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心を見せない社会人

仕事をしてる自分はもう1人の誰か。玄関を出てからもう1度入るまで、僕の体は誰か知らない別の人間が操ります。そう考えれば、嘘でまみれた笑顔の空間に少しは馴染めるはず、心なしか辛さも人ごとに感じれる。でもそのせいで毎日10時間、僕は僕の時間を失ってしまいます。太陽が出ている間、自分の時間はありません。

目標は、この長い昼間の時間を「自分」として過ごすこと。巷ではそれでお金が入ってくるものを天職と言ったりしてます。今はそこにたどり着く途中だと言い聞かせてるぼくとみなさん。です。

まぁそんなこんなで僕もあなたも今日もお疲れということでね、適当にグチグチ言っていきたいと思います。僕は法人営業マンです。A⇆B⇆Cの3社があるとして、僕はBに属してます。最悪です。ACどっちかがトラブればその問題は必ずBを経由します。Aが無理な要望をすればBはCに懇願します。AとCが喧嘩すれば僕らは双方の伝書鳩になります。なのにBの利益は1番低いため、社内ではもっと利益を出せとムチが入る、そんな仕事です。入社前はそういう経験もしてみたいというドM精神むき出しで面接を受けましたが、2年と1ヶ月が過ぎもう満腹を超えて虚無を感じています。

でも子供の頃よく聞いていた、大人の事情や嘘、作った笑顔はたくさん経験できます。いわゆる「社会人」っていうやつです。自然にしゃべっているように見えて、損失の責任を負ってしまうなど後から不利になりうる発言はしないよう実はとても慎重に言葉を選んでいたり、相手に話しかけているようで本当は相手の向こうにある会社のお金にピントが合っているとかです。そんなこと双方承知だとしても、せめてもの礼儀として地雷を踏まない程度のジョークを飛ばし、高らかに笑い合います。この大人型の明るさに毎日どっぷり浸かりながら、心ではなくお金という形で恩を売り合います。

外から見ればみんな優しくていい人に見えると思うけど、実際に身を置いてみると僕にとっては居心地の悪い空間です。その人の性格が優しいというよりは自分が波風を立てる原因にならないよう、相手のためっていうよりはみんな自分を守るために優しくしてる感じ。そうすれば「〜さんはいい人だよ」で広まるから社内外仕事がしやすくなるし、結果として出世にも繋がる。本当に心の優しい人だろうがそうじゃなかろうが、みんな「優しさ」を纏ってやりくりしてるから本当はどんな人なのか分かんない。

毎日会う人たちなのに心を見たこともこれからみることもないでしょう。たとえ同期でさえも友達にはなれない気がします。この感覚がすごく慣れなくて、毎日僕を疲れさせます。

パンガン島

けど、その状況を苦に思うどころか、とてつもなくやりがいを感じて仕事をしている人もいます。そしてそういう人たちとは、会社の外で出会っても交わることがないなと思います。俺は人が好きだけど、心を開いて会話をするのが得意。それを制限された中での人間関係はまるで何を話したらいいかわかりません。なんというか、結局なにごとも適材適所があるでしょってこと。

俺が自分を殺して仕事をしてる間も、あの人たちはあの人たちのままで生き生き働いてる。彼にとって時間を失うことのない「天職」なわけです。そりゃあ仕事にも身が入るし得意なことだから結果も出て自信もつく。全てが相乗効果です。けど僕の場合そうはいきません。会社の指示で取引先に事実を隠すのは気疲れするし、何よりお金のために嘘をつくのが得意ではありません。それをすると、本来心を開いてくれてた人は離れていくと思うから。

けど、ビジネスの場でその考えは甘えらしい。そもそも最初から心を開き合わないからカンケーない。僕のような人間は利益を作れないお人好しと判断されます。それを考えたとき、当たり前だけど人の合う合わないは出てくるでしょ、ね。けどこれはどっちが良い悪いの話じゃないのもなんとなくわかるでしょ。僕は相手を軽蔑しないしされる筋合いもないわけです。

だから今は、自分もいつか「天職」を見つけたときに、相手にも自分のやりがいをわかってもらおうとするのではなく、「あーおれも昔実はね、」と自分が気持ちよくなるために寄り添ってくれる感満載の話を頬杖つきながら若い子にできるよう。明日も玄関に自分をおいて会社へ行ってきたいと思うのです。

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