汚れなき人 第7話:再会
山縣「明日から三者面談が始まります。ちゃんと面談前にご両親と進路について相談しておくように」
ゆづ「30人、一人一人との三者面談大変だねー。」
山縣「まぁなー。菅野もちゃんと考えろよー。進路。」
ゆづ「でも私やりたい事ないやー。でも早く一人で暮らしたい」
山縣「なんで?」
ゆづ「誰の世話にもなりたくない。自分で稼ぎたい」
山縣「稼げる仕事は沢山あるぞー将来稼げるようになる為にも大学はちゃんと行っておいた方がいいぞ。」
ゆづ「...うん」
俺はいつも放課後の理科準備室で菅野と話す事が当たり前になっていた
菅野が俺に懐いてるのは知っていたし、だけどもちろん俺は菅野を可愛い生徒以上の感情は抱いていなかった
それなのに、何故かいつも教室にいる、みんなの中にいる時は菅野だけが何故か目立って見えていた
まるで、草むらに咲く一輪の花のように
(三者面談の日)
ゆづ「お母さんちょっと服派手じゃない?先生に色気出さないでよね」
母「何言ってるのよ。アンタの為でもあるでしょ。ちょっとぐらい気に入られて贔屓してもらわないと」
ゆづ「本当にいつも変わらないよね。世界中の全員がみんなお母さんの事好きになると思ってるのかもしれないけど、絶対そんな事ないからね」
母「なによーゆづ。今日はなんか機嫌悪いわね」
嫌だった。
正直先生と母を合わせたくなかった。
母は昔から狙った男を落とさなかった事がない。
どんな人でも一度は母を好きになる。
そんな母は人の顔を覚えるのが苦手だったし、誰も本気で好きにならないから、続かなかった
だけど、先生は違うと信じたかった。
いや、信じてる。
先生が母の魔法にかからない事を。
(教室に入る)
山縣「菅野さんはじめまして。担任の山縣です。」
母「はじめまして。ゆづの母です」
一瞬先生の顔が固まった気がしたけど、すぐにいつもの先生に戻った
母「それでは今後ともよろしくお願いします」
山縣「はい、本日はご足労頂きありがとうございました。菅野また明日学校で」
ゆづ「はい、先生さようなら」
山縣「さようなら」
(帰り道)
母「先生思ったより若いのねー。しっかりしてる先生だったし、良かったわね」
ゆづ「そうでしょ!先生にはなんでも話せるの。私の今の一番の相談相手」
母「そう、、ゆづアンタまさか」
ゆづ「ん?」
母「なんでもない。それよりアンタ大学に行きたかったのね。勉強頑張りなさい。大学ぐらいは通わせてあげるだけの蓄えはもう稼いであるんだから」
ゆづ「、、ありがとう。お母さん。お母さんに似て勉強は苦手なんだけどね」
母「それは私だけのせいじゃないわよ」
(教室)
嘘だろ、、そんな事って、、
名前、、、
そうか、俺はすみれさんの本名すら知らなかったんだ
しかも、彼女は全く俺の事覚えてなかった
そりゃそうか、、あれから5年も経ってる
あの人は俺みたいな相手を毎日してるんだ
あの時の俺はまだ新米教室で稼ぎも少なくて、せいぜい月に1回逢いに行けるかどうかだった
でもある時突然すみれさんはお店を辞めた
それっきり会えてなかった
俺の中ではもう過去の人になりかけたのに
5年も経ってるのに
まるであの人の周りだけ時間が止まってるのかと思うぐらい何も変わってなかった
美しいままだった
いやでも待て、落ち着け自分、生徒の保護者だぞ。
何を再会できた事を喜んでいるんだ
この事実はむしろ非常にまずいのではないか
過去の事といえども生徒の保護者と教師が関係を持った事があるって、、、
そもそもまず、菅野に、、、この事実がバレる事だけは避けなくてはいけない
でも俺は皮肉にも全てがこの時繋がった気がした
どうして、菅野だけ他の生徒と違う存在に見えていたのか
菅野が語る母親像も今考えればあの人そのものだった
俺は5年前客とホステスの関係を超えられなかった
あの頃と今の俺はどっちが彼女に近いのだろう
どうしても彼女にまた逢いたくなってしまった
気づいたら彼女が昔働いてたお店に行っていた
ママ「いらっしゃいませ.お一人?」
山縣「はい、あのこのお店にいたすみれさんって」
ママ「あーすみれちゃんの知り合いの方?すみれちゃんねー婚約が決まってお店辞めたんだけど、すぐダメになっちゃったみたいでねー。あの後すぐ別のお店で働きはじめてるわよー。あ、あったあった。このお店。年齢層高めだから熟女好きならオススメ」
山縣「ありがとうございます」
熟女、、、たしかにすみれさんって今いくつなんだ。
菅野が17だから、、でも余裕で30代前半に見えた
俺は紹介してもらった名刺を片手にすぐその店に向かった
ボーイ「いらっしゃいませ」
確かに前の店よりだいぶ落ち着いた店だった
山縣「すみません。この名刺の子いますか?」
ボーイ「あーツバキさんですね。ご案内します」
このお店ではツバキにしてるのか
ツバキ「ご来店ありがとうございます。ツバキです。」
え、まさかまた気づかない?
ツバキ「お客さまこういうお店初めてですか?」
山縣「すみれさん、いや、菅野さん。僕のこと覚えてませんか?」
ツバキ「どうして、私の苗字、、え?すみれって、、まさか」
山縣「先日はどうも。僕はあの日、心臓が飛び出そうになりました。だけど、アナタは全く僕の事覚えてなかったので、それにゆづさんには絶対にバレてはいけないと思ったので」
ツバキ「わざわざそれを言う為にここに?」
山縣「いや、、、、すみません。ただ思い出して欲しかったのかもしれないです。自己満足でしかないです」
ツバキ「ごめんなさい。私人の顔を覚えられない病気みたいで、、、」
山縣「本心を話すと会いたかったです。だから来ました」
ツバキ「あ、ありがとうございます。。でも先生、、今の関係性を知ってしまったらもうお会いするのは、、誰に見られてるかも分かりませんし、、」
山縣「そうですね。すみれもツバキも「謙虚」が共通する花言葉ですね」
ツバキ「花言葉お詳しいですね。そうです。私に最も足りてないものなので」
山縣「ツバキさん、、今日アフターお願いできますか?今日一日だけでいいんです。もう二度と来ませんから」
ツバキ「.....分かりました」
その日ぼくはすみれさんにプロポーズをした
もちろん菅野の存在を知った上で、告白をした
だけど、きっぱり振られた
山縣「すみれさんでもないツバキさんでもない、アナタの本当なお名前はなんですか?」
ツバキ「菅野ゆりです」
山縣「ゆりさんなんですね」
ゆり「先生、、本当にゆづにだけには黙っててください」
山縣「もちろんです」
明日からまた学校で菅野に会う
俺は菅野とどんな顔して接すれば良いんだ
(家に帰る)
ゆづ「あれ、今日早かったんだね。」
ゆり「うん、アフターのお客さんいてねー。ごめんお風呂はいるねー」
ゆづ「うんー」
いつもの母とは違う、どこかで嗅いだことのあるような匂いがした