世界は四角いディストピアをめざすのか

あるプロダクトのデザインをみていると、黎明期、小型であったときには流線形やデザイン性の凝ったデザインであったのが、普及期になり、どんどん大型になるにつれて、どんどん四角くなってきていることが分かってきた。さらに面白いことに、四角いものよりも流線形や丸み、あるいはデザイン性のある曲面があるほうが美しく、好ましいと感じる人が多いという結果になった。

そこで世の中の多くのものを見ると、どんどん四角くなっている。
自動車はフォルクスワーゲンやスバル360といった丸いものがあり、建物は昔は5角形だったり、ムーミン谷の家のような丸いものもあっり、お城のような装飾的なものも多かったが、現在のほとんどの建築物は窓も含めて四角く、少数のシンボリックな建物だけが曲面を持っている。デジタルデバイスも昔のパソコンはiMacのような曲面的なものがあり、iPhoneも3Gの時は丸みがつよかったのが、どんどん四角っぽくなってきている。Windowsのロゴも昔ははためいているようなデザインだったのが、windows 8、10では台形、11ではついに正方形になってしまった。鉄道も在来線はほとんどが四角い。タイプライターのキーは丸いが、キーボードのキーは四角い。

四角くなる方向は経済性や効率性といった、人間が生きるためには最適な方向かもしれないし、安くほしい機能を手に入れるには、最善の方向性かもしれない。

唯一違うものは流体力学に影響を受けるもので、飛行機や新幹線、風車の羽根などは機能最適化をしても美しさを何とか保持できている。四角に侵食された最後の砦である。

とても怖くなってきたが、周りの誰に話しても、あまり危機感や恐れを共有できなかった。

しかし人間がこれだけ繁栄した現在、あらためて1000年前のような美しさを重視した方向性に立ち戻るべきではないかという気持ちにもなる。

改めて丸い製品を調べると、丸いスマホ、丸いナセルの風車など、いくつかは存在するが、ユニークなものとされ、主流は圧倒的に四角である。

しかし自然界には何一つとして四角いものはない。人間だけが四角いものを生み出している。そして一部の製品は四角いと好まれず、基本的には曲線的なものを人間が好むことは明らかである。それなのになぜ効率性、経済性を重視して四角いものを採用するのか。そんなことをしたら、人間が自身の生存だけを目的とする、芸術性を失った存在になってしまうのではないか。

今後は「四角いものを作るような人とは一緒に仕事をしたくないです」「あなたの会社は丸いもの作っていますか」といった価値観も良いかもしれない。

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