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祭_05/12

 人々の騒ぐ楽しげな声
ちりんと音を立てるベルの音
喉が痛くなる程混じり合った匂い
生きていることを実感させる冷ややかな風
どれも不快にしか感じなかった

心底が有り得ない位冷えた気分だった今日
知り合いから駅前のお祭りへいこうと誘われた
断りたい気持ちも山々だったがそれで今後気まずくなったら困る。
吐き気に続き頭痛も腹痛も、日に日に悪化していた
だから寝ていたかった。眠りに落ちなくていい、転がっているだけでよかった。

「 …これすら断れない、大した関係でもないのに。 」

そう吐き捨て白いトレーナーの上に黒い上着とアームカバーを身に纏った。
暖かさを保つために。
今日はここ数日と比べると比較的寒かった。
肌寒い程度なのだろうけれど、僕には寒過ぎた。
普段からあまり出掛けない、そして半袖を着る事が無い。
凍死説あるのではないか、などと馬鹿げた事を考えながら靴を履きAM11:45。集合場所へ向かった。

僕の姿を見つけたご友人は嬉しそうに手を振った
笑顔を作り振り返した。

「 久しぶりーっ! 」

いつもしているかのように飛びついてきた
一瞬きょどったが笑顔を崩すことなく接せた、はず
酷い頭痛と吐き気に耐えながら屋台を見て回った
ポテトやりんご飴、焼き鳥、綿菓子等の食べ物の他にもヨーヨー釣り、輪投げ等のゲームの屋台も出ていた

( すごいなあ… )

欲しいものは特になかった。
食欲があったわけでもなかったから何も買わずに眺めていた。
ズキっと来る痛み、ぐわぐわとする視界に気づかないフリをしその場を乗り切る。
お祭りを一通り見終わり解散するのかと思いきや近場のゲームセンターに行こうと誘われた。
これもまた断りにくく流されるが儘着いて行った。
プリクラを撮りガチャガチャを見て、回して。
可愛いものを見れて取れたのは嬉しかったが休みたいという本能には抗えなかった。
半ば強引に帰るよう話を進め帰路を歩いていると “ 恋人ごっこ ” 等と言って手を繋ぎ抱き着いてきた。
流石の僕でも耐えれなかった。

(  …きもちわるい  )

それしか思えなくなっていた。
絡められた腕を暑いと適当な嘘を吐き振り払い距離を取った
ふざけたように笑う友人に嫌気が差した。
僕が酷い事を吐く前に離れよう、そう思った。


家に帰るなり布団の上に倒れた
鞄の金具がお腹に刺さりえずきそうになったが身体の力を抜き楽な姿勢をとる。
気持ちのほうはなんとか落ち着いた。

 「 とんだ厄日だな… 」

 溜息を吐くついでに呟いた。
何も考えないようにしてそのまま死体のようにぼんやりとし続けた。



 …何時からこうなってしまったんだ。



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