見出し画像

Apple Musicプレイリスト "Post Classical music vol.2 selected by UTSUGI Koichi (UN.a)"

注目が集まっている【ポスト・クラシカル】というジャンル。
実は様々なところで耳にすることがあるのですが、「どのアーティストの楽曲だろう?」と意識して聴くことはもしかすると多くないかもしれません。

先日プレイリストvol.1を投稿しましたので、まだご覧になっていない方はぜひ!

この私のプレイリストは、いわゆる一般的な【ポスト・クラシカル】以外の楽曲も選んでいます。
クラシック音楽からの発展ということが共通で【インディー・クラシック】と言われているジャンルで、よりリズム的な要素が強いという感覚です。ぜひお聴きください!

Post Classical music vol.2 selected by UTSUGI Koichi (UN.a)

1 : First Ballade / Judd Greenstein, Performed by Michael Mizrahi

Judd Greensteinは【インディー・クラシック】の代表的なアメリカの作曲家で、New Amsterdam Recordsの共同ディレクターでもある。

この楽曲は冒頭部分はクラシック曲のような展開から始まり、徐々に「ミニマル・ミュージック」のようなリズム的要素が増えてきます。
「ミニマル・ミュージック」というのは簡単に説明すると、アンサンブルの中で様々な楽器が独自の短いフレーズを繰り返し、その繰り返しが数学的もしくは偶然的に交わりハーモニーを形成するもの。

この曲の場合はピアノのみでの演奏なので、ただ同じ短いフレーズを繰り返すのでは無く、その短いフレーズを少し短くしたり長くしたりと自由に動かして拍子に縛られることなく自由に動き回る。

曲はその後ジャズのようなハーモニーになったりと、クラシック的な響きにとらわれず様々な発展を見せながら進んでいきます。
こちらのYouTubeにてMichael Mizrahi氏による生演奏を見ることができます。

2 : Impermanence / Bryce Dessner, Performed by Australian String Quartet & Sydney Dance Company

こちらも【インディー・クラシック】の代表的な作曲家、アメリカのBryce Dessner。
オーストラリアの現代舞踊団 [Sydney Dance Company] による公演 "Impermanence" のための作品。Australian String Quartetによる弦楽四重奏。

曲の中盤から【インディー・クラシック】の特徴のリズム的なアプローチが前面に出ていて全体的に躍動感のある楽曲。
【ポストクラシカル】との違いがとても理解しやすい楽曲だと個人的には思うので、比較してみると興味深いかなと思います。

3 : Unremembered: No. 1, Prelude / Sarah Kirkland Snider

アメリカの作曲家Sarah Kirkland Snider。
この楽曲は声と弦楽によるもので、クラシックのオーケストラ的なアレンジとヴメインォーカルのメロディーはポップスに近くコーラスは声楽的な声質で歌われており融合が美しい。

ほぼ生楽器のみの【ポストクラシカル】を堪能できると思います。この曲は組曲となっていますので続けて聴くと物語が感じられて素敵だと思います。

こちらのYouTubeは違う楽曲ですが、Sarah Kirkland Sniderの世界観がより感じられると思います。

4 : We Live a Thousand Years / Hauschka

ピアノの中に様々な細工をした「プリペアド・ピアノ」を用いて作品を発表しているドイツ人のピアニスト。

「プリペアド・ピアノ」はジョン・ケージによって開発され、その後現代音楽を中心にロックやポップスにも用いられています。ピアノの構造はパーカションのような打楽器の要素があるので、中にネジを入れたりして金属的な響きを足したり、残響を減らしたりした「プリペアド・ピアノ」によって打楽器的な表現もよく用いられます。

今作では、コンピューターのプログラミングによる自動演奏によるもので、電子音楽のノイズも入れ込まれた革新的な作品になっている。

こちらのYouTubeにてHauschka本人によるパフォーマンスを見ることができます。

5 : mame / Carlos Cipa

ドビュッシーやサティ等のフランスの近代作曲家に影響に受けたという、ドイツのピアニストCarlos Cipa。

深いリバーブエフェクトのかかったピアノが幻想的に響き、影響を受けたというサティのような力強いというよりも内に秘めた美しさが滲み出てくる内向的に訴えかけてくる楽曲。

このmameという楽曲のように、他の楽曲も静かな幻想的な作品を多く発表していまして【ポストクラシカル】らしいアーティストだと感じます。
参考としてぜひこちらのYouTubeもご覧いただけたらと思います。

6 : I Woke Up in the Forest / yMusic

アメリカニューヨークのアンサンブル集団yMusic。
こちらは【インディー・クラシック】に分類されるグループでトランペット、フルート、クラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの編成です。

このような比較的多めの人数での生楽器アンサンブルグループとして、yMusicと並べてよく取り上げられるグループに "NOW Ensemble" というグループもいます。

コンテンポラリーの生楽器アンサンブルは「ミニマルミュージック」ととても相性が良く、この楽曲にもその要素が組み込まれています。

全体のサウンドは私はいわゆる「ニューヨーク・サウンド」と勝手に名付けて分類の材料としているのですが、感覚としては [クラシック的な響きはとても強く感じるが、ヨーロッパのような伝統的な積み重ねというより何というか制約が少なく自由に展開して響かせる] という感じです。

7 : To Speak of Solitude / Brambles

イギリスのMark DawsonによるソロプロジェクトBrambles。

イギリス音楽の特徴というのか、全体的に暗く深くどこか物悲しい響きがこの楽曲にも感じられます。
ピアノを中心にギターのシンプルなフレーズが重なり、音響的に長く続くストリングスやフィールドレコーディングが印象的に全体を包み込みます。

ドラマティックな展開では無く緩やかに繰り返され微妙に変化し続けるスタイルは、アンビエントミュージックに通づるような側面もあるように感じられ「意識の中に没入する」「空間を楽しむ」という、ゆっくりと時間の流れに身を任せる安心感に浸ることができるのではと思います。

8 : Valencia / Caroline Shaw

アメリカの作曲家でヴァイオリニスト、歌手でもあるCaroline Shaw。

Attacca Quartetによって演奏されており、日本人ヴァイオリニストの徳永慶子さんが参加されています。そしてこの楽曲が収録されているアルバムCaroline Shaw : Orangeは、2019年度第62回グラミー賞最優秀室内楽賞を受賞しています。

現代の弦楽四重奏の響きといった内容で、弦楽器の表現が詰め込まれており、大胆な展開やアレンジ、演奏方法は必聴です。

こちらのYouTubeは、Attacca QuartetによるCaroline Shawの別の曲の演奏です、ぜひご覧ください。

9 : Mantra / Emily Hall

イギリスの作曲家Emily Hall。

Mantraは合唱が中心の楽曲で、女性男性の混声の作品です。
声によるハーモニーは美しく包み込まれ、後半には声にエフェクトをかけたりと実験的にな試みもされています。

声の可能性の探求という意味では、作風は少し違いますがMeredith Monkがお好きな方も気に入っていただけるのではないかなと思っています。

10 : Endless Harmonies / We like We

こちらも【インディー・クラシック】の方に分類されることが多いかもしれません。

ですが【インディー・クラシック】アンサンブルグループの "yMusic" や "NOW Ensemble" は、個人的にはロックの要素のような激しさが組み込まれているサウンドのような感じがあります。

この "We like We" は【インディー・クラシック】というより【コンテンポラリー・クラシック】(こういうジャンルがあるのかわかりませんが…)意味合いとしては「クラシック室内楽の延長と拡大というコンセプト」のように感じます。

vol.2はこちらの10曲をご紹介しました、ご参考いただけたら嬉しいです。
ぜひお聴きくださいませ!

UN.a 宇津木紘一

いいなと思ったら応援しよう!