(゚∀゚ノ)ノ
 しかも、みごとにみんな形容詞(名詞もあるけど、語尾を見比べたら、uud- ではじまる形容詞が名詞化したものだ、ということが推測できます)。

 とにかく、数が多いということは、「パターンがある」ってことですよね!
 で、これらのいくつかを調べてみたら、元の意味になる単語から「ud」がついた単語が派生して、さらに「u」がつく単語が派生していくらしい、しかもそのとき語尾に「lig」も一緒についてくるパターンが多いらしい、ということが見えてきました。

 つまり、こんなふうに変化してくようです。

 もとの単語、○○○
   → ud + ○○○ …… ud○○○
   → u + (ud + ○○○) + lig …… uud○○○lig

 とりあえず、調べながら同時進行で書いているので情報の整理がおいついていないのですが、どうも ud がつくことで、なにかひとつ次元が上の意味が付加されているようです
 そして、否定の意味は、単独の u が担っているようです。

Min Jesus lad mit hjerte få
 あの、知ってるひとは知っている、木管五重奏曲の第3楽章に用いられているメロディです!

  

③ では、語源から順に理解していこう!

 等々……というようなことを調べながら、やっと、uudslukkelig という言葉の正体がうっすら見えてきましたよ!
 この長ったらしくておぼえにくいユニークな綴りの言葉を理解するには、

 ① もとの言葉 slukke
 ② ud がついた udslukke    (ud + slukke)
 ③ 最終形態  uudslukkelig {u + (ud + slukke) + lig}

 を順番に理解していったらいい、ってことです。
 しかも、これがわかったら、あなたもそらで、

 uudslukkelig

 と綴れるようになりますからね!
 あたしは、もうこの記事で何回もそらで綴っていますから、うけあいでっせ!

 

 ではさっそく、

 slukke 

 から意味をみていきましょう。

 1番目の意味は、「電灯や電気器具のスイッチを切る」です。
 で、2番目に「火を消す」がきています。
 だけど、そもそもが「火を消す」で、電気の使用が普及するにしたがって「スイッチを切る」意味が優勢になってきたことは想像にかたくありません。

【豆知識 その①】
 対義語の「スイッチをつける」「火をつける」は、tænde です。
 火をつける道具である「マッチ棒」はデンマーク語で、tændstik (tænd + stik)と綴ります。
【豆知識 その②】
 語尾に er をつけて、slukker になると、「小型の火を消す道具」の意味になり、画像検索すると……「消火器」が出てきます。
 いっしょにでてきてる、タバコ用の火消しもかわいいですよね(*^^*)。
【豆知識 その③】
 lyseslukker だと、「ろうそく用の火消し」になります(lys = 光、灯り)。
 こちらも画像検索すると、かわいいアイテムがいっぱいでてきます。さすが、ろうそくの灯りを愛する国、デンマーク!
【豆知識 その④】
 だけど、lyseslukker の1番目の意味は、現在では「他人の喜びや楽観主義などを破壊する人」だそうです。
 ……せっかくGoogle翻訳がうまくいっても、こんな意味でてきたらしょぼーんです……まさしく、「水を差す」ってやつですね(●`ε´●)

 おもしろくなってついつい豆知識だらけになってしまいましたが……おかげで slukke という言葉のはらむイメージが具体的になってきました。こんなふうに↓。

 Jeg tænder ……たき火や暖炉、ろうそくに火をつける、灯りをともす
    ↓
  明るい、暖かい、炎がはぜ、躍動する → 生きている & 幸せ
    ↓
 Jeg slukker ……水をかけたり、火消しをかぶせたりして火を消す
    ↓
  暗い、冷たい、静か、静止 → 死んでいる & 幸薄い
 
  ※ jeg = 私は  ※ 動詞の現在形の語尾は、er

 

 ……では、つぎはこの slukke のアタマに、ud をつけた udslukke をみてみたいとおもいますが……もひとつだけ豆知識。

【豆知識 その⑤】
 slukke から s をとって、lukke にすると、「閉じる」……「閉店する」「戸締まりする」等々の意味にになります。
  lukke と slukke をふたつセットにすると、「戸締まり用心、火の用心」ってわけですね。ナイス!
 Der dukker af disen min fædrene jord
 ここからは、歌集 En sens danske viser のなかから、作詞 Jeppe Aakjær、作曲 ニールセンのゴールデンコンビによる歌を紹介していきます。

  

 さて。

 udslukke 

 ですが、意味としてただひと言、そのまんま、

 slukke

とかかれています。ただし、同じく「slukke = 火を消す」の意味でも、抽象的な物事に対して使用するようになるらしいです。

 だけど、使用例を見てみても、言葉のもつ雰囲気がちょっとわかりにくい。

 なので、これを形容詞化した、udslukt をチェックしてみました……これ、たぶん、udslukke の過去分詞形になるのかな? 

 ページ全体をGoogle翻訳にかけると、こんな感じです。

udslukt 消滅した (形容詞)
 語尾変化  -、-e
 発音  [ -ˌSlɔgd ] 

○ 意味
  すべてのエネルギー、生命、活動または力を失った人

○ 例  udslukt vulkan (死火山)  udslukt stjerne (絶滅星)  udslukte øjne (絶滅した目)
 
○ 例文 
 ① jeg .. lå i min seng og betragtede kaminens udslukte ild og frøs.
 (私は..ベッドに [i min seng] 横になり、暖炉の火 [kaminens ild] が消えて凍るのをじっと見ました。)
 ※ kaminens udslukte ild は、「暖炉のすっかり火の消えた火床」とでも訳するほうが適切かもしれません。
 
 ② Hjernedød betyder fuldstændig udslukt og uoprettelig hjernevirksomhed.
 (脳死 [hjernedød] は完全な絶滅と取り返しのつかない脳活動 [hjernevirksomhed] を意味します。)

 「死火山」はともかく「絶滅星」っていったいなんなんだ?……とか、厳密に訳すとすこし違うんでないか?……と感じるところもありますが、Google翻訳でも udslukt の雰囲気は伝わってきます。

 つまり、エネルギーをすべて出しつくして枯渇して、

 お前はもう、死んでいる……

 みたいになった状態をあらわす言葉が、udslukt だ、ってことですよね。
 ここからさかのぼると、udslukke という言葉のもつ雰囲気は、

 生き生きとしたなにかを火でも消すようにすっかり消し去る

 的な「火を消す」なのではないか、と推測できます。
 単に「消す」というよりは、よりパワーのある「消滅させる」くらいの日本語をあててよさそうかもです。

 

 そこで、あらためて udslukke の例文をGoogle翻訳にかけてみました(ちょこっとだけ手直ししてます)。

 [forelskelse] er en følelse, som er svær at udslukke, når den er på sit højeste.
 (【夢中】はピーク時に消えにくい感情 [en følelse] です。)
 
  ※ forelskelse は名詞で、「誰かとの恋に落ちている」つまり「フォーリンラブ」が1番目の意味になるようです。
  ※ svær は「難しい」です。

 この翻訳、やっぱりなにを言いたいかよくわかんない(^_^;)。
 だけどどうやら、なにかに対して惚れ込んで「恋の炎」が燃えている……ようなとき、「ほんものの火ではないけどなにかエネルギッシュなものを消滅させる」場合は udslukke を用いる、って推測できそうです。

Nu er dagen fuld af sang
(いま、一日は歌でいっぱいだ)
 ニールセン以外にも、Aakjær の詩にメロディをつけた作曲家はたくさんいます。せっかくなのでこのアルバム↓で、いろいろな作曲家による Aakjær の田園ソングも聴いてみてくださいませ。


④ uudslukkelig とは

 ここでいったん、わかったことをまとめておきますね。

 uudslukkelig という言葉は、数式のように表すと、

 {u + (ud + slukke) + lig}

 となり、内包されているそれぞれの言葉の意味や雰囲気は、

 ① slukke =「火を消す(具体的な動作)」
 ② 「あるもの(抽象的)を火でも消すように消す」場合については、udslukke 用いる。

 (補足)udslukke から派生した udslukt は、「火のような躍動やエネルギーをすっかり失い果てている」ような状態を表している。

 というようなものになります。
 これらの言葉のもつ意味を、u というひと文字を冠することによって否定している……それが、uudslukkelig という言葉の成り立ちです。

 つまり、
 もしここに、火のように躍動し、エネルギーに満ちた何かが存在しているとして、それは、

 何者かによって udslukke されて弱まり消えることも、
 自ずから udslukt な状態に衰えていくこともない、

 ような存在である、
 それが、uudslukkelig という形容詞の表すところである、と考えられそうです。

 

 こう考えると、Det uudslukkelige という交響曲のタイトルを「不滅」と翻訳したのは絶妙である、としかいいようがありません。
 だって、「滅」という漢字をよく見てください。なかに「火」と「水(氵)」が含まれている。つまり、

 (水をもって)火を消す = slukke 

 がこの漢字の中には埋め込まれているのです。
 そして、「不」のひと文字をつけることで、とある物が火が消えるかの如く跡形も無く時空の彼方に消え去ることを否定してみせるところも、uudslukkelig の成り立ちと一致します。

 問題は、ニールセンは何を「滅びない」と考えてこの交響曲をつくったのか、ということですよね。

 

 まあ、音楽については、ここではさておき。
 あらためて辞書にもどって、uudslukkelig の意味と同義語をチェックしてみたいと思います。

○ 意味  
  som ikke er til at dæmpe eller få til at forsvinde
  (湿らせたり消えさせたりすることではありません)
○ 同義語  
  vedvarende (永続的に)  bestandig (一定)

 そりゃ、そもそもの語源が「火を消す」だったら、湿ったり消えたりはあるよね……と思うけど、やっぱりGoogle翻訳が謎。わけがわかるようになるために、構文からみていきましょうね。

 まず、som ikke er til at dæmpe eller få til at forsvinde の骨組みを、わかりやすくしめすと、

 som ikke (A eller B)  = like not (A or B)
  あたかも、(A もしくは B) でないかのごとく
    ↓
 som ikke
  (er til at dæmpe) eller (få til at forsvinde)

 ※ som = 〜のような
  ikke = 英語の not  ※ eller = 英語の or 
 ※ til at は英語の to不定詞に相当する用法だと思うけど……まだそこまで学習がたどりついてないんだなぁ……(^_^;)

 となります。
 「あたかも〜」だなんて漢文調だとやっぱ、とっつきにくいので、思いきってひらたくいうと、

 Aでもないし、Bでもない。みたいな? (*ノω・*)テヘ

 ……って感じでしょうか。
 つまり、uudslukkelig は、dæmpe でもないし、forsvinde でもない、ってわけですね!
 では、このふたつを調べてみましょう。

○ dæmpe
 「イライラ、プンプンしている人を落ち着かせる」「光や音や色合い等をトーンダウンする」というような動詞。目的語は必要っぽい。語源は「蒸気」と関係あるらしい。
 
 dæmper
だと「音をミュートさせるデバイス」の意味になるそうです。ピアノのダンパーペダルをイメージすれば語の雰囲気がわかりやすくなるかも。
○ forsvinde
 
すっと見えなくなる、すっかり消える、徐々にいなくなる、というような意味をもつ動詞。目的語は必要なさそう。
 
 例文の、Taxaen forsvinder i regnen (タクシーは雨の中に [i regnen] 消えた)というのが言葉の雰囲気をつかみやすいです。
 forsvinde som dug for solen (太陽 [solen] のまえの露 [dug] のように消える = 跡形もなくすぐに消える)という慣用句も、語の雰囲気がわかりやすいです。

 つまり、som ikke er til at dæmpe eller få til at forsvinde というのは、

 なにかによってミュートされて減衰したり、
 いつの間にかスッときえて無くなっている、
   ……なーんてことはおこらない、ような感じ

 と思っておけばよさそうです。

 同義語の vedvarende は、Google翻訳にかけると「永続的」「持続的」とでてきます。vedvarende energi で「再生可能エネルギー」です(ちなみに、ren energi で「クリーンエネルギー」です)。

 また、bestandig はこんな意味です。

 som finder sted eller varer ved hele tiden
  (これは常に発生するか、持続します)

 以上のことをまとめると、uudslukkelig は、

 dæmpe されることも forsvine することもない
   = 減衰されたり、消滅したりすることがない。
 そして、自然エネルギーのように vedvarende bestandig である
   = いつでもいつまでもそこにある。

 ということでよさそうなわけやけど……アカン、さすがに考えるのがつかれてきた……_| ̄|○ il||li
 自分で言っといてなんですが、uudslukkelig のイメージには「いつでもいつまでも」といういいまわしがいちばんふさわしいような気がします。

Jeg bærer med smil min byrde
(私はほほ笑みながら重い荷を運ぶ)
 ニールセンのメロディには、クラシックのみならず、フォーク、ジャズ、ロック、あらゆるジャンルのアーティストが取り組んでいますが、Aksel Schiøtz の歌うニールセンこそ、まさに、「不滅」というべきものかと思います。

 

⑤ 「滅びない」ものの輪郭

 ここまで、辞書をたよりに uudslukkelig という言葉について調べてみました。
 ここからさらに、コーパス↓へいって実際の使用例をチェックしたら、よりリアルに言葉の雰囲気をつかむことができるのですが、さすがにそこまでの語学力がついてないので……今回は見送りです。

 ところで。
 マニアックな単語のせいか、コーパスの例文もすくなかったのですが、そのひとつが、

 nogen slukker den nielsens Uudslukkelige
   ( [近所から漏れ聞こえてくる] ニールセンの「不滅」を誰かが消した)

 ……だった、っていうのは、さすがに、誰がうまいことをいえと?、でした(^o^;)

 だけどおかげで、「不滅なるもの」の輪郭がすこしみえました。

 踏もうが潰そうが、焼こうが凍らせようが破壊できない、時の流れを経ても磨滅しない……金剛石がごとき硬さや強靭さを備えるが故の「不滅」ではなさそうです。
 また、死んでも死んでもまたどこかに転生する、もしくは、幾度でも蘇る……不死であるがゆえの「不滅」でもなさそうです。

 そうではなく。そもそも、衰えや消えるということを知らない、生き生きとした不定形なもの……いつでもいつまでもそこにあるもの、それが、uudslukkelig という言葉がしめす「不滅」のようです。
 なんとなーくですが、ジブリアニメの「ハウルの動く城」の真ん中に、火の悪魔カルシファーがいつでも存在している、みたいな絵がうかんできます。

 

 そうそう、それと。

 「不滅なるもの」を題材にしているといえば、マーラー交響曲第2番「復活」があります。これは、「人はいちどは死ぬが、神のもとで永遠の命を得る」ということを、キリスト教的な世界観にもとづいて歌いあげたものです。
 だけど、終楽章の歌詞をみていると、マーラーが「無為のまま死に、あとかたもなく消滅してしまう」ことに怯えている姿が見えるようで……若いころはマーラーの不安に共感してどっぷりひたっていたんだけど、最近は「人はみないつか死に、消え去るものである」ということを、そのときのマーラーは直視できなかったったんだろうな、と想像すると、いたいたしいような気持ちがしてきます。

 だけど、ニールセンの歌いあげた「不滅なるもの」は、言葉の意味からしてもそういう類のものではありません。
 マーラーは1860年、ニールセンは1865年生まれで年齢はちかく、生きている時代も共有しているはずなのですが、精神性は対極にあると思います。
 ていうか、ニールセンは後期ロマン派に対しては、大アンチだったそうで。1歳ちがいのリヒャルト・シュトラウス(1864年生まれ)なんかに対しては、アウトオブ眼中だったらしいです。

 後期ロマン派の掉尾を飾ったマーラーと比べながら「不滅」を聴くのも、またひとつの鑑賞法だと思います(*^^*)。

 

 今回はくたびれたので、ここいらで……(^_^)/~


○ おまけ

 番組観賞前の予習用として、YouTube で聴ける「不滅」を集めた再生リストです。よろしかったらどうぞ!

 ニールセン演奏のお手本として、北欧のマエストロ、ブロムシュテットと、ネーメ・ヤルヴィ

 今回NHK交響楽団を振っているパーヴォ・ヤルヴィと、この9月からN響を率いることになったファビオ・ルイージ

 そして、演奏の古典である歴史的録音、を収録しています。

 さらに、スコア付き動画と、ティンパニの楽譜のついた動画も。

 
  

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いま、病気で家にいるので、長い記事がかけてます。 だけど、収入がありません。お金をもらえると、すこし元気になります。 健康になって仕事を始めたら、収入には困りませんが、ものを書く余裕がなくなるかと思うと、ふくざつな心境です。