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祖父から孫へ。孫から曾孫へ。

祖父のお葬式、なかなか見れない綺麗な、すごく綺麗な夕焼け空を見た。夕陽に手が届く、そんな距離にまで行ってしまいたくなるくらい綺麗だった。蜜柑色に染まる夕焼け雲、あれに乗って祖母に会いに行ったのかな。頭の中がわたあめのように膨らんでく。いつもより少し速く進む雲を見てどれだけ早く会いたかったのと私は少し笑った。あれから四十九日、今日は祖父の納骨です____

もう四十九日も経ったのと挨拶のように繰り返される会話を今日もした。四十九日前立てなかったいとこ甥、立っているのを見て少し感動を覚える。この子はその丸くて丸くて全てが初めてのような輝いている目できっと素晴らしい世界と素晴らしい人生をこれから何十年も見ていくのだろう。まだ十ヶ月の新人に沢山色んなことを教えたくなったけれどぐっと堪えた____

父達が中学生の頃から父達が家を出てからも、孫が産まれても、孫が成人しても、曾孫が産まれても祖父は住み続けたこの家。家事は出来ないらしく色んなところに埃はたまっていたけれど、祖母の仏壇だけは綺麗に、そして毎回沢山のお供えがされていた。時々、マナーがありすぎるこの国を嫌いたくなるけれどありすぎるからこそこんな温かい気持ちになるんだろう_____

祖父は遊びに行く度にジュースを買ってくれた。家の前のお決まりの自販機で、数え切れないくらい買ってくれた。私達にジュースを買うための貯金箱があったくらい。叔母が"この貯金箱でジュースを買っておいで"と私達 従兄弟 と いとこ甥に、数枚の五百円玉をくれた。二歳のいとこ甥が持ちたいと持ったその五百円玉はすごく大きく見えた___

何にしようかと迷う私達。いちばん早く決めたのはいとこ甥だった。あれがいいと一番上のジュースを指した。私はいとこ甥を抱きかかえた。その小さな指で押したのは私からいとこ甥に、微笑みながら抱きかかえるのは祖父から孫に十年の時を超え移り代わったのだ。こうやって時を超え世代が交代していく。それを何百回と繰り返し世界を、人生を、更に創りあげていく。ふと少し古くさくて懐かしい匂いが香った気がした。これはもう嗅ぐことの出来ないおじいちゃんの匂いだった___

私はこれ、とみんなが選んだジュースが出てくるのを見て"また出てきた!"と拾っていく いとこ甥を見て皆で笑った。君が君の従兄弟の子供を抱きかかえるくらいの歳になったらぜひこの日を思い出して小説にでもしてくれたら私は嬉しい。君がそれまでに創り上げた人生の中で拾った小さな貝殻のような言葉を重ね合わせて君の言葉で、綴って欲しい。ふとそう思った_____



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