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【暇と退屈の倫理学】を読んで気づいたアイデンティティはだれのものか?

この本を読んで気づいたことの一つは、(無意識の)アイデンティティが「優秀な労働者」であることでした。

暇もなく退屈を感じることもなく、休日は普段の労働の疲れを癒して、次の労働のために備えるという労働中心の生活を送っていることにギモンがありませんでした。それどころかプライドを持ってこなしていたのです。休日にスーパー銭湯でくつろぐことをメンテナンスなどと称して、自己管理に余念がない自分に満足していたのです。

不思議なのは、『労働のための休日』をフォーディズムの時代のように会社に強制管理されるわけでもないのに、自ら率先して行っていることです。労働を効率よくこなせるように自己管理することが当たり前だと思い込んでいるのです。

これ、わたしだけでしょうか。

心身をいたわることをメンテナンスなどとあからさまな言葉で言わないまでも、自己啓発やマインドフルネスで能力を開発して精神をコントロールして、社会の要請に最適化して必要とされる人材になろうとすることは、広い意味で労働に照準を合わせた生き方と言えるのではないでしょうか。

つまり、現代は、フォーディズムの時代のように会社が人間を労働力として徹底管理するのではなく、優秀な労働者であることを一人ひとりが自分で管理させられている自己管理社会なのではないでしょうか。

と、まるで大発見のように(わたしにとっては大きな気づきですが)書いていますが、この考えはすでに哲学や思想の世界では長らく議論されているものなのでした。これまた衝撃です。

参考図書と今後の課題本はこのとおりです。
『現代思想入門』千葉雅也 講談社現代新書
『ミシェル・フーコー 自己から抜け出すための哲学』慎改康之 岩波新書








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