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薬さえ飲んでいれば健常者と同等の生活ができるって本当?

■ お断り

いきなりだが、「双極性障害が治った(完治した)」という方も世の中には少数ながら居られるようだし、そのノウハウなるものをweb上で発信されているのも、ちらほら散見される。

ただ双極性障害は重症度を含めて幅のある障害なので、失礼ながら(ご本人の感覚とは別に)極めて軽度であったとも考えられるし、更に言うなら近年、過剰診断が問題になっている障害なので、元より双極性障害では無かったという可能性も否定できないのではないだろうか。私見ではあるが、そもそも治らないから「病気」ではなく「障害」なのであって、治った障害は障害ではない、と考える。さらに言葉を重ねるならば、治った方が以下の拙文に目を通すのは、単なる時間の浪費でしかないと予めお伝えしておきたい。敢えて辛かった日々を思い返す必要もないだろうし、正直に申し上げればノスタルジーと優越感を持って読まれるのは、極めて気分が悪い。


■ 罪な言葉

さて、双極性障害とは?とwebで検索すると、ほぼコピペレベルで『気分の波が非常に大きくなる病気ですが、適切な服薬と生活リズムを一定にすることで、健常者と同等の生活ができます』などと言う、甘ったるい説明がなされていることが極めて多い。というよりも、それしか目に入ってこない。

しかし数年もすると、この文言が如何に虚偽に富み、残酷で無責任であるかが判ってくる。

極論だが、上の説明をするのは薬を売りたい製薬会社とその回し者だろう。
また多くの医者達も、「きちんと服薬を続けていれば気分の波が小さくなります、抑えられます」とは言うものの、決してその後ほぼ確実に再発することについては知っているにも関わらず言及しない。告知義務を承知で事故物件を押し付ける不動産屋並みに図太いのか、逆に患者のメンタル低下を過剰に恐れる小心者なのか、再発した患者は転院してくれる幸運の元に生まれたのか。


■ 考えてみて…

大体に健常者と同等の生活なんて出来る訳がないだろう。そんなことは少し考えてみれば分かる。この障害は完治しないのだから、いつ(大概、追い込まれて一刻を争う時だ)体調を崩して欠勤するかもしれない人間に、もしくは問題行動を起こすかも知れない人間に、重要な仕事を任せる訳がない。自分が人事掛なら絶対しないし、経営者ならそんな「大抜擢」をした人間自体を単なる無能と判断し処罰するだろう。いつまで経ってもあなたに割り振られるのは、「居ても居なくても良い仕事」しかない。こんな制約が付き纏うにも関わらず、健常者と同等と言えるのか?あなたはそれで満足か?


■ まとめ

新しく双極性障害と診断された方に、発症から15年以上経った当事者として言っておかなければならないことがある。

残念ですが、あなたは生涯に渡ってこれまでと同等には働けません。あなたの生活は大きく変わります。諦めることを覚えてください。健常者なら味わうことの無かったであろう、失うこと、失われること、捨てなければならないこと、誰かに見捨てられることの苦痛に対し備えをしてください。


私はこれら全てに直面しましたが、今も受け容れ切れずにいます。特に、近しい(と思っていた)恋人に見捨てられたことは、それこそ生涯忘れないでしょう。

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