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タイトルが決まるまでの紆余曲折
N4書房の新刊「レクチャー&インタビューズ」は、シンプルでどうということのないタイトルのようですが、決まるまでには紆余曲折がありました。
私は大抵、タイトルを決めてから文章を書くことが多く、本づくりもたとえば「ベレー帽とカメラと引用」「牧村憲一発言集成」など、タイトルから逆算して目次や構成を考えて、本文に着手するという段取りです。
今回の吉田仁さんの本については、真っ先に思いついたのが「吉田仁の音作り」という平凡なタイトルで、さすがにこれは自分でも「駄目だろうな」と、ストレートに感じました。地味で真っすぐで、芸がない。
この頃からインタビューと並行して、何通りも考え始めました。
当時のメモや表紙デザインの案を振り返ってみると、タイトルの案が並んでおり、感慨深いものがあります。
「音の魔法使い」
「音もなく振る魔法の杖」
「第三の男」
「The3rd Man」
「89-91」
![](https://assets.st-note.com/img/1713855738036-eAJoej7Xcs.jpg)
など、初期の案はいずれも、
「いかがなものか」
「危ないところだった」
「これを採用しなくて良かった」
と思えます。
長いタイトルはどうかと考えたこともあります。
「吉田仁は、あの頃、どこで、何をしていたのか?」
「音楽のプロデューサーって、いつ、どこで、何してるの?」
「音楽プロデューサーは、 いつ、どこで、何をしているのか?」
「音楽プロデューサーでエンジニアで編曲もするって、どういうことですか?」
この路線がエスカレートして、
「音楽プロデューサーって、普段はスタジオで何をしているの?
たまに来る親戚の子供にはどうやって説明しているの?」
「音楽プロデューサーは何をしているの?
親戚の子供にはどう説明しているの?」
![](https://assets.st-note.com/img/1713855792246-k1p57u5dVX.jpg)
という案もありました。
これは受けを狙っていて、光文社新書なら通りそうな雰囲気です。
キャッチーという意味では有効かもしれませんが、どうも本の雰囲気にはそぐわない感じです。
「Music」と「Mix」の話題が多いので、
「Music, Mix, and Magic!!」
「M is for…Music,Mixing,and Magic!!」
「Mixing for listeners 50 years later」
![](https://assets.st-note.com/img/1713855921160-VSeIRSGQHR.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1713855932887-dDDXEVLjtZ.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1713855946835-DXfKye4pga.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1713856010284-dLj5E0nsOm.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1713856020404-wAUCYwnzyz.jpg)
という案もありました。
英語だとタイトルとして格好がつくので「レコーディング」という単語を軸に、以下のような案もありました。
「Days of the long long recording」
「Long, long days of recording」
「The long long recording days」
「Recording 89-91」
![](https://assets.st-note.com/img/1713855988925-GRSL9cGglj.jpg)
だんだん英語の言い回しとして正しいのかどうか、そのあたりまで不安に思えてきます。
これらの案はすべて吉田仁さんにお見せしていましたが、たまに褒められることはあっても、ほとんどは「良い」とも「悪い」とも言われていません。
困ったことに、自分でもなかなか「これぞ」と確信できるだけの自信作は浮かびませんでした。
行き詰って、チャットGPTに少し考えてもらったこともあります。
問:1980年代から現在まで、日本のロック、ポップスの音作りに
携わってきた音楽プロデューサーの吉田仁さんのインタビュー、
および講義録をまとめた本のタイトルを10通りほど考えてください。
「音楽プロデューサー・吉田仁の40年間の軌跡」
「吉田仁の音楽プロデュースの秘訣」
「音楽とともに生きる:吉田仁の音楽哲学」
「日本のポップス・ロック界に革命をもたらした男:吉田仁の功績」
「吉田仁とともに歩んだ40年:日本の音楽史を彩ったプロデューサーの軌跡」
「音楽を愛し、音楽家を愛する:吉田仁の音楽活動に寄せて」
「音楽の魔術師:吉田仁の音楽哲学と手法」
「音楽シーンを変えた男:吉田仁の功績と遺産」
「日本のポップス・ロック業界に刻まれた、吉田仁の足跡」
こんな感じで、面白みがないです。NHKのドキュメンタリー番組風といいますか。
私が考えたタイトル案では他に「音と録音された音」という、外国の哲学者や指揮者が書いた本みたいなものがありました。
これは生硬すぎて、難解な印象を与えます。
月日が過ぎて、いよいよ本文が95%は完成しただろうな、と思えたのが2023年の12月ごろです。
そうなると表紙も「仮」として入れておく必要がありますし、目次や奥付も「(仮題)」という風に書いておいたりもします。
その時に「仮題+副題」として、小さい文字で副題を添えておくことを思いつき「仮題+レクチャー&インタビューズ」としました。
その頃に、
「副題は気に入っています」
という返答をいただき、それなら「レクチャー&インタビューズ」が正式なタイトルでも良いではないか、となってようやく決定となった次第です。
ほぼ製作期間全体の、最初から最後までかかったことになります。
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