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明石の魚がすごすぎた話

『明石の魚が日本一うまい』という噂を聞いて、勉強しに行ってきました。それがとんでもなくすごかったのでレポートを書きます。

■"うまい魚"とは
・魚にストレスがかかっていない(ストレスで分泌される物質で内蔵や身の香り・味が変わる)
・魚が疲労していない(運動エネルギーのアデノシン三リン酸がイノシン酸になる・乳酸が溜まると酸味や臭みが出る)

■漁場としての明石
・潮流の早い瀬戸内海で鍛えられた身質のしっかりした魚
・昔より魚が減っているが、それは一概に海を汚したからではなく『海をキレイにしすぎた』から。浄化しすぎて栄養(リン・窒素)の全く無い水を排水したことでプランクトンが育たず、魚が減った。
→最近は、田起こしのように海底を耕したり、工場の排水の浄化機能を調整したりと市をあげて漁場回復に取り組んでいる
※"よい海"は山→川→海へ栄養のある水が供給されることで作られるが、兵庫はもともと山や河川では無く『人々の生活排水』がよい海を作っていた。人が住み・生活をするのはそれはそれで"自然"なのかもしれない。それを利用し現代的なテクノロジーを使って自然と共存共栄していく必要があると感じた。

■明石の魚への気の遣い方・流通システムがすごい
まず明石独特なのがなんと『魚は基本活魚のまま流通される』ということ。普通は漁師が獲って〆るので、死んだ魚を漁港→市場→仲卸→小売店→飲食店or家庭なのだが、明石では漁師は魚を活きたまま持ち帰り、漁港の巨大な生簀に魚を半日保管する。『活け越し』と言い、この間に魚のATP(体力)が回復し、ストレスが減り、糞は排出される。
活け越しが終わった後『昼網』と言って、11時頃からセリが始まる。ここで仲卸や魚屋が買付け、その魚もさらに魚屋用の別の生簀で保管され、活きたまま出荷される。

※この昼網は飲食店側の立場としても助かる。夜営業のために朝早起きして市場に行くのは大変だから。

■明石の漁師がすごい
そういうわけで、活きた魚を持ち帰らないといけない漁師もすごい。他の地域ならば『漁獲量=収入』になるが、明石は完全に『漁より質』。死んだ魚では商売にならないから必死。そうなると乱獲にもなりにくいので生態系へのダメージも当然少ない。

■明石の市場・漁協がすごい
そういうわけで、巨大なプール型生簀を作って維持管理しなければならないのでお金も手間もすごい。さらに独特なのが、『漁協もセリに参加して魚を買い付ける』ということ。そうすることで相場の調整をし、魚の価値を保っている。なので『売れ残りの安いやつを買っていくか…』ということはできない。セリに参加する人全員本気のガチンコ勝負。さらに、漁協が買い付けた魚は全てレベルの高い活け締めが施されて、漁協自身が販売する。

■明石の魚屋さんがすごい
そういうわけで、仲卸や魚屋は漁協に負けじといい魚を買って、より技術を磨くようになる。さらに、生簀を持って活魚のまま保管する業者が多いのでここで2回目の活け越しがされる。飲食店や小売店が買い付ける時には最高の状態の魚にその場で活け締めが施されて販売される。明石はスーパーにすら当然のように活け締めの魚が並ぶ。

■明石の料理人がすごい
そういうわけで、料理人もどのような魚がなぜおいしいのか、どう獲られてどう活け越していつどう活け締めされたのかがわかっていないと話にならない。さらに、身が活けた魚を捌き方、保管、調理法で身質と熟成を調整することにより味と食感をコントロールする技術が必要になる。最終的に口に入る時に最高の状態にするのはやはり料理人なのだ。

■自治体レベルで真似するのは多分無理だけど、釣り人&その家庭単位でなら再現が可能
まとめると『明石の魚が日本一おいしい』と言われる理由は、漁場だけの問題では全く無い。魚の本来のおいしさを引き出すためのシステムがすごいのだ。
全国津々浦々、そこが一番おいしい魚は生息している。このシステムを取り入れれば、世界中の魚がもっとおいしく食べられるようになるはずだが、そうはいかない。明石では古くからこのシステムを関わっている組織・人間が当然のように(別にすごいとは知らずに)行っているのがすごいのだ。簡単に真似できるものではないが、一つもできないわけではないはず。できるところから、一人一人ができる範囲で改善・啓蒙していくことが大事だと思う。
そのために、我々消費者が『明石の魚がうまい・なぜうまいのか』を知ること、発信することで魚文化・食文化を守り、発展の約に立てるかもしれないと強く感じた。

そして、自分で釣りをする人は、漁から食べるところまで自分なので、このシステムを再現できる。ぜひ、自分の住んでいるところの本当においしい魚を食べてほしい。

長くなりましたが以上です。
これを読んだ上で、明石浦漁協のホームページを見るとさらに理解を深められると思うのでぜひ。
https://www.akashiura.or.jp/

読んでいただきありがとうございました。 今後も誠実に・真摯に取り組んでまいります。 いただいたサポートはよりよい情報を発信するための研究・活動資金にと大事に使わせていただきます。