契約書三週間待ち(とある大企業の禁忌目録#21)

大企業では契約書に絡む仕事も結構多く、若手社員でも目にすることがあると思う。
最もよく目にするのは企業間の「機密保持契約書」。機密情報をやりとりするにあたって、保護される情報を定義し、保持期間や紛争になった場合の裁判を規定することが多い。金銭が絡まない契約書だが、契約相手先が提示してきた草案に対して、法務部門へリスク評価を依頼すると着手されるまでに2週間、内容の確認に1週間とすさまじく時間がかかる。中小企業だと、その場で社長がざっと目を通してサインするレベルのモノなのだが…。

最初の2週間は、会社全体から集まってくる契約確認や法制度の相談タスクが多すぎるため、単純に法務部門のリソースが足りていないだけである。そして、次の1週間で徹底的に文言を見て、大企業にとって有利となるように多数の改変を入れていく。
契約内容によって多少のレベルにばらつきはあるものの、大企業の法務部門にとってリスクあるものを残すことは法務部門のミッションに合わないので、徹底的に改変が入る。彼らはどんな契約書だろうと手を抜かないプロフェッショナルであり、有利な約束事を考えることが大好きな人たちなのだ。

複数の契約が関連する業務委託契約や、海外企業との知的財産授受に伴う契約は最初に照会できるまでに数ヶ月時間がかかることもざらにある。
そうして、法務部門からフィードバックされた契約書は、先方に照会されるわけだが、契約相手が、中小企業なら圧倒的に不利でなければ、改変内容をすべて受け入れてくれることが多い。だけど、もし、先方も大企業だったら、先方でも3週間の検討が起ってしまい、気がつけば最初の契約書の精査から契約締結まで10ヶ月経過するなんてこともある。
メディアで報道される大企業同士の協業の裏では、とてつもない契約事項の確認と交渉で行われている。当事者の汗と涙の結晶である。

契約書自体は価値を生まないにもかかわらず、時間がかかる。それがベンチャーの人々に大いに批判されてしまうのだが、当事者の平社員は1時間でも早く進めるべく根回ししているので、その努力が伝わらないのは残念である。

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